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6種類の昆虫が食用としての製造・販売対象に(フィンランド)
昆虫食用化に向け、期待高まる

2018年5月11日

「新規食品(ノベルフード)」に関するEU規則が2018年1月1日から施行され、栄養価の高さ、環境負荷の低さなどから食糧として注目される昆虫が新たに食品に規定された。フィンランドでは、ヨーロッパイエコオロギ、トノサマバッタなどが食用として製造・販売されることが認められ、昆虫養殖機器メーカーが活気づいているほか、昆虫を材料に使ったパンも発売されている。

養殖された昆虫のみを食用として認可

2050年には世界人口が98億人近くに達すると国連が予測する中、昆虫は高品質のタンパク質、ビタミン、アミノ酸を含むなど栄養価が高く、環境負荷が少ないことから、国連食糧農業機関(FAO)でも2003年からその食用化に取り組んできた。安全・安定供給に向けて、昆虫の養殖とその食用化、加工食品の開発が注目されている。

2018年1月1日に「新規食品(ノベルフード)」に関するEU規則が施行され、昆虫が新規食品として規定されたことから、昆虫は食品としてEU全域での流通が可能となり、市場の拡大に期待がかかっている。フィンランド食品安全局(EVIRA)は2018年1月1日~2019年1月1日の期間については、6種類の養殖された昆虫を食用として製造・販売することを認めた(以下参照)。また、当面、オランダ、ベルギー、オーストリア、英国、スイスで養殖された昆虫についてのみ、食用として輸入することが認められる。

食用として製造・販売が認められた6種類の昆虫(養殖)

  • ヨーロッパイエコオロギ
  • 西洋ミツバチ(とその幼虫)
  • ミルワーム
  • カマドコオロギ
  • バッファローワーム
  • トノサマバッタ
注:
2018年3月16日発表時点。対象期間は2018年1月1日~2019年1月1日。
出所:
フィンランド食品安全局(EVIRA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

養殖用設備開発のスタートアップ企業

食品としての市場拡大を見込んで、昆虫の養殖用設備(ファーム)を製造するスタートアップのメーカーが勢いづいている。

エントキューブ(EntoCube)(2014年設立、本社エスポー市)は昆虫の養殖設備を開発している。顧客の要望に応じ、大小さまざまなキューブ型の設備を製造し、設備内の温度・水量・飼料の量は、同社が開発したシリンダーで自動調整できる。エントキューブのエンジンニアで同社の設立者でもあるロバート・ネムランデル氏に2018年3月24日に取材したところ、「当初20立方メートルコンテナの大きさの養殖設備を開発していた。しかし、現在は従来の農家が昆虫養殖業に転換するケースも出てきており、以前は牛舎などであった千平方メートル単位の建物を昆虫の養殖場に改造するケースが多くなってきた」と言う。


エントキューブの昆虫養殖設備(同社の許可を得てジェトロ撮影)

同社はまた、養殖したコオロギをパートナーである食品製造業者へ卸して食用化させ、ピーナツと混合させたスナックやシリアル食品として販売している。コオロギのふんを肥料の原料として業者へ販売もしており、まさに循環経済と言える。フィンランド農林省に昆虫食認可に向けて掛け合うなど循環型経済を推し進める国の方針に少なからず貢献したと言う。

なお、エントキューブはアールト大学キャンパス内にあるスタートアップ企業支援NPO「スタートアップ・サウナ」で誕生した企業だ。現在もこの「スタートアップ・サウナ」の共同スペース内に事務所を構えている。

ノルディック・インセクト・エコノミー(NIE:Nordic Insect Economy)(2014年設立、本社:コウボラ市)は、養殖設備だけでなく顧客のニーズに合わせ昆虫を粉末にするプロセッサーも製造し、養殖設備とセットでも販売している。売り上げの約50%は輸出で主にマレーシアとインドネシアへ輸出しており、タイと米国ではパートナーを探しているところだ。米国では同社の養殖設備で製造した昆虫をチョコレートでコーティングをするなどしてスナックとして試作販売したこともある。設立者でもあるサンットゥ・ベッケリ社長は、「日本市場にも大変関心があり、パートナーさえ見つかれば日本へも輸出したい」と抱負を述べている(取材日:2018年3月26日)。

エントキューブ、ノルディック・インセクト・エコノミーはいずれも若者が立ち上げた社員数3~6名の小規模な企業だが、共にフィンランドの技術・イノベーション事業基金(TEKES)からの助成金を受け、循環経済を推進する国の支援を受けている。循環型社会に寄与する食のイノベーション企業として今後の展開が期待される。

2017年11月から昆虫パンの販売を開始

大手製菓・パンメーカーであるファッツェル・ベーカリーは2016年夏以来、昆虫を使用したパンを開発しており、2017年11月24日からフィンランドでは初となる昆虫を食用とした「クリケット(こおろぎ)パン」を一般のスーパーマーケットで販売し始めた。パン一斤に使用されている粉末状のコオロギは約70匹で粉(小麦粉含む)の使用量全体の3%に当たる。価格は3.99ユーロ(約523円、1ユーロ=約131円)。同社の11月23日付けプレスリリースで、「われわれは食糧革命の最前線にいたいと思っていた。 われわれは、職人の手作りのパンを使って、将来的に昆虫パン部門を大きく成長させたいと考えている」とマルクス・ヘルストローム社長は述べている。

スーパーマーケット内の同社・ベーカリーで3月に実演販売していた同社のパン職人に筆者が聞いたところ、「原料となる昆虫粉末は今のところオランダより輸入している。現段階では国内ではまだ大量の安定供給ができないためだが、将来的には国産で調達したい」という。なお、上述のエントキューブ、ノルディック・インセクト・エコノミーの2社にヒアリングした限りでは、現在昆虫の養殖・販売が行われているのはEU加盟国ではオランダ、デンマーク、ベルギー、オーストリア、スペイン、イギリス、ドイツ、フィンランド、そしてEU加盟国外のスイスだという。

執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
前薗 香織(まえぞの かおり)(在フィンランド)
ジェトロ・ヘルシンキ事務所(2004年~2007年)を経て、2010年よりジェトロ・ロンドン事務所コレスポンデント(在フィンランド)。

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