税制

最終更新日:2023年12月01日

法人税

オーストラリアで設立された現地法人は「所得税法」上のオーストラリア居住会社とされ、全所得に対して30%課税される。ただし、「近年の法人税の動向」で詳述するように年間売上高が一定以下の中小企業(Base rate entities)に対してはより低い優遇税率が適用され、2022-23財政年度の同税率は25%となる。

居住会社

オーストラリアで設立された現地法人は「所得税法」上のオーストラリア居住会社とされ、源泉の所在にかかわらず、国外源泉所得やキャピタルゲインを含めたすべての所得に対して課税される。税率は30%。

なお、国外源泉所得に対して外国で支払われた所得税に対する税額控除が認められる。外国会社からのポートフォリオの配当は課税対象となるが、当該配当につき支払われた源泉所得税やその他の税については税額控除の対象となる。また、オーストラリアと同等に課税する国に居住する会社からのノン・ポートフォリオ配当(支払配当法人の10%以上の議決権を有する株式を所有している場合)については、オーストラリアの所得税が免除される。

居住会社が、租税条約締結国より利子やロイヤルティー所得を得て、それが既に低率で課税されていた場合には(当該所得はオーストラリアの課税対象となるが)、外国支払税額控除を受けることができる。この控除は当該所得に対するオーストラリア所得税の限度までとされる。

非居住会社

非居住会社は、オーストラリアを源泉とする所得および「オーストラリアと必然的な関係を持つ」資産に対するキャピタルゲインのみに課税される。

非居住会社が受け取る利子・ロイヤルティー・配当に対する課税

通常、非居住会社に支払われた利子については、源泉税が課税され、通常の賦課査定の下では課税されない。

非居住会社に支払われたロイヤルティーは、そのロイヤルティーが非居住会社のオーストラリアにおける恒久的な施設(Permanent Establishment:PE)に関連するものでない限り、源泉税のみが課税される。

居住会社から非居住会社に支払われた配当は、源泉税課税の対象となる。ただし、その配当がインピュテーション制度の下で適格配当となっている場合、もしくは特定の外国源泉配当所得から支払われており、オーストラリアの居住企業がその配当に対してFDA(foreign dividend account)率を指定している場合(すなわち、当該配当が外国の配当勘定から支払われたと会社が宣言した場合)は源泉税課税の対象外となる。非居住会社の経費の扱いを受けない配当・利子で、実質上、オーストラリアの非居住会社の恒久的施設(PE)に関連するものは、源泉税課税の対象外となり、通常の法人税率で課税される。

近年の法人税の動向

2013年9月の選挙で勝利した保守連合(自由党、国民党)は選挙戦において、国内の経済と投資の活性化を図るため法人税の引き下げを公約、2015/2016年度予算において年間売上高200万豪ドル未満の小規模事業者について、2015年7月1日から法人税率を1.5ポイント引き下げて30%から28.5%とした。さらに、2016年7月1日(2016/2017年度)から、年間売上高1,000万豪ドル未満の小規模事業者について、法人税率を1.0ポイント引き下げて27.5%とした。2017年7月1日(2017/2018年度)、27.5%の法人税率が適用される小規模事業者の年間売上高の閾額を「2,500万豪ドル未満」に引き上げた。
なお、保守連合政権はさらなる法人税減税を目指して減税対象を大企業まで拡大した法案を議会に提出したが、「大企業優遇」との批判を集め、2018年に与党勢力が過半数に満たない連邦上院で否決された。このため、保守連合政権は法人税減税法案の成立を断念した。しかし同年、年間売上高が5,000万豪ドル未満の企業に対して、2018/19年度から27.5%、2020/2021年度には26%、2021/22年度とそれ以降の年度は25%と税率を段階的に引き下げた。
グループ総売上高50億豪ドル未満の企業は、2019/2020年度、2020/2021年度、2021/2022年度および2022/2023年度において生じた欠損金に関して、2018/2019年度以後に生じた課税所得と相殺するために繰り戻すことができ、実質的に過去に支払った法人税の還付を受けることができる。

また、2020/2021年度の連邦予算案では、オーストラリア法人の税法上の居住性について、オーストラリア登記の企業であっても主に海外で事業を展開する企業は、法人税法上、オーストラリアの居住会社とみなされないように規制変更を実施する方針を明らかにした。居住会社基準(Corporate Residency Test)に関する改革を盛り込んだ改正案(2022年12月9日現在で未施行)では、納税者は2017年3月15日まで遡って新基準に基づく税の還付等を申請できる予定。ただし当該措置を実現するための法制化やその検討は現時点で行われてない。

