武漢市、高齢者産業への日本企業の進出に期待
華中地域で初の高齢者産業商談会を開催

2018年4月9日

ジェトロは湖北省の省都・武漢市で華中地域では初めての日中高齢者産業交流会を3月6日に開催した。背景には武漢市の熱意と高齢者産業に対する日本企業への大きな期待があった。商談会では、日本企業15社の出展に対し、地元の中国企業は約150社、200人の参加となった。3時間ほどの交流会で約130件の商談が行われ、3月12日時点で成約見込み件数は14件に達している。

日本の先進的なノウハウに高い期待

ジェトロはこれまで、東北地域をはじめ華南地域や華東地域などで、高齢者産業に関する商談会を開催してきた。中部地域の四川省成都市での商談会でも成約後に進出した事例があり、当地での高齢者産業界・団体にヒアリングしたところ、需要があることを確認した。加えて、武漢市政府の要請なども受けたことで、開催に至った。張明武・武漢市民生局副局長は「先進的なノウハウを持つ日本企業は大歓迎。武漢市政府としても全力で支援したい」と高齢者産業への日本企業の進出に期待する。

武漢市には120万人を超える学生がいて、学園都市としても知られるが、高齢化が進行し中国でも有数の高齢者都市となっている。市民生局によると、2017年の高齢者人口(60歳以上)は、前年から6万1,000人増え178万8,606人となり、人口の20%を超えた。そのうち、80歳以上が23万6,700人で、13%を占め、100歳以上は448人だった。

武漢市、高齢者サービス改革モデル都市第一号に

増加の一途をたどる高齢者人口に比例するように、介護施設とベッド数は着実に増加している。湖北省におけるベッド数は、2012~2016年の5年間で40%増加し、2016年時点で33万2,000床となったものの、1,000人当たりでみれば31床にとどまる。そのほか当地報道は、介護人材の不足と介護サービスの質が高くないことを指摘している。

これを受け武漢市政府は、ITやインターネットを活用した介護サービスを構築し、医療と介護との連携を強化しつつ、高齢者産業に従事するスタッフの質の向上を進め、外資導入を積極的に進める方針を公表した。中央政府からは、中国で第1号となる高齢者向け介護サービスに関する改革モデル都市にも認定された。市政府は、高齢者に関する制度改革を推進し、高齢者産業の底上げを図るため、2017年度の予算で1257億9,000元(約2兆1,380億円、1元=約17円)を民生予算として計上した。

今回の交流会に参加した日本企業は「武漢が魅力的なマーケットであることが分かった」と話しており、高齢者産業への日本企業の進出が期待されている。

執筆者紹介
ジェトロ・武漢事務所 所長
古谷 寿之(こや としゆき)
1993年、通商産業省入省。経済産業省商取引消費経済政策課市場監視官、同大臣官房広報室海外報道班長を経て2015年7月から現職。