日本からの輸出に関する制度

水産物

品目の定義

本ページで定義する水産物のHSコード

本稿で定義する「水産品(fishery products)」の規則は、基本的には生きたまま上市されない動物に適用されるものとし、輸出用の生きた魚(0301項)については言及しないものとする。また、第16項に分類される魚または甲殻類、軟体動物もしくはその他の水棲無脊椎動物の調製品(加工食品・混合食品)については、本稿の解説対象外であるため、注意してください。

0302項(生鮮のものおよび冷蔵した魚)のうち
0302.35.020:生鮮および冷蔵の太平洋クロマグロ(トゥヌス・オリエンタリス)
0302.89.110:生鮮および冷蔵のブリ(セリオーラ属)

0303.45 020:冷凍したサケ科のうち、太平洋クロマグロ(トゥヌス・オリエンタリス)(03.04項の魚のフィレその他の魚肉を除く)
0303.89.122:冷凍した一部の魚のうち、ぶり(セリオーラ属のもの)(03.04項の魚のフィレその他の魚肉を除く)

0304類魚のフィレその他の魚肉(生鮮のものおよび冷蔵しまたは冷凍したものに限るものとし、細かく切り刻んであるかないかを問わない。)のうち、
0304.87 020 : 冷凍した大西洋クロマグロおよび太平洋クロマグロ(トゥヌス・ティヌスおよびトゥヌス・オリエンタリス)のフィレ
0304.99.991 : 冷凍した、大西洋クロマグロおよび太平洋クロマグロ(トゥヌス・ティヌスおよびトゥヌス・オリエンタリス)のフィレ以外、その他魚肉など(細かく切り刻んであるかないかを問わない。)
0304.89.100 : 冷凍した、ぶり(セリオーラ属のもの)のフィレ(細かく切り刻んであるかないかを問わない。)※1
0304.99.120 : 冷凍した、ぶり(セリオーラ属のもの)のフィレ以外、その他魚肉など(細かく切り刻んであるかないかを問わない。)※2

0307.92 131 : 冷凍のスキャロップ(イタヤガイ科のもの)
0307.99 320 : 燻製したスキャロップ(イタヤガイ科のもの)

※1 このHSコードにはにしん(クルペア属のもの)、ぶり(セリオーラ属のもの)、さば(スコムベル属のもの)、いわし(エトルメウス属、サルディノプス属またはエングラウリス属のもの)、あじ(トラクルス属またはデカプテルス属のもの)およびさんま(コロラビス属のもの)が含まれるが、本稿ではぶり(セリオーラ属のもの)について触れる
※2 このHSコードにはぶり(セリオーラ属のもの)、さば(スコムベル属のもの)、いわし(エトルメウス属、サルディノプス属またはエングラウリス属のもの)、あじ(トラクルス属またはデカプテルス属のもの)およびさんま(コロラビス属のもの)の魚肉が含まれるが、本稿ではぶり(セリオーラ属のもの)について記述する

調査時点での最新情報を記載するよう努めていますが、英国は、EU離脱に伴い、記載事項は常に変更される可能性がある点に留意してください。また、英国では、多くのEU規制が引き継がれています。なお、北アイルランドは、英国の関税領域であるため、(EUに移送される可能性がない場合)日英包括的経済連携協定(日英・EPA)を享受できますが、食品規制に関しては、EU規制が適用されます。本稿では特段の注意がない限り、英国(北アイルランドを除くグレートブリテン)にかかる規制について記載していますので、北アイルランド議定書などに関しては、ジェトロレポート「英国のEU離脱対応マニュアル(食品関係)」およびジェトロビジネス短信を確認してください。

関連リンク

根拠法等
維持規則(EEC)No 2658/87(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
その他参考情報
財務省貿易統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロレポート「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」

英国の輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2022年6月

EU離脱に関する規則
英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU規則が、「EU維持法(retained EU law)」として引き継がれ、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。また、水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に対する条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されます。
ただし、英国独自の国内法も別途設けられており、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。例えば、混合食品に関する規則などに関しては、EUで2021年4月21日から適用されている新規則と異なるため、混合食品の分類や輸入時に添付すべき書類などについて、注意が必要です。
なお、北アイルランドに関しては、英国の関税領域ですが、食品規制に関して、EU規制が適用されます。本稿では特段の注意がない限り、英国(グレートブリテン)にかかる規制について記載し、北アイルランド議定書に関してはジェトロレポート「英国のEU離脱対応マニュアル(食品関係)」または、ジェトロビジネス短信を確認してください。
これまで英国は、東京電力福島第一原子力発電所事故発生時より、県単位で日本産食品について輸入規制を導入していましたが、2022年6月29日に撤廃しました。しかし、北アイルランドについては、英EU間の合意に基づき、EUによる日本産食品に対する放射性物質輸入規制が適用されているため、引き続き留意が必要です。
詳しくは、関連リンクの「農林水産省『撤廃された英国の放射性物質輸入規制の概要」」を参照してください。
残留モニタリング計画
英国にブリを含む水産物(海藻類を除く)を輸出するためには、一次生産(養殖場、生産漁船)から加工・流通(加工船・市場・倉庫を含む)に至るまで英国の求める衛生基準を満たすことが求められています。国レベルでは、対象の動物性食品が「残留モニタリング承認リスト」に掲載され、英国への輸出を許可された「第三国リスト掲載国」となることが要求されており、日本は、(1)EUや英国への輸出認定国判定を受け、対象品目が維持指令2011/163/EUの国別のリストに掲載されており(残留モニタリング承認)、(2)維持実施規則 (EU) 2019/626の「第三国リスト」に掲載されていることから、本稿で対象の水産物は英国への輸出が可能です。
本枠組みの中で、養殖魚介類を使用する食品事業者は、動物用医薬品などの残留モニタリング検査を定期的に実施することとされています。
詳細は農林水産省の「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」の「8.養殖魚介類を使用した水産食品等の残留動物医薬品等の取扱い」および同要綱の別添6「養殖魚介類を用いた対EU輸出水産食品中の残留動物用医薬品等のモニタリング対象物質(EU規則にて定められている物質)」で確認することができます。
衛生に関連する規則
維持規則(EC)853/2004-ANNEX III-SECTION VIII-CHAPTER Vに基づき、次の魚類については、有毒な魚類として上市(市場での販売)が禁止されています。
  • フグ科(Tetraodontidae)
  • マンボウ科(Molidae)
  • ハリセンボン科(Diodontidae)
  • キタマクラ科(Canthigasteridae)
さらに、クロタチカマス科(Gempylidae)、バラムツ(Ruvettus pretiosus)およびアブラソコムツ(Lepidocybium flavobrunneum)に属する生鮮、調製済み、冷凍および加工済みの水産物は、ラッピングまたはパッケージングされた形態でのみ上市することが認められています。
また、ふぐ毒のほか、シガテラ毒など生物毒素を含む水産物の上市は禁止されており、日本からの輸出が禁止されている魚種として、厚生労働省により指定されています(農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」別添5を参照)。
  1. ふぐ毒を含有するおそれのある魚種
    • フグ科 Famille CANTHIGASTERIDAE
    • ハリセンボン科 Famille DIODONTIDAE
    • マンボウ科 Famille MOLIDAE
    • マフグ科 Famille TETRAODONTIDAE
  2. シガテラ魚による健康被害を起こすおそれのある魚種
    • アカマダラハタ Epinephelus fuscoguttatus(Forsskal)
    • アマダレドクハタ Plectropomus oligacanthus(Bleeker)
    • バラハタ Variola louti(Forsskal)
    • バラフエダイ Lutjanus bohar
    • フエドクタルミ Lutjanus gibbus(Forsskal)
    • オニカマス Spyraena barracuda(Walbaum)(Picuda)
  3. ワックスによる健康被害を起こすおそれのある魚種
    • アブラソコムツ Lepidocybium flavobrunneum
    • バラムツ Puvettus
  4. ビタミンAによる健康被害を起こすおそれのある魚種
    • イシナギ Stereolepis ischinagi
生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫の基準
食品事業者は、養殖段階から加工段階まで、クロマグロにかかる寄生虫管理が一定の基準に従って行われていること、英国向け輸出生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫による健康危害リスクがないことを保証する必要があります。詳細は、農林水産省「英国及び欧州連合向け輸出生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫管理に関する基準」で確認してください。
その他、英国向け水産品の輸出には、漁獲証明、関連する市場・施設の衛生認定が必要なため、次項「2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項を必ず確認してください。
※本項以降では、EU規制に加え、英国がEU規制に上乗せで定めている独自規制についても言及していますが、これは、ジェトロで把握できた範囲において言及しているものです。

