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ビジネス環境には満足、労働力不足が課題(ハンガリー)
ドイツ商工会議所の2018年ハンガリー景気調査

2018年5月31日

2018年4月、在ハンガリー・ドイツ商工会議所(DUIHK)が毎年行っている「ハンガリー・ビジネス環境調査」の結果が発表された。好調な経済に支えられ、投資や雇用は拡大方向にある一方、課題として労働力不足が挙げられた。

ドイツ系3,000社が活動、30万人を雇用

ハンガリーでは、約3,000社のドイツ系企業が活動し、国内雇用者数の10%に当たる約30万人を雇用している。ドイツ系企業は就職先としても人気が高く、国際人材紹介サービスのランスタッド(Randstad)がハンガリーで行う就職人気企業調査でも、高い給与や良好な職場環境などの理由により、3年連続で第1位となった。ハンガリーでの主要投資者であるドイツ企業の動向や投資先としてのハンガリーに対する見方は注目されるところだが、在ハンガリー・ドイツ商工会議所は会員企業(ドイツ系企業中心)に対して2018年2月1日~3月4日に24回目となる調査を実施し、経済予測やビジネス環境についての質問に205社が回答、4月にその結果を発表した。なお、ハンガリーを除く中・東欧15カ国でも各国のドイツ商工会議所が同様の調査を実施し、合計1,698社が回答している。

調査項目は、(1)経済状況と期待、投資計画と追加雇用、(2)経済政策や労働市場などを含むビジネス環境、 (3)投資先としての満足度、となっている。

経済状況の改善により投資・雇用は拡大傾向

(1)の経済状況と期待について、94%の企業がハンガリーの経済状況予測を良好もしくは安定的と答えた(前年は90%)。今後の経済状況の改善を予想する企業は43%(同35%)となった一方、悪化すると予想する企業は6%(同10%)で2004年のハンガリーのEU加盟以来、最も低かった(図1参照)。また、自社のビジネス状況に関して良好もしくは満足と答えた企業は96%(前年は93%)、そのうち良好と答えた企業の割合は60%と前年から5ポイント上昇している。

図1:今後のハンガリーの経済状況予測
ハンガリーの経済状況予測を「改善」「安定的」「悪化」の3つの選択肢から回答する質問の結果の1998年からの推移を示している。2018年は「良好」が43%、「安定的」が51%で合計94%となり、2004年のEU加盟以降、合計値は最も高かった。2017年は「良好」が35%、「安定的」が54%、合計89%だった。「悪化」との回答は2018年には6%だったが、2012年は55%、2009年は89%だった。
出所:
在ハンガリ・ードイツ商工会議所2018年ビジネス環境調査

投資に関しては、43%が前年以上(前年は40%)、46%が前年と同額(同42%)を計画している。追加雇用については、53%(同45%)の企業が従業員の拡充を予想する一方、従業員の削減を考える企業は9%と前年から減少している(同11%)。同商工会議所は「2017年同様、輸出を行う大規模な製造業を中心に投資は拡大傾向にある」とした。

労働者不足の投資への影響は限定的

(2)のビジネス環境に対する企業の満足度は、労働市場に関しては悪化が続いている(図2参照)。

図2:ビジネス環境満足度
ビジネス環境の満足度を「ビジネス環境」「経済政策」「労働市場」の3項目で質問した結果の2005年からの推移を示している。回答は1~5の5段階評価で1が最も満足度が高い。「ビジネス環境」「経済政策」については2012年から満足度が上昇し続け、2018年は2005年の調査開始からそれぞれ最も高い値となった。一方で、「労働市場」については2014年を境に満足度が年々低下し、2018年は過去最低となった。
出所:
在ハンガリー・ドイツ商工会議所2018年ビジネス環境調査

