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ミャンマー人の栄養・美容ドリンク「ツバメの巣」

2017年10月16日

日本でツバメの巣は食材としてあまりなじみがないが、高級食材として中華料理のスープ等に利用されることは広く知られている。ミャンマーではタニンタリー管区のメイッがツバメの巣の生産地として有名だ。ミャンマーでツバメの巣は健康・美容に効果があるとされ、伝統薬に混ぜたり、ドリンクとして飲むのが一般的である。本稿ではミャンマーでのツバメの巣の生産状況や活用法について紹介する。

管区最大の町、メイッ

ミャンマーでツバメの巣について解説した「インターナショナルライクミャンマーコマーシャルバードネスト(International Like Myanmar Commercial Bird Nest。以下、ミャンマーバードネスト)」によると、ツバメの巣は中国の唐の時代に既に食材として使用されていたという。しかしその希少性ゆえ王族しか食することができず、過去から高級食材として位置付けられていた。中国の王族の女性はツバメの巣は美貌を維持するうえで欠かせない食材と信じ、好んで食したといわれている。

食用可能なツバメの巣は、アナツバメと呼ばれる種類のツバメが作る巣で、日本で見かけるツバメとは種類が異なる。アナツバメはタイ、ベトナム、インドネシアなどの東南アジア地域に多く生息しており、これが東南アジア一帯でツバメの巣が広く普及している理由の一つである。ミャンマーでもタニンタリー管区のメイッとよばれる町の一帯でツバメの巣を採取できる。メイッは、経済特別区(SEZ)の開発計画が進むダウェーの南に位置する町だ。同管区の首都ダウェーの人口がおよそ13万人であるのに対し、メイッはおよそ30万人と、同管区最大の都市となっている。

日本の観光ガイドブックなどでは、メイッを漁業の町に加え、美しい島々と海が広がるリゾート地メルギー諸島への玄関口の町と紹介されている。ミャンマー人の間ではツバメの巣が多く産出される町として認知されているようだが、日本ではほとんど知られていない。

図1:メイッの位置
ミャンマーの地図でメイッの位置を示す。ミャンマー南部のタニンタリー管区の北にダウェー、メイッはダウェーの南に位置しする。

出所:ジェトロ作成

生産・販売店はおよそ70社

ツバメの巣といえば、海沿いの断崖絶壁を命がけで登り採取するイメージがある。もちろん、メイッでもこうした場所にツバメが巣を作るため収穫することはあるが、実際は軒下や空き倉庫の屋根にツバメが巣を作ったものを採取するのが一般的である。タニンタリー管区漁業組合のウーミャッタッ氏によると、メイッにはツバメの巣を生産・販売する会社がおよそ70社あるという。これらの会社は主に自社の屋根などに1,500~5,500ヘルツの人間には聞こえない波長をスピーカーで人工的に流し、ツバメを呼び寄せ、ツバメの巣を作らせるとのことだ。他方、生産・販売会社のなかには、人工的にツバメを呼び寄せるのではなく、ツバメが自然に会社の建物内に住みつき、巣の生産・販売を開始した会社も1社あるという。それが今年で創業40年を迎えるジワソー社だ。同社のマネジャーであるティンザーエー氏によると、同社が保有する空き倉庫の屋根には、1個の大きさが長さ7から10センチ、幅が4から6センチ、深さ2.5から4センチ、重さがおよそ7~8グラムのツバメの巣が常時300個以上あり、年3回に分けてそれらを収穫するのだという。空き倉庫は常に締め切っており、倉庫の壁に開いた穴からツバメが出入りしている。倉庫内には何も置いていないため、蛇などの外敵が屋根に上ることはなく、ツバメにとっては巣作りに適した環境のようだ。ツバメは朝5時ごろエサを求め外へ飛び立ち、夕方5時ごろ巣へ戻ってくる。同社はこの時間帯を見計らって、真っ暗な倉庫のなかで屋根にはしごを立て掛け、小さな懐中電灯で一つ一つ巣に卵やヒナがいないか確認しながら巣を採取するのだという。

