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データベースを活用して米国の小売り・飲食サービス市場を攻める

2017年12月28日

米国に進出する日本の小売りや飲食サービス企業が増えている。増加の背景としては、堅調な個人消費に支えられて景気拡大が続き、家計所得も増加していることから、稼げる市場として再注目されている。

米国は統計データも充実しており、現地調査に行く前にある程度の市場調査が実施可能だ。米商務省が公開している中小企業向けのデータベースを利用すると、関心地域の人口動態や消費性向、関心業種の情報が無料かつ簡単に入手できる。

そこで、最近の統計データから米国経済や小売り・外食市場を概観するとともに、米国内での進出先を検討するのに有益な公的データベースを紹介する。

堅調な小売市場と拡大が続くEコマース

米国の最大の魅力は世界最大の市場ということだ。国際通貨基金(IMF)が2017年10月に発表した「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、2016年の米国の名目国内総生産(GDP)は18兆6,245億ドルで、2位の中国の11兆2,262億ドルと3位の日本の4兆9,380億ドルを合わせた数字をも上回る(図1参照)。また、米国経済は緩やかな拡大を継続しており、2009年第3四半期から、8年にわたり景気拡大が続いている。2016年のGDP成長率は1.5%で、米連邦準備制度理事会(FRB)が12月13日に公表した連邦公開市場委員会(FOMC)の経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2017年、2018年とも2.5%の成長を予測している。

図1:主要国の名目国内総生産(GDP)(2016年)(10億ドル)
主要国の2016年の名目国内総生産(GDP)は、米国18兆6,240億ドル、中国11兆2,320億ドル、日本4兆9,370億ドル、ドイツ3兆4,790億ドル、英国2兆6,290億ドル、フランス2兆4,660億ドル、インド2兆2,640億ドル、イタリア1兆8,510億ドル、ブラジル1兆7,990億ドル、カナダ1兆5,300億ドル。
出所:
IMF世界経済見通し(2017年10月)

米国の個人消費も堅調に推移している。米国では個人消費はGDPの約7割を占めており、米商務省センサス局外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2016年の小売りおよび飲食サービス売上高は5兆5,229億ドルで前年比3.3%増加している。2017年11月の売上高は4,927億ドルで、月別では過去最高となっている。

売上高を項目別にみると、全体の約2割を占める自動車・同部品の2016年の売上高は1兆1,401億ドルで、前年比4.1%増加した。米国の新車販売は7年連続で増加しており、国際自動車工業会(OICA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると2016年の新車販売台数は1,787万台となり、過去最高を更新。日本の2016年の新車販売台数は487万台なので、米国では日本の3.7倍の新車が販売されたことになる。

2番目に大きな項目は食品・飲料が7,016億ドルで12.7%を占め、総合小売り(12.2%)、飲食サービス(12.0%)無店舗小売り(10.2%)と続く。

米国の小売りで注目されるのが電子商取引(EC)で、米商務省センサス局によると、2016年のECによる小売売上高は前年比14.9%増の3,897億ドルとなっている。2017年第3四半期のEC売上高は1,153億ドルで、小売売上高の9.1%を占めている。

英調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、EC売上高は2011年から2016年で倍増しており、項目別にみると、衣料品の売上高が547億ドルで全体の18%を占め、家庭用電子製品が412億ドル(13.2%)、メディア製品が391億ドル(12.5%)と続く(図2)。

EC売上高のサイト別シェアをみると、アマゾンが33.0%のシェアで、ECのマーケットプレイス企業のジェット・コムを買収した世界最大手の小売企業ウォルマート・ストアーズが7.8%、オークションからスタートしたeBAYが7.4%を占めている。最近は、国境を越えた越境ECも活発になってきており、経済産業省の調査によると、米国消費者の2016年の日本からの越境EC購入額は6,156億円と推計している。アマゾン、eBay、楽天などのサイトから米国の消費者向けに直接販売することができるので、米国進出前のテストマーケティングとして、越境ECの活用は有効な手段だ。

図2:インターネット小売市場の項目別売上高推移
出所:
ユーロモニター・インターナショナル

飲食サービス業の売上高は約8,000億ドル

米国では最近は和食やラーメン人気の広がりにより、日本の飲食サービス企業の米国進出が増えているが、米商務省センサス局によると、全米のレストラン数は、2015年時点で54万2,000軒あり、州別では、カリフォルニア州に約6万9,910軒、ニューヨーク州に4万2,453軒、テキサス州に4万2,453軒と続く。全米レストラン協会の「Restaurant Industry Outlook for 2017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.8MB) によると、米国の飲食サービス業全体の2017年の売上高推計は7,987億ドルで、日本の2.7倍の規模に達する(注1)。そのうち、飲食店の売り上げ見込みは5,517億ドルで、フルサービスレストランが2,630億ドル、ファストフードなどの限定サービスレストランが2,337億ドルとなっている。