関連リンク

関係省庁
英国政府 英国動植物衛生庁(APHA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国食品基準庁(FSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
2018年EU(離脱)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2020年EU(離脱協定)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC) 853/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持指令2011/163/EU(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則 (EU)2019/626 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
その他参考情報
英国食品基準庁(FSA)一般食品法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 「英国におけるEU域外からの生きた動物・動物性食品・非動物由来飼料にかかる輸入ガイダンス」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国食品基準庁「二枚貝および水産品の輸入ガイダンス」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省 : 「その他証明書や施設認定の申請『原発関連証明書の発行に関する手続(令和3年10月7日更新)』」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「英国及び欧州連合向け輸出生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫管理に関する基準」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「要綱 『別添6養殖魚介類を用いた対EU輸出水産食品中の残留動物用医薬品等のモニタリング対象物質(EU規則にて定められている物質)』」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「撤廃された英国の放射性物質輸入規制の概要」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(84KB)

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU規則が、「EU維持法(retained EU law)」として引き継がれ、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に対する条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されます。ただし、施設認定および衛生証明書発行手続きなど、一部EUの要求事項と相違がある点に留意してください。

例えば、混合食品に関して、EUで2021年4月21日から適用されている新規則と異なるため、混合食品の分類や輸入時に添付すべき書類などについて、注意が必要です。また、放射性物質規制にかかる規則や様式なども若干の相違があるため、注意が必要です。

なお、北アイルランドに関しては、英国の関税領域ですが、食品規制に関して、EU規制が適用されます。本稿では特段の注意がない限り、英国(グレートブリテン)にかかる規制について記載し、北アイルランド議定書に関してはジェトロレポート「英国のEU離脱対応マニュアル(食品関係)」または、ジェトロビジネス短信を確認してください。

英国に輸入する前に必要な手続き(EORI番号の取得など)に関しては、「輸入手続き」の「1. 輸入許可、商品登録、輸入ライセンス等(登録に必要な書類)」の項に記載していますので確認してください。

水産品に関連する施設の登録(衛生認定)について
英国にブリを含む水産物(海藻類を除く)を輸出するためには、一次生産(養殖場、生産漁船)から加工・流通(加工船・市場・倉庫を含む)に至るまで英国/EUの求める衛生基準を満たすことが求められています。
なお、国レベルでは、次の1、2の要件を満たす必要があります。
  1. 欧州委員会維持規則 (EU) 2017/625 に基づき、「残留物質モニタリング計画」の承認を受け、対象品目が維持指令2011/163/EUの国別のリストに掲載される。
  2. 欧州委員会実施維持規則(EU) 2019/626 ANNEX IとIIの「第三国リスト」に掲載されている
また、事業者レベルでは、次の3、4の条件を満たす必要があり、加工施設の「英国/EU HACCP認定」取得だけでなく、原料を供給する漁船や養殖場、市場も認定されている(原料が認定施設由来である)必要があります。
  1. 輸出元国などにおいて登録(必要に応じて英国政府に通報)された養殖場・漁船・市場などを経由する
  2. 輸出元国の所轄当局に英国/EU規則に基づく衛生およびHACCP管理基準を満たしている旨の認定を受けた加工施設などで加工する ことが必要となります。
日本の残留モニタリング計画承認状況
動物種 承認状況
ウシおよびウシ科動物(Bovine)
羊・山羊(Ovine/caprine) ×
豚(Porcine)
ウマ科動物(Equine) ×
鶏・家きん類(Poultry)
水産養殖物(Aqua-culture)
乳(Milk)
卵(Eggs)
ウサギ(Rabbit) ×
野生の狩猟獣(Wild game) ×
飼育の狩猟獣(Farmed game) ×
ハチミツ(Honey) ×
英国の「第三国リスト」掲載状況
動物種 第三国リスト掲載品目(生きた動物を除く)
生鮮肉/鮮魚 加工品
生鮮の牛肉 (Bovine animals) 〇 *2
豚(Porcine) × 〇 *2
鶏・家きん類(Poultry) 〇*2
水産養殖物(Aqua-culture) ○ ※1
水産養殖物の加工品
乳(Milk)
(生乳・初乳)

