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新たな成長エンジンに期待(タイ、マレーシア、フィリピン)
世界主要国・地域の最新経済動向セミナー報告 東南アジア

2017年12月26日

ジェトロは12月8日、東南アジア最新経済動向セミナーと題し、タイ、マレーシア、フィリピンの現地ジェトロ所長による講演会を開催した。各国の最新経済動向、日本企業の進出状況、ビジネス環境上の課題等について報告する。

経済は堅調に推移

タイ、マレーシア、フィリピンの2016年通年の実質GDP成長率は、順に3.2%、4.2%、6.9%だったが、2017年は国際通貨基金(IMF)によるとそれぞれ3.7%、5.4%、6.6%と予測されている。タイは世界経済の回復を背景に、スマートフォン関連商品、自動車部品、水産物、ゴム製品などの輸出がけん引し、経済は緩やかな回復基調にある。マレーシアは民間消費と民間投資が成長を引き続きけん引することで、2017年第3四半期は前年同期比6.2%と、13期ぶりに6%台を記録するなど好調だ。フィリピンは2014年に人口が1億人を突破し、消費市場が引き続き拡大しており、旺盛な内需が経済を下支えする。

表:実質国内総生産(GDP)成長率の推移(単位:%)
国名 2015年 2016年 2017年
タイ 2.9 3.2 3.7
マレーシア 5.0 4.2 5.4
フィリピン 6.1 6.9 6.6
注:
2017年は予測
出所:
国際通貨基金(IMF)資料を基に作成

各国の日系企業の進出動向

三又裕生バンコク事務所長によると、タイに進出する日系企業数は5,444社に上る(2017年5月時点)。海外日系企業数では中国、米国に次いで第3位と、東南アジア諸国連合(ASEAN)で随一の企業集積を誇る。同所長によると、非製造業の企業数は2,890社に上り、製造業比率が低下、サービス産業の構成比が過半数を超えるなど、近年業種の広がりがみられる。また、盤谷日本商工会議所が年2回実施する「日系企業景気動向調査」によると、2017年度の投資見通しで、設備投資の「投資増」を見込む企業は44%、「横ばい」は33%、「投資減」は17%となり、おおむね拡大傾向が続いている。BOI認可ベースによるタイへの投資残高においても、日本は引き続き圧倒的なプレゼンスを持っている。


タイの最新事情を解説する三又バンコク所長

梶田朗クアラルンプール事務所長によると、マレーシアへの進出日系企業数は1,396社に上り、製造業は712社、非製造業は684社だ(2016年12月時点)。製造業は電気・電子部品が246社と最大で、非製造業では商社が144社と最大となっている。近年は非製造業の伸び幅が大きいのはタイと同様の傾向だ。2016年の投資残高では、日本からマレーシアへの投資残高が全体に占める割合が11.7%と、シンガポールに次いで第2位となっている。石油・ガス、環境インフラ開発、建設、電気・電子、小売り等、多岐にわたる業種において日本企業の進出が進む。


マレーシアの最新事情を解説する梶田クアラルンプール所長

石原孝志マニラ事務所長によると、フィリピンの進出日系企業数は1,440社に上り(日本国外務省、2016年10月時点)、マレーシアを上回る水準だ。日本からフィリピンへの投資残高が全体に占める割合は22.6%となり(2007年~2016年までの累計)、第1位となっている。日本からフィリピンへの投資はこれまで製造業が優勢だったが、2016年の全体投資額2,483億円(ネットフロー、国際収支ベース)のうち、製造業936億円、非製造業1,547億円と、タイやマレーシア同様、フィリピンも近年はサービス業への投資が増加している。在外フィリピン就業者(OFW)の対内送金額は268億9,900万ドル(2016年)に上り、同年のフィリピンのGDP(3,049億600万ドル)の8.8%を占める。このように海外からの豊富な資金送金もあり、若年層を中心に消費市場が拡大しており、今後もサービス業を中心に消費拡大が見込めるのがフィリピンの強みだ。


