ジェトロ世界貿易投資報告 2025年版
第Ⅰ章 世界と日本の経済・貿易
第3節 日本の経済・貿易の現状 第1項 日本経済の現状
緩やかな回復基調にあるが、先行きに不透明感
2024年の日本の実質GDP成長率は0.2%(内閣府)となり、伸び率は前年(1.4%)から緩やかとなったものの、4年連続でプラス成長を維持した(図表Ⅰ-35)。
- 出所:
- 「GDP統計(2025年1~3月期2次速報改訂値)」(内閣府)から作成
2024年は、一部の自動車メーカーの生産、出荷停止等の影響により1~3月期の成長率はマイナスとなったが、個人消費や設備投資を中心に内需が堅調に推移した。2025年1~3月期は、設備投資の増加が続き、個人消費はわずかながらもプラスとなった。一方、純輸出(外需)は輸出の伸び悩みに加え、輸入が増加したことから大幅なマイナス寄与となり、2025年1~3月期の実質GDPは4四半期ぶりのマイナス成長となった。
2024年8月の「月例経済報告」(内閣府)では、個人消費や住宅投資の持ち直し、企業収益が堅調なことを背景に、国内の景気判断を「一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」とし、1年3カ月ぶりに上方修正した。しかし2025年に入り、米トランプ新政権が繰り出す関税政策などにより下振れリスクの高まりを懸念、4月の同報告では「米国の通商政策等による不透明感がみられる」という表現を追加、5月、6月の報告でも同表現が続いている。今後の経済情勢の先行きについては回復基調が続くことを期待しつつ、米国の通商政策がもたらす経済への影響に警戒感が高まっている。
鉱工業生産指数の動きを見ると、2024年は前年と同様に一進一退となるも、全体の生産水準は2023年より低く、2024年の鉱工業生産指数は前年比2.6%の低下となった。業種別では、前述の一部の自動車メーカーの生産停止などによる影響を受け、輸送機器は2024年初めに大きく生産水準を落とした(図表Ⅰ-36)。工場稼働再開により生産水準は戻りつつあるものの、2023年後半の水準には届いていない。品目別では、普通乗用車、駆動電動・操縦装置部品、小型乗用車の生産が振るわなかった。生産用機械は増減が入り混じる動きが続いている。生産用機械のうち、半導体製造装置などは輸出向けが増加したことから、年間では前年比プラスとなった一方、建設機械、産業用ロボットでは輸出の伸び悩みが響き、生産は前年比でマイナスとなるなど、品目により異なる動きとなった。一方、電子部品・デバイスは2023年以降、徐々に生産水準が上がりつつある。2024年は記憶素子(メモリ)生産などが回復、電子部品・デバイス全体の生産は前年比プラス、2025年もおおむね増加が続いている。
- 出所:
- 「鉱工業指数(生産・出荷・在庫)」(経済産業省)から作成
2024年の日本の経常収支は1,937億ドルの黒字となり、2年連続で黒字幅が拡大した(図表Ⅰ-37)。経常収支の改善に最も貢献したのは、貿易収支(国際収支ベース)である。貿易収支は3年連続で赤字が続くものの、赤字幅は245億ドルと、前年の赤字幅(490億ドル)からほぼ半減した。また好調な旅行サービスを背景に、サービス収支の赤字幅も2年連続で縮小した。安定して黒字計上が続く第1次所得収支は、黒字幅が2,671億ドルと過去最高額(2,678億ドル、2022年)に迫る規模となった。このうち直接投資収益が1,630億ドル、証券投資収益が949億ドルといずれも前年水準から増加、経常収支の黒字拡大に寄与した。2025年1~4月は、貿易収支では赤字縮小の速度が弱まったものの、サービス収支の赤字縮小などにより、経常収支黒字(654億ドル)は前年同期比で増加を維持している。
- 注:
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- 円建て公表値をジェトロがドル換算。
- Pは速報値。
- 出所:
- 「国際収支統計」(財務省、日本銀行)から作成
特記しない限り、本報告の記述は2025年6月末時点のものである。
目次
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第Ⅰ章
世界と日本の経済・貿易 -
- 第1節 世界経済の動向
- 第2節 世界の貿易
- 第3節 日本の経済・貿易の現状
- 日本経済の現状
- 日本の財貿易
- 日本のサービス貿易
- コラム:日本の農林水産物・食品輸出
-
第Ⅱ章
世界と日本の直接投資 -
第Ⅲ章
世界の通商ルール形成の動向
(2025年7月24日)