(乳製品)
卵(Eggs)
ケーシング
(有蹄類と鶏)
前述のとおり、英国において、日本は水産品に関して、残留物質モニタリング計画の承認を受け、「第三国リスト」に掲載されているため、認定施設で生産・加工された水産品は、輸出元国の所轄当局が発行する衛生証明書を添付して英国に輸出することが可能です。ただし、二枚貝、棘皮動物(ヒトデ、ウニ、ナマコなど)、ホヤ、腹足類(巻貝など)については、冷凍または加工処理を施したものに限り英国への輸出が認められています。また、二枚貝については、英国/EU向け輸出の生産海域として指定され、貝毒などに関する海域のモニタリングを受ける必要があります。調査時点で指定されている生産海域については、農林水産省のウェブサイトを確認してください。 養殖魚介類を原材料とした製品を製造している施設が認定を取得する場合、養殖中に使用されるおそれのある動物用医薬品などの残留モニタリング検査を実施する必要がありますので、必要に応じて、事前に水産庁に相談してください。
養殖場・漁船・市場・加工施設にかかる認定の申請先は、都道府県の水産部局、農林水産省輸出・国際局、厚生労働省地方厚生局、都道府県、保健所設置市または特別区の衛生部局など、施設の形態により変わってきますので、農林水産省のウェブサイトまたは「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」を確認してください。また、以前は水産庁が認定登録を行っていた施設も、2021年から農林水産省による認定に変更となっている場合がありますので留意してください。
認定施設の認定先
分類 施設 認定当局
第一次生産 養殖場 都道府県の水産部局
冷凍船 (Freezer vessels)
生産漁船
加工船 (Factory vessels) 農林水産省
輸出・国際局
市場
(産地市場、消費地市場)
(二枚貝などの)浄化センター・出荷センター 農林水産省輸出・国際局
都道府県の水産部局
厚生労働省地方厚生局
保健所設置市または特別区の衛生部局
水産加工施設
倉庫
農林水産省による認定では、スクリーニング機関が、書類審査および現地調査(スクリーニング)を行ったうえで、農林水産省により確認審査が行われるため、まずはスクリーニング機関である「一般社団法人日本食品認定機構」に申請を依頼をしてください。
一般社団法人日本食品認定機構 : 東京都港区赤坂1-9-13三会堂ビル9階
連絡先 : 03-5544-9810
認定施設の基準の詳細については、「農林水産省によるEU向け輸出水産食品取扱施設の認定申請ガイドライン(令和3年3月)」を参照してください。
認定を受けた加工施設などのリストは、関連リンクの農林水産省のウェブサイト「証明書や認定施設の申請」(欧州)において確認することができます。衛生証明書に関しては、「輸入規制」の「3. 動植物検疫の有無」の項も参照してください。
公的証明書(衛生証明書)について
英国向け水産品の輸出には、政府が発行した英国向けの「公的証明書(衛生証明書)」の添付が必要となります。農林水産省による施設の認定を受けた場合は、農林水産省輸出・国際局に、厚生労働省または都道府県知事(水産部)などにより施設の認定を受けた場合は、当該当局に、衛生証明書の発行手続きを依頼します。手続きの詳細や様式は、「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」で確認することができます。
漁獲証明書について
これらの認定施設の条件を満たしたのち、維持規則(EC)1005/2008に基づき、日本船籍の漁船により漁獲された、同規則ANNEX Iに列記された品目(稚魚養殖魚・淡水魚を含む))以外の水産物を英国に輸出する際は、当該水産物が違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported and Unregulated)漁業で漁獲されたものではない旨を証明するため、漁獲証明書の提出が必要です。
EU/IUU 漁業規則の対象外の品目
HSコード EU/IUU 漁業規則の対象外の品目
03類(HSコードの先頭が03の魚ならびに甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物) (1) 生きた観賞用の魚(HS030110)
(2) 稚魚または幼生を養殖して生産された養殖水産物 (3) 淡水で漁獲された水産物
(4) 魚および水棲無脊椎動物の粉、ミール並びにペレット(食用に適するものに限る。)(HS030510,030619,030629,030799)
(5) カキ、ホタテガイ、イガイ及び巻き貝 (HS030710,030721,030729,030731,030739,030760)
(6) その他の水棲無脊椎動物(甲殻類、一部のイカなどを除くHS030791,030799)
1604(調製または保存処理済みの魚)
1605(調製または保存処理済みの甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物)
(1)稚魚または幼生を養殖して生産された養殖水産物を原料とする調製品
(2)淡水で漁獲された水産物の調製品
(3)カキ、ホタテガイ、イガイ及び巻き貝の調製品 (4)その他の水棲無脊椎動物(甲殻類、軟体動物を除く)の調製品
また、日本船籍以外の漁船で漁獲された水産物を日本で加工したうえで英国に輸出する場合には、当該船籍国が英国から旗国通知を受けている必要があり、かつ当該国の漁獲証明書に加えて加工証明書が必要です。
漁獲証明書、加工証明書については水産庁で発行しています。発行に係る手続きなどの詳細や英国向け漁獲証明書の発給申請に添付して提出する書類については、水産庁のウェブサイト「輸出のための水産物トレーサビリティ導入ガイドライン」で確認することが可能です。
まぐろ類の輸出証明書
本稿で対象品目のクロマグロを含むマグロ類を輸出または再輸出する際には、漁獲証明書、統計証明書、輸出証明書または再輸出証明書の添付が必要となります。証明書の発行対象は、 くろまぐろ、みなみまぐろ、めばちまぐろ及びめかじきの魚肉部分となります。具体的に、クロマグロに関しては、漁獲証明書または再輸出証明書が必要となるため、水産庁漁政部加工流通課または都道府県の部局に証明書の発行申請書類を提出する必要があります。これらの書類は、輸出または再輸出の荷物口ごとに書面、電子メールまたは「NACCS」経由で証明書の発行申請を行います。なお、本稿対象品目ではありませんが、大西洋まぐろ(トゥヌス・ティヌス)の場合は大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の電子申請が必要となります。 その他、申請に必要な書類など、詳細は「まぐろ類の輸出に係る証明書の発行要領」で確認することができます。
原産地証明書
日英包括的経済連携協定(以下「日英・EPA」)の適用を受けるには、原産地証明(日本原産の証明)が必要となります。「日英・EPA」では、自己申告による原産地証明制度が採用されており、輸出者、輸入者のいずれかが、自ら原産地を証明することになります。詳細は税関のウェブサイト「原産地規則ポータル」で確認することができます。
輸出側としては、「日英・EPA」 に定める義務を履行できる者である限り「輸出者自己申告」ができ、財務省関税局・税関「日英・EPA 自己申告及び確認の手引き(2020 年 12 月)」に記載されているとおり、同EPA 第3章 附属書3-Eに規定された原産地に関する申告文を日本語または英語で、インボイスその他の商業上の文書上に記載することとなっています。
申請の際に記載する「輸出者参照番号」とは、日本で登記された企業およその他の組織に国税庁が割り当てた13桁の法人番号にあたります。(輸出者が登録番号を有しない場合には、記入欄空欄で可。)
その他、詳細はジェトロ「日英・EPA解説書:日英・EPAの特恵関税の活用について(2021年3月)」を参照してください。

関連リンク

関係省庁
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 英国動植物衛生庁(APHA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国食品基準庁(FSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
2018年EU(離脱)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2020年EU(離脱協定)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EU)2017/625 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則 (EU)2019/626 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則 (EC)1005/2008 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持指令2011/163/EU(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
その他参考情報
農林水産省 「欧州 : 証明書や施設認定の申請」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 「英国向け生きた動物・動物由来製品の輸出にかかる動物衛生証明書の様式(2021年10月)」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 国境検疫対象の混合食品(非EU第三国産)の動物衛生証明書の様式(2021年12月版)(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)
英国政府 「英国におけるEU域外からの生きた動物・動物性食品・非動物由来飼料にかかる輸入ガイダンス」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会「Illegal fishing」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁「水産物のEU向け輸出について」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁「EUのIUU漁業規則について ( EU's IUU Regulation (1005 / 2008) )」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁「輸出のための水産物トレーサビリティ導入ガイドライン」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「輸出される食品等に関する都道府県による証明書の発行要綱」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(401KB)
農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「農林水産省によるEU向け輸出水産食品取扱施設の認定申請ガイドライン(令和3年3月)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「まぐろ類の輸出に係る証明書の発行要領」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ IUU漁業規則と水産食品の対EU輸出(2014年3月)
一般社団法人日本食品認定機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロレポート「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」
財務省関税局・税関「日英EPA 自己申告及び確認の手引き(2020 年 12 月)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「英国のEU離脱対応マニュアル(食品関係)」
ジェトロ「日英EPA関連情報」

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2021年12月

英国では、EU離脱後も2020年末までは移行期間として現行のEU規制が適用されます。また、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、移行期間終了後も、現行のEU法は、原則的に英国国内法体系に、直接組み込まれます(EU規則は、国内法となり、EU指令に基づく国内法の効力も維持)。そのため、以後、EU法としての記述は、そのまま英国国内法規定として読み替えてください。

維持規則(EU)2017/625および維持実施規則(EU)No 2019/2007のANNEX Iのリストに掲載のとおり、本原稿の対象品目であるHSコード0302類、0303類、0304類、0307.92および0307.99類は英国の国境での動物検疫の対象となります。「輸入規制」の「2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項で説明のとおり、日本での衛生証明書の発行申請は、厚生労働省または都道府県などで施設認定を受けた場合は都道府県などの衛生部局、農林水産省で施設認定を受けた場合は農林水産省 輸出・国際局となります。衛生証明書の発行申請書については、農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」別紙様式で確認することができます。記載不要項目の削除の記載の仕方などについて、「別添4-1魚病に関する証明事項の記載方法について」を参照してください。なお、雛形については、欧州委員会維持実施規則(EU)2019/628のANNEX IIIにおいて確認することができます。

ただし、水産品の加工食品に関しては、規定や様式が異なるため、注意が必要です。例えば、英国では、動物由来加工製品(動物性原材料)と植物性原材料の両方を含む食品(魚粉末やカツオエキスなど)を「混合食品」として、独自の規制を設けています。さらに、水産物のみからなる混合食品であるか、肉製品、乳製品、卵製品を含む混合食品であるか、あるいは、その他の条件により、輸出可否や申請先、必要書類が変わるため、注意が必要です。混合食品に関する詳細は、本ポータルサイト「英国」の「菓子」「調味料」「乳製品」ならびに関連リンクにある農林水産省およびジェトロのウェブサイトを確認してください。

(注)「加工」とは加熱、くん製、保蔵、熟成、乾燥、マリネ、抽出、押出成型、またはそれらの組み合わせのことで、粉末化、製粉、スライス、急速冷凍のみは未加工品となる。

関連リンク

関係省庁
英国 環境・食料・農村地域省(DEFRA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 英国動植物衛生庁(APHA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
2018年EU(離脱)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2020年EU(離脱協定)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2020年 公的管理(動物、飼料、食品、植物衛生など)(修正)(EU離脱)規則(2020 No. 1481)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
0
根拠法等
2020年 公的管理(動物、飼料、食品、植物衛生など)(修正)(EU離脱)(No. 2)規則 (2020 No. 1631)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EU)2017/625 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持実施規則(EU)2019/2007(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則 (EU)2019/628 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
その他参考情報
英国政府「英国国境管理所(BCPs) : 生きた動物・動物製品の輸入」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 「衛生証明書の様式(水産品)」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロレポート「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」
農林水産省「欧州 : 証明書や施設認定の申請(水産食品)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロレポート「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」

英国の食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づきEU離脱移行期間終了時点のEU法は、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。さらに、英国独自の国内法が別途設けられ、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。