「労働力不足による賃金上昇圧力」を問題とする企業は43%(前年は30%)と前年より増加しており、また、73%(同75%)の企業が熟練労働者不足に対して懸念している。企業が利用できる職業訓練制度についても、54%の回答企業はその制度が十分に機能していないと感じており、これは2009年以来最も高い水準だった。しかし、同商工会議所は「2017年に比べ賃金上昇の圧力は高いものの、労働者不足が今後の投資を決定するのに大きな影響を与える水準には至っていない」としている。

なお、同商工会議所は労働者不足対策のため、国家経済省、ハンガリー商工会議所、各企業と協力して職業訓練プログラムを展開している。しかし、プログラムへの参加者の確保だけでなく、企業側での教師の確保や、効果的な訓練内容の作成自体も難しくなっており、企業の負担が大きいとしている。

ジェトロが2017年9~10月に実施した「2017年度欧州進出日系企業実態調査」においても労働コスト上昇率の高さを問題として挙げる企業の割合は、ハンガリーが85.7%と調査を行った24カ国の中で最も高く、さらに、経営上の問題点として人材の確保が最大の問題として挙げられており、今回の在ハンガリー・ドイツ商工会議所の調査と一致する。

税金の負担感については、法人税減税や、給与にかかる雇用者負担である社会保険税の減税があったことから、不満足の割合は35%(前年は41%)に減少した。

行政手続きに対する不満足の割合は32%(同37%)と改善傾向にあるが、汚職と公共調達の不透明性に対する不満足度の割合がそれぞれ71%(同76%)、66%(同68%)と非常に高い。この結果に対し同商工会議所は「ハンガリーは電子公共調達システムを欧州の中でも初期に導入し、透明性の確保に先進的な取り組みをしているが、不満足度が高いため、より一層の対応が必要」とした。

事業環境に関しては、インフラの整備状況には80%(前年は78%)が満足しており、周辺国に比べても高い水準にある。また、製品や部品の調達環境に対する不満足の割合も21%(前年は23%)と低い。調達に関する不満足の理由として挙げられているのは、ローカルサプライヤーの技術力不足である。

投資先として周辺国に後れを取る側面も

(3)の投資先としての満足度では、ハンガリーを投資国として再び選ぶと回答した企業の割合は84%(前年は81%)(図3参照)だった。しかし、他の中・東欧諸国も含めたドイツ商工会議所の調査に回答した企業1,698社によると、中・東欧地域16カ国を対象とした投資先としての評価ランキングでは、ハンガリーは10位と前年の9位から順位を下げている。この結果に関して同商工会議所は「中・東欧地域の投資環境はとても似通っているため、わずかな政策の違いが順位に大きな影響を及ぼす」と説明する。

図3:現在の進出国を再び投資先として選ぶか
中・東欧16カ国に進出したドイツ企業に対して、それぞれの進出国を投資先として再び選ぶかを質問した。「選ぶ」との回答比率が最も高かったのはスロベニアで95%、チェコ91%、ポーランド90%、リトアニア90%、ブルガリア88%と続いた。ハンガリーは84%と16ヵ国全体で10位となった。
出所:
ドイツ商工会議所2018年中・ビジネス環境調査

在ハンガリー・ドイツ商工会議所のデール・A・マーチン会頭は、「調査でハンガリー経済に対する評価は高く、信頼感が高まっている」とした。この調査結果を基に、同商工会議所はハンガリーの2018年のGDP成長率を4.0%と予測するが、外部環境次第では4%台後半となる可能性も十分あるという。

執筆者紹介
ジェトロ・ブダペスト事務所
バラジ・ラウラ
2000年よりジェトロ・ブダペスト事務所に勤務、ハンガリー国内の市場調査を担当。現地進出日系企業を対象としたセミナー運営なども行う。英語、数学の修士号のほか、日本語検定1級、経済貿易大学の学士を有する。
執筆者紹介
ジェトロ・ブダペスト事務所
三代 憲(みしろ けん)
米国デザイン企業、ハンガリー雑誌編集を経て、2010年よりジェトロ・ブダペスト事務所に勤務。

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