ジェトロ世界貿易投資報告 2026年版
第Ⅰ章 世界と日本の貿易
第3節 日本の貿易 第2項 日本のサービス貿易
旅行と産業財産権等使用料がサービス貿易の柱
2025年の日本のサービス貿易収支は231億ドルの赤字となり、前年の赤字幅(211億ドル)から拡大した(図表I- 38)。サービス貿易の赤字幅が拡大したのは3年ぶりである。
- 注:
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- 円建て公表値をジェトロがドル換算。
- Pは速報値。
- デジタル関連サービス:著作権等使用料、通信、コンピューター、情報、専門・経営コンサルティング。その他:委託加工、維持修理、建設、保険・年金、金融、研究開発、技術・貿易関連、個人・文化・娯楽、公的サービス。
- 出所:
- 「国際収支統計」(財務省、日本銀行)から作成
近年のサービス貿易の動向を見ると、旅行サービスと知的財産権等使用料の一項目である産業財産権等使用料で黒字を稼ぎ、運輸、デジタル関連などその他のサービスで赤字という構造が定着している。最大の稼ぎ頭である旅行サービスは2025年も好調が続き、サービス貿易収支は小幅な悪化に留まった。旅行サービスの黒字幅は前年(403億ドル)から約1割増え、446億ドルと、3年連続で過去最高額を更新した。インバウンド関連指標は上向きの動きが続いており、日本政府観光局(JNTO)によれば、2025年の訪日外客数は4,268万人と、初めて4,000万人台を記録。韓国や台湾などアジアを中心に多くの国・地域で訪日客数が過去最高となった。また「インバウンド消費動向調査」(観光庁)によれば、宿泊費や買い物代など、2025年のインバウンドによる消費額は、9兆4,549億円と3年連続で過去最高額を更新した。
政府は、経済発展をリードする成長産業として観光産業を位置づけ、インバウンド需要に期待をかける。2026年3月に政府が策定した「観光立国推進基本計画(第5次)」では、2030年に訪日外国人旅行者数を6,000万人、インバウンド消費額を15兆円など目標値を定め、オーバーツーリズム対策を強化するとともに、地方誘客を推進することで需要の分散を図るとした。
もっとも、足元のインバウンド関連指標の増加テンポが緩やかになっている。2025年末以降、安全保障を巡る発言を契機とした日中関係の緊張を背景に中国からの訪日外客数が急減したこともあり、2026年に入ってから訪日外客数全体の伸びは横ばいが続いている。一方で、2026年1~3月期のインバウンド消費額は2兆3,378億円(1次速報値)と前年同期から2.5%増加した。国籍・地域別では中国が前年同期からほぼ半減したものの、その他の国・地域の消費が伸び、全体として底堅い動きを示した(図表I-39)。
- 注:
- 2026年Q1は一次速報値。
- 出所:
- 「インバウンド消費動向調査」(観光庁)から作成
サービス貿易のもう1つの柱は、前述のとおり、産業財産権等使用料である。2025年の産業財産権等使用料の黒字幅は319億ドルと、前年(328億ドル)並みを維持した。産業財産権等使用料は、特許権や商標権など産業財産権の使用料、フランチャイズ加盟に伴う費用などが計上されている。このほか、日本の自動車メーカーが海外生産台数に応じて関連会社から取得するロイヤルティーなども含まれ、産業財産権等使用料の主な受取源となっている。2025年の日系メーカーの海外生産台数は1,636万台(前年比0.7%減)と微減にとどまり注1、産業財産権等使用料の収支も横ばいで推移した。
一方、サービス収支の押し下げ要因のうち、近年、サービス貿易全体への影響が増しているのがデジタル関連サービスの赤字、いわゆる「デジタル赤字」である。日本銀行によると、サービス貿易の各項目のうち、1. 著作権等使用料(知的財産権等使用料の一項目、音楽や映像などの複製や配信に伴うライセンス料など)、2. 通信・コンピューター・情報サービス(インターネットなど通信手段の利用料やクラウドサービスなどの利用料など)、3. 専門・経営コンサルティングサービス(インターネット広告の売買取引を含む広告に関わるサービス取引など)の3項目がデジタル関連サービスに含まれる注2。日本のデジタル赤字は拡大基調にあり、2025年の赤字幅は450億ドルと前年(453億ドル)からわずかに縮小したものの、サービス貿易全体の赤字に占める存在感は依然として大きい。
このほか、恒常的に赤字が続く輸送サービスは、赤字幅が48億ドルと前年の赤字(49億ドル)から横ばいとなった。またその他の項目では、その他業務サービス(赤字幅:410億ドル)、保険・年金サービス(同222億ドル)などで前年から赤字が拡大した。
注記
- 注1
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日本自動車工業会「統計速報 海外生産
」(2026年2月) - 注2
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日本銀行「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化
」(2023年8月)
(2026年7月28日)