英国外から輸入される食品については、維持規則(EC)No 178/2002に基づき英国が求める衛生基準などとの同等性(輸出国と特定の合意がある場合はその合意事項)を満たす必要があります(同規則Article 11)。

英国の食品輸入事業者は、輸入した食品が英国の食品衛生要件を満たしていないと判断した場合、即時に製品を市場から回収する手続きをとり、英国政府の所管当局に通知する義務があります(維持規則(EC)No 178/2002 Article 19)。また、同規則では、食品がヒトの健康や環境に甚大なリスクをもたらす可能性があると判断された場合、英国政府 が当該食品の上市停止などの緊急措置をとることが認められています(同規則Article 53)。例えば、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う日本産食品に対する措置は、同規定に基づくものです。 その他、英国の食品の食品衛生要件に関しては、欧州議会・理事会維持規則 (EC) No 852/2004(一般食品衛生規則)と欧州議会・理事会維持規則 (EC) No 853/2004 (動物由来食品衛生維持規則)で補完されています(「衛生パッケージ」)。 維持規則(EC)No 853/2004は、食品事業者に対して、

  • 生食用または
  • 殺虫には不十分なマリネ、塩漬けおよびその他の処理しか施されていない

魚類または頭足類由来の水産物については、加工施設などにおいて特定の温度で一定の期間冷凍処置を施し、寄生虫の殺虫処理を徹底することを義務づけています。
冷凍処置に際して、食品事業者は、当該水産物のすべての部位について少なくとも、「マイナス20度の温度で24時間以上」または「マイナス35度で15時間以上」冷却する必要があります。
なお、次に該当する水産物に関しては、前述の冷凍処理を実施する必要はありません。

  1. 熱処理を行った、または消費前に熱処理を行うことが意図されている水産物で、これにより寄生虫が殺虫されるもの。吸虫類以外の寄生虫の場合、当該水産物は中心温度60度以上で1分以上加熱されなければならない
  2. 寄生虫を殺虫するのに十分な期間冷凍保存された水産物
  3. 次の条件を満たす、野生で捕獲された水産物
    1. 原産漁場が寄生虫の存在に関して健康上の危険をもたらさないことを示す、有効な疫学データがあること
    2. 所轄官庁がそのことを承認していること
  4. 胚から養殖されたうえで、健康上の危険をもたらす寄生虫を含まない飼料のみを与えられた養殖魚に由来する水産物で、次のいずれかの要件を満たすもの
    1. 寄生虫のいない環境に隔離されて養殖されている
    2. 食品事業者が、当該水産物に寄生虫による健康上のリスクがないことを、所轄官庁によって承認された手続きで検証している

これらの水産物を市場に出す際は、最終消費者に供給される場合を除き、冷凍処理を施した業者が作成した冷凍処理の種類を明記した書類が添付されていなければなりません。 また食品事業者は、前述の(c)(d)に該当し、冷凍処理が施されていない、または消費前にその他の殺虫処理を施す予定がない水産物を市場に出す前には、該当水産物が各要件を満たしていることを確認しなければなりません。

その他、生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫管理に関しては、農林水産省「英国及び欧州連合向け輸出生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫管理に関する基準」を確認してください。

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2020年10月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU規則が、「EU維持法(retained EU law)」として引き継がれ、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。また、水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に適用される条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されます。

維持規則 (EU) 2017/625に基づき、英国向け輸出水産食品(その原材料を含む)のうち養殖魚介類を使用したものについて、農林水産省、厚生労働省、都道府県および食品事業者は、養殖中に使用されるおそれのある動物用医薬品などの残留モニタリング検査を実施することとなっています。
サンプリングは毎年、生産量100トンにつき少なくとも1サンプル以上実施されます。モニタリング検査やサンプリングの詳細については、農林水産省の「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」の「8.養殖魚介類を使用した水産食品等の残留動物医薬品等の取扱い」で確認することができます。さらに、同要綱の別添6にて「養殖魚介類を用いた対EU輸出水産食品中の残留動物用医薬品等のモニタリング対象物質(EU規則にて定められている物質)」を確認することができます。

A タンパク同化作用を持つ物質および欧州域内での未承認物質
(A1)Stilbenes(e.g.diethylstilbestrol, hexestrol, dienestrol)
(A3)Steroids(androgens, estrogens and (pro)gestagens)
(A6)Compounds included in Annex IV to Council Regulation (EEC) No 2377/90
(1) Chloramphenicol
(2) Nitrofurans
(3) Nitroimidazoles
B 動物用医薬品および環境汚染物質
(B1)Antibacterial substances
(B2a)Anthelmintics
(B3a)Organochlorine compounds including PCB
(B3c)Chemical elements
(B3d)Mycotoxins
(B3e)Dyes (in particular malachite green and its major metabolite leuco malachite green)

なお、「輸入規制」の「2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項で説明のとおり、二枚貝など(ホタテを含む)も英国/EU向け輸出の生産海域として指定され、貝毒などに関する海域のモニタリングを受ける必要があり、前述の農林水産省の「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」の「9.ホタテガイ等二枚貝の適合区域の指定等」ならびに同要綱の別添8−1および別添8−2で確認することができます。

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU法は、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。また、水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に適用される条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されます。
ただし、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。

英国では、維持規則(EC)1881/2006で食品カテゴリーごとに含まれる汚染物質の上限値を規定しています。ここでの「汚染物質」とは、意図的に食品に添加されたものではなく、食品の生産(作物管理、畜産、獣医療における作業を含む)、製造、加工、調理、処理、包装、梱包、輸送および保管などのプロセスまたは生育環境に由来して、食品中に存在する物質をいいます(維持規則 (EEC) No315/93 Article 1(1))。これらの最大規定値を超えるものは原材料としても使用できないとされています。(維持規則(EC)1881/2006第3条) 水産品の場合、次のとおり汚染物質の上限値が規定されています。

汚染物質の上限値(一部の水産物)
項目 上限値 対象品目
スズ(無機) 200 mg/kg 缶入りの食品(飲料は除く)
1.5 mg/kg 二枚貝(ホタテを含む)(*1)
0.30 mg/kg 魚肉(*1)
カドミウム 0.050 mg/kg ブリを含む魚肉(*2)
0.10 mg/kg Thunnus属のマグロを含む魚肉(*3)
1.0 mg/kg 二枚貝(ホタテを含む)
水銀 0.50 mg/kg 一部の水産品(ホタテを含む)とブリを含む魚肉(*4)
1.0 mg/Kg マグロを含む一部の魚肉
メラミン 2.5mg/kg 乳児用調製粉乳および乳児用栄養補給調製食品を除くすべての食品
3-クロロプロパン-1,2-ジオール(3-MCPD) 1000 μg/kg 最終消費者向け、または原料として使用される植物油脂、魚油およびほかの海洋生物からの海産動物油
(バージンオイル、乳幼児用向けは別途規定値)
ダイオキシン類の上限値
項目 上限値 対象品目
ダイオキシン類合計〔OMS-PCDD/F-TEQ(ポリ塩化ジベンゾパラジオキシンとポリ塩化ジベンゾフランの毒性等量合計※5)〕 3.5pg/g湿重量 魚肉、水産物とその派生品(*6)
ダイオキシン類、ダイオキシン様PCB類の合計〔OMS-PCDD/F-PCB-TEQ(ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン、ポリ塩化ビフェニルの毒性等量合計※5)〕 6.5pg/g湿重量
PCB28,PCB52,PCB101,PCB138,PCB153,PCB180の合計(ICES-6) 75ng/g湿重量

なお、2021年8月30日から、EUでは、規則(EC)1881/2006を改正する規則 (EU) 2021/1323および (EU) 2021/1317によりカドミウム、鉛の上限値のリストに「塩」や「香辛料」なども追加されていますが、英国には適用されておりません。

その他、英国では、環境残留性と生物蓄積性が高く環境と健康にリスクをもたらすダイオキシン類・ポリ塩化ビフェニル(PCB)・DDTなどの残留性有機汚染物質(POPs)に関して、英国での生産、販売および使用が禁止または厳しく制限されています。2019年6月から、旧規則(EC) 850/2004は維持規則(EU)2019/1021により改正されており、同規則ANNEX1に記載されている物質は英国における上市、使用が禁止されます。