ツバメの奪い合いも

ミャンマーバードネストによると、ある地区の1社あたりのツバメの巣の生産量は、1997年度が1,676ビス(1ビス約1.6キロ、2,682キロに相当)であったのに対し、2008年度は332ビス(同531キロ)と、この10年あまりで大幅に減少している。この点について、ティンザーエー氏によると、「メイッでツバメの巣の生産・販売会社が近年増加し、ツバメの取り合いが起きており、メイッ全体でのツバメの巣の生産量は増えているだろうが、1社あたり確保できるツバメの数が相対的に減ったため、1社あたりの生産量は減少している」と語る。

一方、ツバメの巣の取引価格は年々高騰している。ミャンマーバードネストによると、1975年は1キロあたり10ドルで取引されていたものが、2008年は2,000ドルとなった。それでも、ミャンマー産のツバメの巣は国際市場ではまだ知名度が低く、価格も安いため、近年は同社にもヤンゴンだけではなく、中国からもバイヤーが訪れるとティンザーエー氏は語る。

図2:1社あたりのツバメの巣の生産量の推移(単位:キロ)(年度)

注:97~98年度はワイヤンピョー社の生産量
99~04年度はシュエヨンモー社の生産量
05~08年度はパダミャーヤウンチー社の生産量
出所:ミャンマーバードネストに基づきジェトロ作成

ツバメの巣は3つに分類

ミャンマーではツバメの巣を3つのクラスに分類し販売している。上位のツバメの巣は純白で、巣の厚さも薄く、形がきれいなものである。中位は巣の色がミルク色でところどころ黒い斑点が入っており、下位は巣の色が茶色である。近年、ミャンマーでは上位のツバメの巣は1ビス(1.6キロ)あたり350万チャット(1ドル約1,350チャット、約2,593ドルに相当)で取引されているという。中位も300万チャット(同2,222ドル)と高値である一方、下位は100万チャット以下(741ドル)と一気に価格が落ちるという。

ツバメの巣の栄養について、ミャンマーバードネストによると、上位のツバメの巣100グラムあたりの栄養価は292カロリーで、成分としてはプロテインが53%、炭水化物が20%、残りは水分が占めているとされる。また巣にはイソロイシンやリジンといったアミノ酸類が多く含まれていることが明らかにされており、まさに天然の健康・美容食品といえよう。

ミャンマーの伝統薬にもツバメの巣が使用されている。ツバメの巣が4グラム含まれている伝統薬は、心臓病や神経系の病気に効くとされ、同じく16グラム含まれている伝統薬も滋養強壮、下痢などの症状に効くとされている。

ミャンマーでもツバメの巣は高級食材

ミャンマー人の間でもツバメの巣は健康や美容に良いと認識されており、ヤンゴン市内でもツバメの巣専門店をよく見かける。しかし、ミャンマーではツバメの巣を中華風スープに入れるといった調理方法ではなく、ツバメの巣を水で溶かし、沸騰した砂糖水と混ぜ、それを冷ましたうえでドリンクとして飲むのが一般的だ。ヤンゴン市内では60グラムのツバメの巣が31万チャット(同230ドル)で販売されている。純白な上位品は80グラムで76万チャット(563ドル)と高価で、日本人でもなかなか手を出しにくい値段だ。一方、スーパーマーケットでは1パック6本セットなどのドリンクも販売されている。ただし、これも1パックおよそ3万チャット(22ドル)と、ミャンマー人の収入から考えればやはり高価だ。しかしながら、専門店の従業員からは売れ行きは上々だと語る。専門店には、連日女性を中心にツバメの巣を購入しにくる常連客の姿が見られる。ある女性は「ツバメの巣のドリンクは飲み続けることで健康が維持され、美への効果も生まれる」という。高価であっても健康・美に対する投資はミャンマーにおいても日本においても変わらないようだ。

執筆者紹介
ジェトロ・ヤンゴン事務所
堀間 洋平(ほりま ようへい)
2003年中国電力株式会社入社。2015年ジェトロ海外調査部アジア大洋州課(出向)、2016年よりジェトロ・ヤンゴン事務所勤務。

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