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共産党大会後5年間の中国の重点政策

2017年12月7日

2017年10月18日から24日にかけて、5年に1度となる中国共産党第19期全国代表大会(党大会)が開催され、これまでの5年間の評価や今後5年間の目標などが示された。

打ち出された目標自体はこれまでの基本路線から大幅に変わるものではなく、経済成長の「量」より「質」を重視する路線は次の5年も継続されるものと見込まれる。産業構造の調整を図りつつ、中国が抱える課題をクリアするためには、イノベーション能力の向上、環境規制の動向、新エネルギー車の普及がカギとなるだろう。

目標達成に向けた取り組みに言及

習近平総書記は18日午前、約3時間半にわたり「政治報告」を行い、過去5年間の政策の評価と今後5年間の政策の方針、さらには中長期的な中国の発展目標について説明した。

習総書記は過去5年間の政策について「極めて全方位的、創造的で、根本的な成果を上げた」と評価した。

事実、中国経済はここ数年安定的に推移しており、今後年率6.5%成長を続ければ、2020年に対2010年比で国内総生産(GDP)倍増との目標は達成できる見通しだ。

課題となっていた鉄鋼業を中心とする過剰生産能力の問題に関しても、国有企業の統廃合や違法メーカーの摘発などにより大幅に削減。2012年3月以来前年同月比マイナスが続いていた生産者物価指数(PPI)が2016年9月にプラスに転じるなど、供給過剰の状況にも変化が感じられる(図)。

図:中国の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)増減率の推移
(単位:前年同月比増減率(%))
2017年9月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.6%上昇、うち食品は1.4%下落、生産者物価指数(PPI)は同6.9%上昇。
出所:
国家統計局

5年間の成果を評価する一方で、習総書記は現在中国が抱えている課題に関しても言及している。イノベーション能力が十分には高まっていないことや、生態環境保護が不十分であることなどを挙げた。

中国政府は上記の課題を解決するために、この5年間さまざまな取り組みを行ってきた。まず、イノベーション能力の向上に関してだが、李克強首相は2014年、天津でのサマー・ダボス会議で「大衆創業・万衆創新」のスローガンを掲げ、起業・イノベーションを促進する政策五つを打ち出した。2016年には「国家創新駆動発展戦略要綱」「国家13・5科学技術創新計画(2016~2020)」などを打ち出し、ベンチャー企業等への支援を手厚く行っている。

製造業に関してもイノベーション能力を向上させるため、「量」から「質」へのモデルチェンジを図っている。2015年3月の全国人民代表大会で、製造業発展の10カ年計画である「中国製造2025」を打ち出し、2025年までの10年間の目標を定めるとともに、2045年までに計3ステップで「製造強国」を目指すことを目標としている。2025~35年の第2段階、2035~45年の第3段階の発展目標を掲げ、特に「インターネット+(プラス)」をはじめとするIT技術と製造業の融合促進や、特に「生産型サービス業」と呼ばれる、ものづくりと密接にかかわる分野のサービス業の発展にも力を入れることを強調した。結果、ベンチャーキャピタルやインキュベーションセンターが数多く展開する都市が生まれている。広東省深圳市は、製造業の集積に支えられ、製品の試作品が迅速に製作可能な都市として注目され、多くの起業家が集うようになり、現在は一大イノベーション都市となっている。

表:この5年間の各分野に関する主な政策
イノベーション 国家「12・5」科学技術発展計画(2011~2015)(2012)
「中国製造2025」の交付に関する通知(2015)
インターネット+行動の積極的推進に関する国務院の指導意見(2015)
製造業とインターネットの融合発展の深化に関する意見(2016)
国家創新駆動発展戦略鋼要(2016)
国家「13・5」科学技術創新計画(2016~2020)(2016)
環境規制 大気汚染防治行動計画(2013)
新環境保護法(2015)
水汚染防治行動計画(水十条)(2015)
土壌汚染防治行動計画(土十条)(2016)
環境保護税法(2017)
EV関連 新エネ車販売促進のための補助金政策(2013)
「中国製造2025」の交付に関する通知(2015)
企業平均燃料消費量と新エネ車クレジットの並行管理に関する暫定弁法(2016)
自動車産業中長期発展規画(2017)
NEV事業の規制緩和(2017)
新排ガス基準「国六」2020年から段階的に実施することを発表(2017)
出所:
各種資料を基に作成

環境保護は引き続き推進、EV化も進展か

環境保護に関しても、政府は取り組みに力を入れている。中国は2015年に「新環境保護法」を施行し、違反企業への取り締まりを大幅に強化するとともに、行政機関の監視も厳しくなった。また2017年7月には「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」を発表し(同年12月31日より施行予定)、環境への悪影響が大きい資源ごみの輸入を禁止する予定だ。第13次5カ年規画には省エネ・環境分野の発展計画が盛り込まれていることに加え、2018年1月には「環境保護税法」が施行される。ただしこれらの政策にもかかわらず、中国の大気汚染をはじめとする環境汚染の懸念は依然深刻なレベルにあり、今後環境分野の取り組みはさらに強化されていくと見込まれる。

環境規制の波は自動車産業にも及んでいる。中国政府は2016年9月、「企業平均燃料消費量と新エネルギー車クレジットの並行管理に関する暫定弁法(パブリックコメント)」を発表し、新エネルギー車の生産台数および燃費の規制をポイント制で一括管理し、これを2018年から実施するとしている。また排ガス規制・燃料品質規制に関しても、2016年より欧州連合(EU)の「ユーロ5」レベルの「国五」規制が、また2023年には「ユーロ6」より厳しい基準の「国六」規制を導入する予定だ。

環境規制に伴い、電気自動車(EV)市場の拡大が期待できる。工業・情報化部などは2017年4月に「自動車産業中長期発展規画」を発表し、2025年までに新車販売台数の2割をEVとする目標を定めている。EVの購入には補助金を支給するなどの購入促進策も行い、また政府も化石燃料車の生産・販売の禁止時期の検討を行っていることから、今後中国では急速にEV化が進んでいくことが予想される。

すでに「量」から「質」への成長へ転換

今後中国政府は2049年の建国100周年に向け、中長期的な経済目標を掲げている。まず共産党成立100周年である2021年までの短期目標として、「小康社会(ややゆとりのある社会)」の全面的完成を目指し、中華人民共和国成立100周年にあたる2049年には「社会主義近代化強国」を目指すとしている。

この「二つの100年」の目標自体は、5年前の第18期共産党大会直後に習総書記が示しているが、今回は2020年から2049年までの期間を二つに分け言及した。まず2020~35年では、経済力、科学技術力が大幅に向上し、イノベーション型国家の上位に位置する社会主義近代化国家となり、その後2035~49年で、トップレベルの総合国力と国際的影響力を有する「社会主義近代化強国」を目指す。

党大会の最終日には、今後5年間の党の重要方針を決定する中央委員が選出された。また、党規約の改正の採択が行われ、「新時代の中国の特色ある社会主義思想」、いわゆる「習近平思想」が盛り込まれたことも注目される。これまでの党大会ではGDPの中長期目標が打ち出されていたが、今回の党大会ではそれがなかった。次の5年間は、経済成長の「量」より「質」を重視する路線を継承しつつ、さらに産業構造の調整を図っていくことが示唆されている。今後5年間で、イノベーション能力の向上や生態環境保護といった課題をいかにクリアしていくかが、2期目の習近平政権の評価を大きく左右するだろう。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
田中 琳大郎(たなか りんたろう)
2015年4月、ジェトロ入構。同月より現職。

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