REACH規則含め、詳細は、ジェトロEU 輸入品目規制「特定危険化学品に関する規制」で確認することができます。

さらに、維持規則(EC)852/2004に記載されている食品衛生基準の順守のほか、鮮度基準を確保するための官能試験、ヒスタミンの限界値、総揮発性窒素、寄生虫、ヒトの健康に有害な毒素に関する保健基準が維持規則(EC)853/2004により規定されています。

その他、食品事業者に適用される維持規則(EC)2073/2005(「食品の微生物学的基準に関する委員会規則」)」により英国における食品中の微生物学的判断の基準が規定されており、同規則により、水産物中のヒスタミン濃度の上限値が定められています。

ヒスタミンの安全基準
食品カテゴリー サンプリング計画(※1) 濃度限界(※2)
n c m M
ヒスチジン含有量の多い魚種(※3)で製造する水産製品 9 2 100 mg/kg 200 mg/kg
ヒスチジン含有量の多い魚種で製造する、塩漬けの酵素熟成処理(発酵処理)を行う水産製品(魚醤を除く) 9 2 200 mg/kg 400 mg/kg
魚醤 1 0 400 mg/kg

ヒスチジン含有量の多い魚種由来の食品(特にサバ科、ニシン科、カタクチイワシ科、シイラ科、オキスズキ科、サンマ科など)については留意が必要です。

ヒスチジンが豊富な魚類を原料とする水産品で、酵素による塩蔵処理を施されたもの(前述に属する食品を除く)に関しては(1)のヒスタミン濃度の平均値が200 mg/kg (3)の許容値が400 mg/kgとなります。ただし、水産品を原料に発酵により製造された液体に関しては(1)と(3)が400 mg/kgとなります。

ブリは該当しませんが、一部の水産物にサルモネアやE.Coliの基準値が規定されています。

その他、ブリやマグロは該当しませんが、維持規則(EU)2019/627では全揮発性塩基性窒素(TVB-N)の上限値が定められています。表の魚種の未加工水産物であって、TVB-Nが上限値を超えている場合は、市場に出すことはできません。

TVB-N(全揮発性塩基性窒素)の上限値
上限値 対象魚種
25mg/100g メヌケ類、ユメカサゴ、メバル
30mg/100g カレイ類(オヒョウを除く)
35mg/100g 大西洋サケ、メルルーサ類、タラ類
60mg/100g 食用に供する魚油原材料

事業者は生寄生虫(viable parasite)の発見を目的とする目視検査を実施し、明らかに寄生虫に汚染されている水産物を、ヒトの食用として上市してはならないとしています。

4. 食品添加物

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU法は、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。また、水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に適用される条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されます。 ただし、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。

英国では、着色剤や保存料、酸化防止剤、その他乳化剤・安定剤などの食品添加物と、食品香料および食品酵素を区別し、これらを合わせて「食品改良剤(Food Improvement Agents)」)と総称しています。食品改良剤については、ポジティブリスト形式での規制が課されており、認可を得た食品改良剤のみが使用を認められています。

日本と異なり、英国/EU規制におけるポジティブリストでは、食品添加物ごとに「使用可能な食品カテゴリー」および「濃度限度(定められていない食品添加物もある)」が定められているため、当該食品添加物の使用可否とその許容含有量について確認する必要があります。カテゴリーごとに検索する場合、欧州委員会データベースにおいて「09.1.1未加工の水産品」のカテゴリーで確認することが可能ですが、最終的な根拠法令としては、英国における維持規則(EC)1333/2008 に基づく必要があります。

食品添加物および食品香料のポジティブリストについては、英国政府および欧州委員会のウェブサイトで検索が可能です。食品酵素については、調査時点ではポジティブリストが完成していないため、ポジティブリスト形式での使用規制は適用されていません。

英国における食品改良剤の定義
食品改良剤 根拠法 定義
食品添加物 維持規則(EC) 1333/2008 それ自体は通常は食品として消費されず、栄養価の有無を問わずに食品の典型的な原材料としては通常は使用されない物質で、食品の製造、加工、調理、処理、包装、輸送、保存の段階において技術的な効果(防腐、酸化防止、色の定着など)を意図的に追加することにより、その物質やその副産物が直接的・間接的に食品の構成要素となるか、なることが十分に予想される物質。E番号で表示される。
ただし、次の物質は食品添加物として使用されない場合、本規則の適用外である。
  • 加工助剤(processing aids)
  • 植物の健康に関する共同体ルール(EU加盟当時の植物衛生関連規則のこと)に従って植物や植物製品の保護のために使用される物質
  • 栄養素(nutrients)として食品に添加される物質
  • 理事会維持指令98/83/ECの範囲に該当するヒトの消費を意図した水の処理などで使用される物質
  • 維持規則(EC) No 1334/2008の範囲に該当する香味料
その他、添加物とみなされないものについては同規則第3条を確認すること。
食品香料 維持規則(EC) 1334/2008 それ自体は食品として消費されず、香りや風味を添えるか、もしくは変えるために食品に添加される製品。香料物質、香料調整品、熱処理香料、スモーク香料、香味料前駆体、その他香料およびこれらの複合物からなる。
‘‘flavouring”というそのままの表示、あるいは具体的な香料の名称または香料の説明(description)で表示。天然(Natural)の記載については同規則第条の条件を満たす必要がある。
食品酵素 維持規則(EC) 1332/2008 植物、動物、微生物、またはそれらに由来する製品から得られる製品、微生物の発酵によって得られる製品も含む。
同規則で定められている食品酵素の名称または販売時の説明(description)を考慮して表示

ただし、維持規則(EC) 1333/2008 ANNEX II に記載されていない場合でも、ANNEX IIIに掲載されている添加物や担体(キャリア)は使用条件に従って食品添加物、食物酵素、食品香料、栄養物(ビタミン・ミネラル)に使用することが可能です。
ポジティブリストについては、英国政府および欧州委員会のウェブサイトで検索が可能です。

また、維持規則(EU)2019/649により、ビタミン・ミネラルなどの食品への添加に関する維持規則(EC)1925/2006が改正され、2021年4月1日から、最終消費者向け食品(小売り、レストランなど)のトランス脂肪酸は天然由来の動物性の脂肪酸を除き、脂質100gあたり2gを超えてはならないとされています。また、業務向けでこの数値を超える場合は、トランス脂肪酸の量に関する情報を提供する必要があります。
食品に添加できるビタミン剤およびミネラル成分に関しては、維持規則(EC)1925/2006のANNEX IIに記載されています。

その他、酵素や香料に関してはジェトロレポート「EUにおける食品香料・食品酵素に対する規制動向(2017年3月)」でも確認することができます。

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU法は、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。さらに、英国独自の国内法が別途設けられ、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。

英国では、食品用の容器・包装をはじめ、調理器具や食品製造機械、食品輸送用のコンテナなど、食品と接触することが意図されている、または、通常の使用条件において食品と接触することが合理的に予見されるあらゆる素材・製品を「食品接触素材(FCM:Food Contact Material)」と呼んでいます。維持規則(EC) 1935/2004により、すべての食品接触素材は、健康被害を引き起こしてはならない、食品成分に許容できない変化を引き起こしてはならない、食品の味・香り・食感などを劣化させてはならない旨が定められています。

また、維持規則(EC) 2023/2006において、食品接触素材の製造工程における適正製造規範(Good Manufacturing Practice:GMP)がそれぞれ定められています。

前述の一般原則を規定する規則に加え、特定の食品接触素材について、個別の規則が定められており、定められた条件に準拠していることを示す適合宣言書の添付が求められています。