飲食店の売上見込み額上位の州は、1位はカリフォルニア州で822億ドル、2位がテキサス州で541億ドル、3位がニューヨーク州の433億ドルと人口上位順となっている。一方、人口当たりの売上見込み額でみると、ワシントンDCが5,796ドルで最も高く、ハワイ州が3,292ドル、ネバダ州が2,576ドル、マサチューセッツ州が2,539ドルと続いており、これらの州では1人当たりの支出額や支出単価が大きいことを示唆している。日本食レストランを米国に出店する際には、潜在顧客となり得る日系米国人コミュニティーの規模も、考慮すべき指標の一つになる。日系米国人は全米に約140万にいるが、最も多いのがカリフォルニア州で45万人、続いてハワイ州31万人、ワシントン州が8万人となっている。


サンタモニカのショッピング・ストリート(ジェトロ撮影)

家計所得の中央値は5万9,039億ドルで過去最高

米国市場が注目される理由の一つが、世帯当たりの購買力が大きいことだ。経済協力開発機構(OECD)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが公表している主要国の1人当たりの実質可処分所得額比較(2015年)によると、1位は米国で4万6,586ドルとなり、2位のスイス(3万8,373ドル)より8,000ドル以上高い。ちなみに日本は14位で3万377ドルにとどまっている。

また、米商務省センサス局によると、世帯当たりの家計所得の中央値は2008年以降減少を続けたが、2013年からは4年連続で増加し、2016年は5万9,039ドルで過去最高を記録した。州別にみると、7万ドルを超える州は8州あり、1位のメリーランド州で約7万8,945ドルや3位のニュージャージー州(7万6,126ドル)など上位州は米国東部に集まっている。郡単位でみると、家計所得が8万ドル以上の郡は22州の79郡あり、米国に進出する際の候補地域は全米に点在している。

米国の人種別の人口構成外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(米商務省センサス局)をみると、白人系61.3%、ヒスパニック17.8%、黒人系13.3%、アジア系5.7%となっているが、家計所得ではアジア系世帯が8万1,431ドルで最も高く、白人系が6万5,041ドル、ヒスパニック系は4万7,675ドルと続いており、各地域の家計所得や人種構成などを考慮した、きめ細やかなマーケティングが重要になる。

米国一般家庭の年間外食支出は34万円で日本の約2倍

米国世帯を所得額で5等分した所得五分位階級別に年間平均消費額をみると、第I階級の2万5,138ドルから、第V階級の11万2,221ドルと8万7,083ドルの開きがある(表1参照)。全世帯の年間平均消費額は5万7,311ドルで、2016年の年平均の為替レート(約108.97円)で換算すると625万円になる。

表1:五分位階級別の2016年の平均世帯所得、平均消費額
五分位階級 第I 第II 第III 第IV 第V 平均
世帯数(1,000世帯) 25,884 26,019 25,905 25,900 25,842 129,549
税引き前平均所得(ドル) 11,389 28,976 50,563 84,173 198,674 74,664
税引き後平均所得(ドル) 11,832 29,423 47,681 75,065 157,215 64,175
平均消費額(ドル) 25,138 36,770 47,664 64,910 112,221 57,311
平均世帯人数(人) 1.6 2.2 2.5 2.9 3.1 2.5
車保有台数(台) .9 1.5 1.9 2.4 2.7 1.9
住宅所有率(%) 40 54 60 73 85 62
出所:
米労働省

米国では労働省、日本では総務省がそれぞれ家計支出調査結果を公表していることから、日米の家計支出統計を基に、両国の平均世帯の項目別の年間支出額を比較したのが図3だ。なお、米国の平均世帯の消費額には、住宅ローン、固定資産税、社会保険料が含まれているので、それらを差し引いた額は約500万円になる。一方、日本の2016年の世帯平均支出額は291万円となり、日米の主要支出項目を比較すると、交通支出は日本の26万円に対し、米国は3.8倍の98万円となっている。1世帯当たりの自動車保有台数は、日本の平均1.1台に対し、米国は1.9台なので、米国の方が自動車の購入費用や維持費用がかかる。

食料品の購入額は日本が61万円で、米国(44万円)よりも17万円多く、一方、外食費用は米国が34万円で、日本(17万円)の約2倍となっている。このことは、米国の方が生鮮食品の単価が安いが、外食単価や外食頻度は日本よりも多いことを示唆している。他の支出項目では、米国家庭の住居費用や医療費用は、日本を大きく上回っている。

図3: 米国と日本の世帯当たりの項目別年間消費額(2016年)
2016年の米国と日本の世帯当たりの項目別年間消費額は、家庭用食品は米国44.0万円で日本は61.4万円、外食は米国34.3万円で日本は16.5万円、酒類は米国5.3万円で日本は3.6万円、住居は米国68.2万円で日本は21.4万円、光熱・水道・通信は米国42.3万円で日本は34.6万円、家事サービスは米国15.1万円で日本は0.9万円、家事用品は米国7.2万円で日本は4.8万円、家具は米国19.9万円で日本は5.0万円、衣料品は米国19.6万円で日本は11.6万円、交通は米国98.4万円で日本は26.0万円、医療は米国50.2万円で日本は15.3万円、娯楽は米国31.7万円で日本は27.7万円、理美容は米国7.7万円で日本は9.8万円、書籍は米国1.3万円で日本は4.0万円、教育は米国14.5万円で日本は9.2万円、たばこは米国3.7万円で日本は1.4万円、その他は米国10.4万円で日本は21.2万円、寄付は米国22.6万円で日本は10.6万円、個人保険は米国3.5万円で日本は5.7万円。
注1:
米国の消費額は1ドル=108.97円(2016年平均値)で換算。
注2:
米国の消費額から、住宅ローン、固定資産税、社会保険料を除く。
出所:
米労働省、総務省統計局