フィリピンの最新事情を解説する石原マニラ所長

日系企業が抱える課題

このように、日系企業の活動が拡大傾向にある3カ国であるが、一方で課題も多い。タイでは5千社を超える日系企業が進出していることもあり、地場企業に加え、同業日系企業同士の競争も激化している。日本食レストランを中心とする外食産業はその典型例といえよう。最低賃金の上昇に伴い人件費が高騰する中、失業率が近年1%程度の水準で推移していることもあり、企業の人手不足感が強い。

マレーシアは国民の高い英語力や親日的な国柄、自然災害の少なさ等が投資環境上のメリットとして挙げられる一方、2013年に最低賃金令が施行され、原則全ての業種を対象に最低賃金が導入された。現在1,000リンギ(マレー半島)の最低賃金は2018年にも引き上げが検討されている。そうした中、2013年に最低定年法が施行され、2018年には雇用保険制度が開始される予定で、企業の人件費負担が今後さらに拡大することが懸念される。加えて、新規の外国人労働者の雇用にあたっては、認可審査が厳格化されるなど、日本企業は労務に関し多くの課題を抱える。

フィリピンはマレーシア同様に言語・コミュニケーション上の障害の少なさが投資環境上のメリットとして挙げられるが、タイやマレーシアのように人件費高騰や人手不足を課題とする企業はそれ程多くない。他方、インフラの未整備を指摘する声は多く、道路の渋滞、高い電気代、不十分な港湾施設等の問題に不満を抱える企業が多い。

2018年の注目ポイント

タイは2010年に1人当たりGDPが5,000ドルを超えたが、2016年は同5,902ドルにとどまる。三又バンコク事務所長は「タイ政府は『中進国のわな』を回避すべく、産業の高度化、高付加価値化を図るため、タイランド4.0のビジョンのもと、持続可能な経済成長を目指している」と語る。加えて、これらを加速させるため、タイ政府は先行的にタイ東部3県に東部経済回廊(Eastern Economic Corridor:EEC)を設置し、タイ経済の飛躍的な成長を実現させる「S字カーブ産業」を誘致することを決定した。今後、 空港、道路、鉄道、製造、イノベーションなどの分野を重点的に投資する予定で、EEC が世界有数の経済圏となることを目指している。

マレーシアは2006年から2030年にかけて、北部経済回廊(NCER)、東海岸経済地域(ECER)、サバ開発コリドー(SDC)、イスカンダル・マレーシア(IM)、サラワク再生エネルギーコリドーの五つの地域大型開発計画を進めている。梶田クアラルンプール事務所長によると、イスカンダル地域はシンガポールを後背地に控え、今後シンガポール・プラスワンとしての伸びしろが期待されるという。広大な工業団地に加え、ペトロナス社が総合石油化学基地を開発しており、今後の動向が注目される。

石原マニラ事務所長によると、フィリピンでは現在「包括的自動車産業振興戦略(CARS)」プログラムの下、新規に生産される四輪自動車モデルを対象に、2016年からの6年間で総額270億ペソ(約600億円)を補助(1 モデル当たり最大90億ペソ)しているという。日系自動車メーカーでは、トヨタの小型セダン「ヴィオス」、三菱自動車の小型車「ミラージュ」が認定車種となっており、今後フィリピンの自動車産業の拡大に期待が高まる。また、ドゥテルテ大統領が進める「ビルド・ビルド・ビルド」の掛け声のもと、今後のインフラ投資の拡大にも注目だ。

ASEANでは2015年末にASEAN経済共同体(AEC)が発足し、貿易の自由化・円滑化については各国の取り組みが着実に進展している。通関申告手続きの電子化や原産地証明書の自己証明制度の導入、関税や輸入規制などに関する貿易関連情報の整備・一元化等の取り組みも今後さらに加速する予定だ。こうしたASEANの経済統合の流れを背景に、今後、各国の着実な経済政策の実行に期待したい。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課 課長代理
水谷 俊博(みずたに としひろ)
2000年、ブラザー工業入社。2006年、ジェトロ入構。2011年~2014年、ジェトロ・ヤンゴン事務所勤務。2014年よりジェトロ海外調査部アジア大洋州課勤務。

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