食品接触素材に関する主な規制
食品接触素材 規則・指令 主な内容
プラスチック 維持規則(EU) 10/2011 ポジティブリスト形式での使用規制がなされており、同規則ANNEX Iのリストに掲載されている物質を原料として製造されたプラスチックのみが、食品接触素材として使用可能となっています。このリストは科学的評価に基づき更新されるため、随時確認する必要があります。
アクティブ・インテリジェント素材
〔鮮度保持などの目的で食品から物質を吸収する素材(吸湿材など)、容器内に物質を放出する素材(防腐剤を放出する鮮度保持材など)、食品の状態を監視する素材(温度変化に反応する素材など)〕
維持規則(EC) 450/2009 食品と誤認されるおそれがある場合には、3mm以上のフォントサイズで‘DO NOT EAT’と表記する必要があります。なお、調査時点では、ポジティブリストは制定されていません。
再生プラスチック 維持規則(EC) 282/2008 同規則に従って認可を受けたリサイクルプロセスから得られた物質を原料として製造された再生プラスチックのみが、食品接触素材として使用可能となっています。
セラミック 維持指令84/500/EEC カドミウムと鉛の検出上限値が規定されています。
再生セルロースフィルム 維持指令2007/42/EC ポジティブリスト形式での使用規制がなされており、同規則ANNEX IIのリストに掲載されている物質を原料として製造された再生セルロースのみが、食品接触素材として使用可能となっています。

さらに、特定の物質に関する規則が定められています。

  • 維持規則(EU) 2018/213:BPA(ビスフェノールA)
  • 維持規則1895/2005/EC:エポキシ樹脂
  • 維持指令93/11/EEC:ゴムからのN-ニトロソアミンおよびN-ニトロソ

また、イングランド向け、ウェールズ向け、スコットランド向け、北アイルランド向けの食品接触材の地域ごとの規則が制定されています。詳細は、関連リンクの「根拠法等」をご参考ください。

その他、木箱やパレットなど木製の梱包に関する規制は本ポータルサイト「英国」の「花き」を確認ください。

関連リンク

関係省庁
英国食品基準庁(FSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
維持規則(EC)No 1935/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC)No 2023/2006(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC)No 1895/2005(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EU)No 10/2011(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC)No 450/2009(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持指令(EC)No 2007/42(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持指令(EEC)No 84/500 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC)282/2008 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EU)2018/213 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持指令93/11/EEEC (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
2012年食品接触素材・物品に関する規則(イングランド)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2012年食品接触素材・物品に関する規則(ウェールズ)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2012年食品接触素材・物品に関する規則(スコットランド)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2012年食品接触素材・物品に関する規則(北アイルランド)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
英国食品基準庁 食品接触材について(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 食品接触材 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品との接触を意図したプラスチック素材と製品に関する規則(EU)No 10/2011に関するEUガイドライン(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(579KB)
農林水産省 輸出先国における容器・包装に関する規制PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(86KB)
ジェトロ 海外向け食品の包装制度調査(EU、TPP、米国、中国、韓国、台湾、インド、タイ、インドネシア、GCC、メルコスール)(2020年3月)

6. ラベル表示

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU法は、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。さらに、ラベル表示についても、英国独自の国内法も別途設けられることが、保険医療法案により示唆されており、今後、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。

英国独自のラベル表示規則

英国政府のガイダンスでは、英国(北アイルランドを除く)内で販売する商品は、2022年9月30日までにラベル表示を変更する必要があることが書かれています。ラベルの変更実施の責任機関は英国(北アイルランドを除く)の自治体にあり、別市場のラベル付け要件に準拠する必要がある場合は、ラベルにほかの情報を含めることは可能です。北アイルランドについては、北アイルランド議定書に基づき北アイルランドで販売する商品のラベル表示はEU規則の順守を継続するとされているものの、英国政府は事業者に新たな規則に対応するための時間が必要だと認識しているとされています。英国政府は北アイルランドの農業・環境・地域省と地域議会と連携して、北アイルランド市場でのラベル表示要件の実施手法について検討を行っています。識別マーク、FBO住所、英国(北アイルランド)原産表示に関する実施手法はラベル表示の変更点に沿いながら、適切でリスクに基づいたものになるとしています。

認定施設由来であることを証明する衛生識別マーク
英国に輸出される水産物には、次のとおり、幅6.5 cm、高さ4.5 cm以上の楕円形に認定施設の施設番号と、当該施設の所在国名(「JP」などISO基準の2文字略号も可能)を記した「識別マーク」(identification mark)が必要です(維持規則(EC)No 853/2004 Article 5およびANNEX II Section I)。識別マークは、原則、個々の商品パッケージに貼付または印字する必要があります。ただし、輸送用の容器に入れられており、さらなる小分け、加工などがされるものについては、当該輸送用容器の外面に識別マークを貼付することも認められます。

図1:EU産の識別マーク


図2:英国産の識別マーク
(一例)


図3:日本産の識別マーク
(一例)

識別マークには次の情報が記載されています。
  1. ISO 国名コード
  2. 県の番号 (EU由来のみ)
  3. 自治体(市町村)の番号(EU由来のみ)
  4. 認可施設の番号
  5. EU加盟国内であるという意味の略語(EU由来のみ)「EC」マーク (フランス語で「CE」各加盟国の言語で表記できる。)
なお、英国はEU加盟国から離脱したため、2021年1月1日以降は「EC」マークがなくなっています。日本も同様にECの記載は不要です。
食品のラベル表示は、維持規則(EU)No 1169/2011で規定されています。ただし、英国の保険医療法案により同規則を修正することが示唆されているため、今後、EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。
調査時点で、英国で流通する食品全般(最終消費者向けおよび調理施設(レストラン、食堂など)向けの輸入食品を含む)には維持規則(EU)No 1169/2011が適用されており、輸入食品にも適用されます。英国で流通し消費者に販売される時点から、輸入者もしくは販売者に表示の義務が課されます。アレルギー物質や栄養素の表示など、日本よりも義務表示の対象が広い項目もあるため、注意が必要です。
水産物を輸出する場合、同規則Article 9およびEU維持指令2011/91/EUに基づき次の項目を表示する義務があります。 なお、消費者を惑わせる表示や医学的効能を宣伝する表示が禁止されているほか、オンライン販売などの手法により遠隔地から販売する事業者にも同様の規定が適用されます。
英国におけるラベル表示に関する規則
項目 補足説明
食品の名称 食品の名称は、次の優先順位で記載する必要があります。
  1. 法的名称:英国の法律、規則などで定められた名称。
  2. 慣習的名称:英国で消費者に食品名称として受け入れられている名称。その名称以外に説明が不要なもの。
  3. 説明的名称:製品の本質が消費者に分かり、混同しやすい他の製品と区別できる食品を形容した説明、および必要に応じてその用途を示す名称。
なお、商標やブランド名を食品の名称として使用することはできません。これらの基準に加えて、水産物については、維持規則(EU)No 1379/2013に従い、当該水産物の商業上の名称および学術名を明示する必要があります。当該水産物の商業上の名称および学術名を明示する必要があります。
原材料リスト 単一原材料で食品の名称と同一である場合は不要です。
ただし添加物などを添加した場合や加工食品の場合、すべての原材料(食品添加物や酵素を含む)を重量順に表示する必要があります。ただし、食品に占める割合が2%未満の原材料については、重量順と異なるかたちで列挙することも可能です。なお、複合原材料についても、名称・総重量を記載したうえで、その後に原材料リストを記載する必要があります。食品添加物および食品酵素は、そのカテゴリー(酸化防止剤、防腐剤、着色料など)ごとに物質名またはE番号を表示する必要があります。ただし、加工助剤や最終製品技術的な機能を持たない担体(キャリア)などについては維持規則(EU)No 1169/2011第20条を参照。
アレルギー物質 食品の名称が、当該物質で明確に記載されている場合は不要ですが、
表示が義務付けられているアレルギー物質は、次のとおりです。
  • グルテンを含む穀物(小麦、大麦、オーツ麦など)および同製品(一部例外あり)
  • 甲殻類および同製品
  • 卵および同製品
  • 魚および同製品(一部例外あり)
  • ピーナッツおよび同製品
  • 大豆および同製品(一部例外あり)
  • 乳(ラクトースを含む)および同製品(一部例外あり)
  • ナッツ類および同製品
  • セロリおよび同製品
  • 辛子および同製品
  • ゴマおよび同製品
  • 濃度が 1キロ/1リットルあたり10mg 超の二酸化硫黄または亜硫酸塩
  • ルピナス(マメ科植物)および同製品
  • 軟体動物および同製品
原材料リストの標記を太字などで強調することにより表記することが可能です。
正味量 重量単位で「kg(キログラム)」または「g(グラム)」で表示します。
文字の大きさは重量に応じ、次のとおり表示する必要があります。
公称重量 文字の高さ
50g以下 2mm以上
50g超200gまで 3mm以上
200g超1,000gまで 4mm以上
1,000g超 6mm以上

