ジェトロ世界貿易投資報告 2025年版

第Ⅰ章 世界と日本の経済・貿易
第3節 日本の経済・貿易の現状
第1項 日本経済の現状

緩やかな回復基調にあるが、先行きに不透明感

2024年の日本の実質GDP成長率は0.2%(内閣府)となり、伸び率は前年(1.4%)から緩やかとなったものの、4年連続でプラス成長を維持した(図表Ⅰ-35)。

図表Ⅰ-35 日本の実質 GDP成長率と需要項目別寄与度
日本の実質GDP成長率に対する項目別寄与度。(1)2018年から2024年の各年の実質GDP成長率に対する寄与度。2018年、実質GDP成長率0.6%に対し、個人消費0.1、住宅-0.3、設備投資0.4、民間在庫変動0.2、公需0.2、純輸出0。 2019年、実質GDP成長率-0.4%に対し、個人消費-0.3、住宅0.2、設備投資-0.1、民間在庫変動-0.1、公需0.5、純輸出-0.4。 2020年、実質GDP成長率-4.2%に対し、個人消費-2.4、住宅-0.3、設備投資-0.8、民間在庫変動-0.5、公需0.7、純輸出-0.8。 2021年、実質GDP成長率2.7%に対し、個人消費0.4、住宅0、設備投資0.3、民間在庫変動0.4、公需0.6、純輸出1。 2022年、実質GDP成長率0.9%に対し、個人消費1.1、住宅-0.1、設備投資0.4、民間在庫変動0.2、公需-0.2、純輸出-0.5。 2023年、実質GDP成長率1.4%に対し、個人消費0.5、住宅0.1、設備投資0.3、民間在庫変動-0.3、公需0、純輸出0.9。 2024年、実質GDP成長率0.2%に対し、個人消費0、住宅-0.1、設備投資0.2、民間在庫変動-0.1、公需0.1、純輸出0。 (2)2024年第1四半期から2025年第1四半期まで。前期比年率。2024年Q1、実質GDP成長率-1.3%に対し、個人消費-1.4、住宅-0.5、設備投資-0.5、民間在庫変動0.7、公需-0.1、純輸出0.3。 2024年Q2、実質GDP成長率3.9%に対し、個人消費1.8、住宅0.2、設備投資0.9、民間在庫変動0.4、公需1.8、純輸出-1.2。 2024年Q3、実質GDP成長率0.9%に対し、個人消費1.6、住宅0.1、設備投資0.1、民間在庫変動0.3、公需-0.1、純輸出-1。 2024年Q4、実質GDP成長率2.2%に対し、個人消費0.2、住宅0、設備投資0.4、民間在庫変動-1.2、公需0、純輸出2.9。 2025年Q1、実質GDP成長率-0.2%に対し、個人消費0.3、住宅0.2、設備投資0.8、民間在庫変動2.4、公需-0.4、純輸出-3.4。
出所:
「GDP統計(2025年1~3月期2次速報改訂値)」(内閣府)から作成

2024年は、一部の自動車メーカーの生産、出荷停止等の影響により1~3月期の成長率はマイナスとなったが、個人消費や設備投資を中心に内需が堅調に推移した。2025年1~3月期は、設備投資の増加が続き、個人消費はわずかながらもプラスとなった。一方、純輸出(外需)は輸出の伸び悩みに加え、輸入が増加したことから大幅なマイナス寄与となり、2025年1~3月期の実質GDPは4四半期ぶりのマイナス成長となった。

2024年8月の「月例経済報告」(内閣府)では、個人消費や住宅投資の持ち直し、企業収益が堅調なことを背景に、国内の景気判断を「一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」とし、1年3カ月ぶりに上方修正した。しかし2025年に入り、米トランプ新政権が繰り出す関税政策などにより下振れリスクの高まりを懸念、4月の同報告では「米国の通商政策等による不透明感がみられる」という表現を追加、5月、6月の報告でも同表現が続いている。今後の経済情勢の先行きについては回復基調が続くことを期待しつつ、米国の通商政策がもたらす経済への影響に警戒感が高まっている。

鉱工業生産指数の動きを見ると、2024年は前年と同様に一進一退となるも、全体の生産水準は2023年より低く、2024年の鉱工業生産指数は前年比2.6%の低下となった。業種別では、前述の一部の自動車メーカーの生産停止などによる影響を受け、輸送機器は2024年初めに大きく生産水準を落とした(図表Ⅰ-36)。工場稼働再開により生産水準は戻りつつあるものの、2023年後半の水準には届いていない。品目別では、普通乗用車、駆動電動・操縦装置部品、小型乗用車の生産が振るわなかった。生産用機械は増減が入り混じる動きが続いている。生産用機械のうち、半導体製造装置などは輸出向けが増加したことから、年間では前年比プラスとなった一方、建設機械、産業用ロボットでは輸出の伸び悩みが響き、生産は前年比でマイナスとなるなど、品目により異なる動きとなった。一方、電子部品・デバイスは2023年以降、徐々に生産水準が上がりつつある。2024年は記憶素子(メモリ)生産などが回復、電子部品・デバイス全体の生産は前年比プラス、2025年もおおむね増加が続いている。