商務省の無料データベースを活用した市場調査

これから米国市場進出のために市場調査を行おうとしている企業にお勧めするのは、米商務省センサス局が公開しているデータベース、センサス・ビジネス・ビルダー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの活用だ。オンラインのデータベースを起動後に(1)関心分野(北米産業分類)、(2)関心地域(州、郡など)を入力すると、選択した地域の業種に関する情報(事業者数、平均従業員数、従業者平均給与)とともに、人口に関する情報(年齢別・人種別人口など)、世帯に関する情報(平均世帯員数、世帯所得中央値、学位取得率、平均通勤時間など)、住居に関する情報(総住宅数、住宅所有率、平均住宅価値、平均築年数)、平均家計支出を即座に調べることができる。また、絞り込み検索機能を使って事業、消費者、家計支出に関する条件を設定することで、進出条件に合った地域を探し出すことも可能だ。検索した結果は、報告書としてPDFやエクセル形式でダウンロードすることができる。

例えば、ニューヨークかサンフランシスコに日本食レストランの進出を検討している場合、業種は、「飲食サービス、レストラン」(food services, restaurants)を入力し、地域はマンハッタン(New York County, New York)とサンフランシスコ郡(San Francisco County, California)を選択すると、表2のような情報を簡単に入手できる(注2)。

マンハッタンの人口は、サンフランシスコ郡の1.9倍だが、飲食店の数も2.3倍で競争が激しくなっている。世帯収入の中央値はサンフランシスコ郡(8万1,294ドル)の方が高いが、1人当たりの年間外食支出額はマンハッタン(2,515ドル)の方が高くなっている。サンフランシスコ郡のアジア系の割合(33.8%)は、マンハッタン(11.7%)の3倍近くあり、どの層を顧客ターゲットにするかで、進出候補地は変わってくる。

本稿執筆後に日本から同データベースにはアクセスできなくなっているので、事前調査などで米国を訪問した際には、是非同データベースを試してもらいたい。商務省センサス局は情報の宝庫であり、American Fact Finder外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます などを使えば、表2のような情報は入手可能だ。

また、進出コストを試算するには、ジェトロでまとめている北米主要都市・地域の投資関連コスト比較も活用できる。同調査では、主要10都市の賃金、地価・事務所賃料、公共料金などの投資関連コストを調査しており、一覧比較が可能な形式に取りまとめられている。

米国に現地視察に行く前に、ビジネスに不可欠な市場情報や進出コストに関する情報を効率的に入手し、より戦略的に米国市場を攻めてもらいたい。

表2:マンハッタン区とサンフランシスコ郡の人口動態と飲食店の事業環境比較
項目 単位 マンハッタン サンフランシスコ
人口 1,629,507 840,763
21歳以上の割合 81.9 83.9
白人の割合 56.4 48.7
黒人の割合 15.0 5.6
アジア系の割合 11.7 33.8
ヒスパニックの割合 25.8 15.3
平均世帯人員 2.1 2.3
学位以上取得率 59.9 53.8
世帯収入中央値 ドル 72,871 81,294
貧困率 17.9 13.2
公共交通機関使用率 59.2 33.1
家庭でのスペイン語使用率 22.5 11.1
所有者占有住宅数 172,079 128,698
賃借人占有住宅数 578,340 224,589
持ち家率 22.9 36.4
持ち家資産評価額中央値 ドル 848,700 799,600
月額賃料中央値 ドル 1,519 1,558
1人当たり年間消費額 ドル 51,968 42,926
1人当たり年間外食支出額 ドル 2,515 2,057
1人当たり年間昼食支出額 ドル 757 622
1人当たり年間夕食支出額 ドル 1,156 951
事業者数 4,441 1,922
従業員数 115,158 38,504
1事業者当たりの従業員数 26 20
従業員平均給与 ドル 31,281 28,161
1事業者あたりの人口 367 437
1事業者当たり平均収益 1,000ドル 1,796 1,172
1従業員当たり平均収益 ドル 76,116 65,802
出所:
米商務省センサス局

注1:
日本フードサービス協会発表の金額を基に比較。
注2:
地域で市・町、郵便番号(Zip Code)、人口調査標準地域(Tract)の単位まで細かく選べるが、個人情報保護法により事業者情報は表示されない。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課 課長代理
中溝 丘(なかみぞ たかし)
1997年、ジェトロ入構。海外調査部、国際交流部、経済産業省通商政策局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所、産業技術部、企画部、経済産業省貿易経済協力局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所長、サービス産業部などを経て、2016年4月より現職。

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