また、容量誤差の許容範囲(容器に記載された公称重量と実質重量の誤差)については、維持指令76/211/EEC により、次のとおり規定されています。

公称重量
(g)
許容範囲
(公称容量より少ない場合)
公称重量
に対する%
g
5 ~ 50 9
50 ~ 100 4.5
100 ~ 200 4.5
200 ~ 300 9
300 ~ 500 3
500 ~ 1,000 15
1,000 ~ 10,000 1.5

表示されている正味量が関連するEU維持規制に準拠していることを示すため、eマークを正味量の横に表示することが可能です。

〇g

図:eマーク

賞味期限または消費期限 事前包装されている食品に関して、微生物学の視点からみて傷みやすく、短期間で危険となりうる食品の場合、日本と同様に、品質保持期限/賞味期限(the date of minimum durability)に代えて「消費」期限(the ‘use by’ date)を表示する必要があります。
冷凍未加工水産物の場合は、冷凍日を「Frozen on 日/月/年」(複数回冷凍されている場合には最初の冷凍日)と表示する義務が追加されます(維持規則(EU)No 1169/2011ANNEX III.6)。
特殊な保存条件や使用条件 当該食品が特別な保存条件や使用条件を必要とする場合には、表示する必要があります。
水産物の場合、追加要件として、維持規則(EU)No 1379/2013第35条に記載される、
  1. 生産方法(漁獲/淡水漁獲/養殖)
  2. 漁獲/養殖された海域および漁獲に使用された漁具の分類
    (維持規則(EU)No 1379/2013 ANNEX IIIの漁具コードを用いて表記)
  3. 当該水産物が解凍されたかどうか(ただし、生産過程において凍結が不可避な場合、衛生目的で凍結された場合、くん製・塩蔵・酢漬け・調理・乾燥の前に行われた解凍については対象外)
の表示が必要とされます。
(食品情報について責任を負う)食品事業者の名称または商号、および所在地 食品を当該名称または商号で販売している食品事業者(英国内事業者でない場合は、英国への輸入者)の名称または商号および所在地を表示する必要があります。
原産地 原産国または原産地を表示する必要があります。また、
加工食品の場合、最終製品の原産地と、最終製品に含まれる主原料の原産地が異なる場合には、当該主原料の原産地を記載するか、「(〇○:主原料)は(××:最終製品の原産地)に由来しない」(○○ do/does not originate from ××)と記載する必要があります。例えば、最終製品の「ミートパイ」と主原料の「ミート」の原産地が異なる場合、主原料とは、最終製品の50%以上を占める原材料、または、製品の名称から消費者が通常想起する原材料(「ミートパイ」における「ミート」)を指します。また、最終製品の原産地が表記されていなくても、原産地を想起させる国旗などがパッケージに表示されている場合は、本規制の対象となります(維持実施規則(EU)2018/775)。
使用方法の指示 記載がなければ適切な使用が困難な場合に記載する必要があります。
栄養表示 同一製品の未加工水産物の場合は不要ですが、加工食品の場合、次の項目について、100gまたは100mlあたりの栄養素を表示する必要があります。これに加えて、一食あたりの栄養素を表示することも可能です。栄養表示はスペース上で可能であれば表形式で記載し、難しい場合は列記しなければなりません。
  • エネルギー量(kJ/kcalの両方を記載する必要があります)
  • 脂肪(g)
  • 飽和脂肪酸(g)
  • 炭水化物(g)
  • 糖類(g)(単糖類および二糖類の合計値を指します。)
  • タンパク質(g)
  • 塩分(g)〔(塩分)=(ナトリウム含有量)×2.5で算出することとなっています〕
製造ロット番号
(維持EU指令2011/91/EU)
英国で流通する包装済み食品は、製造ロット番号を表示する必要があります。明確な表示(LOTなど)の場合を除き、「L」の文字に続けてロット番号を表示する必要があります。

また、密閉した包装容器内の空気を除去し、窒素などその他のガスを充填したガス充てん包装がなされた食品については、「packaged in a protective atmosphere」と表示する義務が追加されます(維持規則(EU)No 1169/2011ANNEX III.1)。

切り身、骨付き、スライス、塊、フィレ、または魚全身の外観を有する水産加工品および水産調製品で、添加水が最終製品の重量の5%を超える場合は、食品の名称に添加水の存在の表示を含める必要があります(同規則ANNEX VI Part A)。

なお、水産物のマーケティング標準について定める維持規則(EU)No 1379/2013 Article 35に基づき、HSコード 03項(ただし、0308に該当する水棲無脊椎動物(ナマコ、ウニ、クラゲなど)は対象外)および1212.2(海藻その他の藻類)に該当する水産物を英国で実需者または消費者に販売する際は、維持規則(EU)No 1169/2011に規定される表示義務に項目が追加されます(包装されていない水産物を小売り販売する場合は、ポスターなどの手法により提供もできます)。

追加義務表示項目
  1. 当該水産物の商業上の名称および学名
  2. 生産方法(漁獲/淡水漁獲/養殖)
  3. 漁獲/養殖された海域および漁獲に使用された漁具の分類
    (規則(EU)No 1379/2013 ANNEX IIIの漁具コードを用いて表記)
  4. 当該水産物が解凍されたかどうか(ただし、生産過程において凍結が不可避な場合、衛生目的で凍結された場合、くん製・塩蔵・酢漬け・調理・乾燥の前に行われた解凍については対象外)
  5. (該当する場合には)品質保持期限(the date of minimum durability)
食品のラベルに使用される言語は、英語となり、文字の大きさについては、次のとおり指定されています(維持規則(EU)No 1169/2011 Article 15)。
  • 包装面の最大面積が80 cm2以上の場合、「x」の文字の高さ(図中の6)は1.2mm以上
  • 包装面の最大面積が80 cm2未満の場合、「x」の文字の高さは0.9mm以上
栄養・健康に関する強調表示
維持規則(EC) 1924/2006により、栄養・健康に関する強調表示(例:「DHA は正常な血圧の維持に寄与します」、「脂肪分0%」)に関する規制が定められています。食品ラベル上に記載可能な強調表示はポジティブリスト形式(英国リスト)で定められており、強調表示が可能な栄養素など、記載可能な表現・強調表示を行うために含まれるべき栄養素などの基準が詳細に定められています。強調表示を行う場合には、注意が必要です。

関連リンク

関係省庁
英国 環境・食料・農村地域省(DEFRA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国食品基準庁(FSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国保健省(DHSC)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国 安全・基準局 (OPSS Office for Product Safety and Standards)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持実施規則(EU)2018/775(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
維持指令76/211/EEC (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EU)No 1169/2011(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持指令2011/91/EU(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則 (EC) 1924/2006 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EU)No 1379/2013(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC) 853/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
英国保健省(DHSC)消費者向け食品情報に関するヘルスケア議案(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 食品ラベル : 消費者向け食品情報に関するガイダンス(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 包装済み食品 : 重量と測定の規則に関するガイダンス(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 栄養・健康に関する強調表示のガイダンス(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国食品基準庁「2021年1月1日以降適用される衛生の識別マークに関するガイダンス」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 Food Labelling Information System (FLIS)(食品ラベル規則の検索ツール)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会「種の商業および学術名」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ EUにおける食品ラベル表示に関する規制(2014年3月)
英国政府 2021年1月1日からの飲食物のラベル表示の変更について(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 食品ラベルと包装(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ 英国のEU離脱対応マニュアル(食品関係)(2020年11月)
ジェトロ EU向け食品ラベルの翻訳例(2020年12月)

7. その他

調査時点:2021年12月

プライベートスタンダードについて

プライベートスタンダードとは、国・地域が取得・適合を必須要件として定める規制・規格・認証ではないが、商取引を行うにあたり各事業者などが任意で取得・適合する民間基準です。
水産物関係では、環境・自然保護への取り組みが高まっていることを受けて「海のエコラベル」とも呼ばれる水産物の認証制度が存在します。天然魚を対象とするMSC認証やMEL認証、養殖魚を対象とするASC認証やAEL認証などが存在します。