図表Ⅰ-36 日本の鉱工業生産指数の推移
2023年1月から2025年5月までの月次の業種別鉱工業生産指数。2020年=100、季節調整済み。(1)鉱工業生産全体 2023年:101.1、 104.5、 104.9、 105.2、 104.1、 105、 103.5、 103.1、 103.2、 104.4、 103.8、 105。 2024年:97.7、 98、 101.4、 100.8、 101.9、 100.7、 102.5、 100.5、 101.2、 103、 101.3、 101。 2025年:99.9、 102.2、 102.4、 101.3、 101.8。(2)輸送機械 2023年:104、 105.7、 110.1、 113.4、 108.7、 111.8、 112.5、 110.3、 115、 114.9、 115.4、 116.7。 2024年:101.9、 95.4、 104.3、 103.5、 111.7、 107.4、 108.9、 104.3、 107.8、 110、 108.1、 108.4。 2025年:113.5、 110、 104.6、 105.5、 107.3。 (3)生産用機械2023年:112.5、 125.6、 128、 122、 124.5、 125.4、 119.2、 118.2、 115.7、 115.5、 117.5、 121.4。 2024年:116.8、 112、 123.6、 129.4、 119.8、 110.7、 115.8、 116.1、 108.6、 129.2、 119.1、 120.9。 2025年:108.6、 117.6、 125.9、 114.9、 121.3。 (4)電子部品・デバイス2023年:93.1、 95.4、 90.8、 95.1、 92.4、 97.7、 92.8、 93.6、 93.5、 97.5、 97、 98.6。 2024年:96.1、 95.6、 101.3、 101.1、 101.5、 96.5、 104.6、 105.7、 107.3、 100.5、 98.6、 100.1。 2025年:95.3、 104.3、 106.5、 111.9、 108.5。
出所:
「鉱工業指数(生産・出荷・在庫)」(経済産業省)から作成

2024年の日本の経常収支は1,937億ドルの黒字となり、2年連続で黒字幅が拡大した(図表Ⅰ-37)。経常収支の改善に最も貢献したのは、貿易収支(国際収支ベース)である。貿易収支は3年連続で赤字が続くものの、赤字幅は245億ドルと、前年の赤字幅(490億ドル)からほぼ半減した。また好調な旅行サービスを背景に、サービス収支の赤字幅も2年連続で縮小した。安定して黒字計上が続く第1次所得収支は、黒字幅が2,671億ドルと過去最高額(2,678億ドル、2022年)に迫る規模となった。このうち直接投資収益が1,630億ドル、証券投資収益が949億ドルといずれも前年水準から増加、経常収支の黒字拡大に寄与した。2025年1~4月は、貿易収支では赤字縮小の速度が弱まったものの、サービス収支の赤字縮小などにより、経常収支黒字(654億ドル)は前年同期比で増加を維持している。

図表Ⅰ-37 日本の経常収支の推移
2015年から2024年、2024年1~4月、2025年1~4月の日本の項目別経常収支の推移。単位は10億ドル。 2015年、経常収支136443、貿易収支-7414、サービス収支-16043、直接投資収益72323、証券投資収益100361、その他の第一次所得収支3505、第二次所得収支-16290。 2016年、経常収支197656、貿易収支51292、サービス収支-10562、直接投資収益76667、証券投資収益95442、その他の第一次所得収支4574、第二次所得収支-19756。 2017年、経常収支203456、貿易収支44049、サービス収支-6175、直接投資収益87067、証券投資収益91339、その他の第一次所得収支6139、第二次所得収支-18964。 2018年、経常収支177921、貿易収支11000、サービス収支-9159、直接投資収益95615、証券投資収益89979、その他の第一次所得収支8742、第二次所得収支-18256。 2019年、経常収支176368、貿易収支1340、サービス収支-9978、直接投資収益103019、証券投資収益89238、その他の第一次所得収支5349、第二次所得収支-12600。 2020年、経常収支149960、貿易収支26629、サービス収支-34192、直接投資収益91365、証券投資収益84455、その他の第一次所得収支5882、第二次所得収支-24180。 2021年、経常収支196174、貿易収支16452、サービス収支-38616、直接投資収益151062、証券投資収益77768、その他の第一次所得収支11040、第二次所得収支-21532。 2022年、経常収支89954、貿易収支-115832、サービス収支-42515、直接投資収益174176、証券投資収益79771、その他の第一次所得収支13863、第二次所得収支-19507。 2023年、経常収支155911、貿易収支-49039、サービス収支-24436、直接投資収益158971、証券投資収益86894、その他の第一次所得収支13213、第二次所得収支-29692。 2024年、経常収支193662、貿易収支-24495、サービス収支-18354、直接投資収益162957、証券投資収益94924、その他の第一次所得収支9231、第二次所得収支-30601。 2024年1-4月、経常収支57670、貿易収支-13179、サービス収支-10704、直接投資収益51623、証券投資収益39448、その他の第一次所得収支2802、第二次所得収支-12320。2025年1-4月速報値、経常収支65430、貿易収支-10847、サービス収支-9649、直接投資収益57194、証券投資収益42162、その他の第一次所得収支405、第二次所得収支-13835。
注:
  1. 円建て公表値をジェトロがドル換算。
  2. Pは速報値。
出所:
「国際収支統計」(財務省、日本銀行)から作成

特記しない限り、本報告の記述は2025年6月末時点のものである。