その他の企業向け税制

オーストラリア国内におけるグループ総売上高が50億豪ドル未満の企業を対象に、取得価額の大小に関らず、適格減価償却資産を最初に使用した年度、または使用可能となった年度において、その取得価額の全額を損金処理することができる。
その他、中小企業向け税制優遇措置が拡大され、年間総売上高1,000万~5,000万豪ドル未満の企業は、複数の税制優遇措置を受けることができる。創業にかかる一部のコストなどについて即時損金算入が可能になるほか、従業員への複数の携帯用電子機器の支給に対するフリンジ・ベネフィット税(現金の給与・賞与以外の福利厚生等の報酬に対する課税=FBT)が免除になるなど、複数の項目が適用される。
労働党の新政権は2022年10月、「2022/2023年度予算案」を公表した。新予算案では、法人税制の大枠に変更はないが、電気自動車(EV)に対するフリンジ・ベネフィット税が免除されている。連邦政府が示した目安によると、5万豪ドルのEV1台を社用車に導入した場合、事業者は1年間当たり9,000豪ドルのFBTの免除が受けられる。EVはFBTのほかに5%の関税も免除されるため、前記の場合、購入価格は1台当たり2,500豪ドル低下する。

オーストラリア国税局(ATO):

二国間租税条約

日本との間で二国間租税条約を発効済み。源泉税率は利子最大10%、配当金最大15%、ロイヤルティー最大5%。

2008年12月、日・豪新租税条約が発効。
日本財務省:日・豪新租税条約について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

その他税制

個人所得税は最高税率45%、GST(財・サービス税)は10%。

個人所得税(最高税率45%)

1. 居住者(2023/2024財政年度の税額・税率)※メディケア税は含まない
課税所得(豪ドル) 税額・税率
0~18,200 0%
18,201~45,000 18,200豪ドルを超える範囲につき、1豪ドル当たり19豪セント(19%)
45,001~120,000 5,092豪ドル+45,000豪ドルを超える範囲につき、1豪ドル当たり32.5豪セント(32.5%)
120,001~180,000 29,467豪ドル+120,000豪ドルを超える範囲につき、1豪ドル当たり37豪セント(37%)
180,001以上 51,667豪ドル+180,000豪ドルを超える範囲につき、1豪ドル当たり45豪セント(45%)
2. 非居住者(2023/2024財政年度の税額・税率)
課税所得(豪ドル) 税額・税率
0~120,000 1豪ドル当たり32.5豪セント(32.5%)
120,001~180,000 39,000豪ドル+120,000豪ドル超える範囲につき、1豪ドル当たり37豪セント(37%)
180,001以上 61,200豪ドル+180,000豪ドルを超える範囲につき、1豪ドル当たり45豪セント(45%)
3. ワーキングホリデー(2023/2024財政年度の税額・税率)
課税所得(豪ドル) 税額・税率
0~45,000 1豪ドル当たり15豪セント(15%)
45,001~120,000 6,750豪ドル+45,000豪ドル超える範囲につき、1豪ドル当たり32.5豪セント(32.5%)
120,001~180,000 31,125豪ドル+120,000豪ドル超える範囲につき、1豪ドル当たり37豪セント(37%)
180,001以上 53,325豪ドル+180,000豪ドルを超える範囲につき、1豪ドル当たり45豪セント(45%)

オーストラリア国税局(ATO):

保守連合の前政権は低・中所得層が恩恵を受ける個人所得税制度の改革を段階的に推進した。2020/2021年度連邦予算案では、2022/2023年度に向けて予定されていた個人所得税減税を前倒し、2022年7月1日に開始が予定されていた減税を2020年7月1日に遡って実施した。これにより、税率19%の区分の上限が3万7,000豪ドルから4万5,000豪ドルに、32.5%の区分の上限が9万豪ドルから12万豪ドルに引き上げられた。なお、労働党の新政権も、前政権が導入した所得税減税の次の段階(2024/2025年度)を2024年7月1日に予定通り実行すると表明している。
2024/2025年度の課税所得幅と税率は次のとおりである。

課税所得(豪ドル) 税率
0~18,199 0%
18,200~45,000 19%
45,001~200,000 30%
200,001~ 45%

メディケア税(Medicare Levy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

所得税のほかに、国民皆保健制度「メディケア」の財源としてメディケア税が徴収される。税率は課税所得の0から2.0%である。メディケア税は、低所得者は免除または軽減される。永住権を持たない滞在者など税法上の「非居住者」も免除される(通常、所得税申告の際に還付される)。
また、民間健康保険に未加入の高額所得者は最大3.5%(2.0%+追加課税1.0%、1.25%、または1.5%)の税率が適用される。経済的余裕のある人に民間健康保険への加入を促し、メディケアの負担を軽減することが目的。

財・サービス税(GST外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):税率10%

一部の基礎的食料品を除くほぼすべての財・サービスに関して課税される。

州税

連邦政府による課税のほか、各州政府によって課せられる給与支払い税(Payroll Tax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、土地税、印紙税等がある。