現地の大手小売りとの商談などでこれらの認証が求められることがあります。
MSC認証(英国の海洋管理協議会(MSC)が所有する、持続可能な漁業で獲られた水産物を認証するラベル)をはじめとする水産物関係の認証の詳細については、関連リンクの「その他参考情報」を参照してください。

英国での輸入手続き

1. 施設登録、商品登録、輸入ライセンス等(登録に必要な書類)

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU法は、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。また、水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に適用される条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されます。
ただし、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。

英国の輸入業者として必要な情報

英国への物品の輸入の際に使用するEORI番号の取得などにあたりVAT番号、納税者固有番号(UTR:Unique Taxpayer Reference)、事業開始日および産業分類(SIC:Standard Industrial Classification)コード、「Government Gateway(英国政府ウェブサイト)」のアカウントなどの情報が必要となります。
その他、詳細はジェトロレポート「移行期間終了後の英国ビジネス関連制度英国の輸入にかかる通関手続き」で確認することができます。

EORI番号について
英国のEU離脱移行期間終了に伴い、英国はEUの制度から独立したEORI番号(Economic Operators Registration & Identification number)制度を導入します。そのため、英国において、英国外の国との輸出入を行う場合、英国によって発行されたGBで始まる12桁のGB EORI番号が必要となります。
GB EORI番号は、英国で輸出入通関を行う(輸入申告の延期を含む)すべての企業に必要です。GB EORI番号の申請手続きの詳細は、英国政府のウェブサイトを参照してください。番号申請には5〜10分、取得には最大で5営業日ほどかかります。EU諸国との貿易をしているVAT登録事業者は、既にEORI番号を登録しているため、該当事業所のEORI番号を確認し、「GB」で始まる番号でない場合は、GB EORI番号の申請をしてください。
英国では、特定の動物製品の輸入に際して、輸入ライセンスの取得を必要としています。水産物はその対象ですが、本ページに記載している一連の英国/EUによる輸入条件の設定により適用を中止しているため、実際には、現時点で輸入ライセンスの取得は必要ありません。
「輸入規制」の「2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項で述べたとおり、維持規則(EC)1005/2008に基づき、日本船籍の漁船により漁獲されたHSコード03類ならびに1604(調製または保存処理済みの魚)、1605(調製または保存処理済みの甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物)に該当する水産物を英国に輸出する際は、当該水産物が違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported and Unregulated)漁業で漁獲されたものではない旨を証明するため、漁獲証明書の提出が必要です。また、日本船籍以外の漁船で漁獲された水産物を、日本で加工したうえで英国に輸出する場合には、当該船籍国の漁獲証明書に加えて加工証明書が必要です。
漁獲証明書、加工証明書については水産庁で発行しています。発行に係る詳細や英国向け漁獲証明書の発給申請に添付して提出する書類については、水産庁のウェブサイトおよび水産庁「輸出のための水産物トレーサビリティ導入ガイドライン」で確認することができます。
その他、「マグロ類の輸出証明書」など、輸出側で必要な書類に関しては、「輸入規制」の「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項で確認してください。
なお、本項目に関して、英国において、EU規制に上乗せで課される独自規制は確認されていません。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU規則が、「EU維持法(retained EU law)」として引き継がれ、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に適用される条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されますが、施設認定および衛生証明書発行手続きなど、一部EUの要求事項と相違がある点に留意してください。

その他、混合食品に関して、EUで2021年4月21日から適用されている新規則と異なるため、混合食品の分類や輸入時に添付すべき書類などについて、注意が必要です。また、放射性物質規制にかかる規則や様式なども若干の相違があります。

日本から英国に水産物を輸入する際には、次の書類が必要になります。

  1. (1) 通関申告書(単一管理文書 (SAD : Single Administrative Document))
    英国外の第三国とのすべての輸出入手続きに必要な共通申請書。様式は委員会維持実施規則(EU) 2016/341 Appendix B1および英国政府のサイトに記載されています。
  2. インボイス(商業送り状)
  3. パッキングリスト(包装明細書: P/L)
  4. 価格申告書(Customs Value Declaration)
    CIF価格が2万ユーロを超える場合、SADとあわせて価格申告書の提出を求められます。様式は維持規則 (EU) 2016/341 ANNEX 8に記載されています。
  5. 船荷証券(Bill of Lading: B/L)/航空運送状(Air Waybill: AWB)
  6. 共通衛生入域文書(Common Health Entry Documents: CHED-P) /衛生証明書および識別マーク
  7. 放射性物質検査証明書または産地証明書(該当する場合)
  8. EUのIUU漁業規制に基づく漁獲証明書
  9. 加工証明書(該当する場合)

なお、水産品を輸入する場合、公的管理の維持規則(EC)2017/625により、貨物の到着1日前までに電子システムIPAFFS経由で国境管理所(BCP:Border Control Post)に通知する必要があります。

また、日英包括的経済連携協定(以下「日英・EPA」)の適用を受けるには、当該輸出品の原産地が日本である旨を証明する原産地証明が必要となります。原産地証明書については、「輸入規制」の「2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項を参照してください。

関連リンク

関係省庁
英国食品基準庁(FSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国 環境・食料・農村地域省(DEFRA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 英国動植物衛生庁(APHA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
2018年EU(離脱)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2020年EU(離脱協定)法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
維持規則(EU)2017/625 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持実施規則(EU)2016/341(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
その他参考情報
英国食品基準庁(FSA)一般食品法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
PDFファイル(9.93 MB)
英国政府 IPAFFS(飼料、食品、動物および製品の輸入システム)のガイダンス(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府「英国国境管理所(BCPs) : 生きた動物・動物製品の輸入」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府「英国向け生きた動物・動物由来製品の輸出にかかる動物衛生証明書の様式(2021年10月)」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国政府 「衛生証明書の様式(水産品)」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ 英国のEU離脱対応マニュアル(食品関係)
水産庁 EUのIUU漁業規則について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ IUU漁業規則と水産食品の対EU輸出(2014年3月)

3. 輸入時の検査

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU規則が、「EU維持法(retained EU law)」として引き継がれ、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。水産品に関しては、英国政府当局より、原則、EU向け輸出水産食品に適用される条件を適用することにより、日本からの水産食品の輸入を認めることが確認されているため、基本的にはEU規則と同様の条件が適用されますが、一部EUの要求事項と相違がある点に留意してください。

その他、混合食品に関して、EUで2021年4月21日から適用されている新規則と異なるため、混合食品の分類や輸入時に添付すべき書類などについて、注意が必要です。

維持規則 (EU) 2017/625および維持実施規則(EU)No 2019/2007のANNEX Iのリストの掲載のとおり、水産物の輸入時には動物検疫が課されます(「輸入規制」の「3. 動植物検疫の有無」の項を参照)。
このため、英国に輸出される水産物は、必ず、国境管理所(BCPs : Border Control Post)が設置されている港または空港を仕向地としなければなりません。品目の種類によって、対応可能な国境管理所が異なるため、指定されたBCPと対象アイテムのリストを英国政府および英国動植物衛生庁(APHA)欧州委員会のウェブサイトで必ず確認してください。

水産物を含む維持実施規則2019/2007 ANNEX のリスト掲載される国境検疫対象の動物由来食品の場合、貨物が到着する24時間前までに電子システムIPAFFS経由で、「共通衛生入域文書(CHED)」に必要な情報を国境検疫所に事前通知し、国境管理所における動物検疫に合格した際に「共通衛生入域書(CHED)」が発行されます。空白や不完全がある場合、関係当局は署名をしないとされています。維持規則(EU)2019/628において様式を確認することができます。

動物検疫の手続きなどについては、主として維持規則 (EU) 2017/625に規定されています。事前通知には、輸出者、荷受人、貨物の責任者名、輸入者、原産地、貨物の出国地、衛生証明書の番号および発行日など、「共通検疫入国証」(Common Veterinary Entry Document)のPart 1で要求される情報を添える必要があります。

動物検疫は、(1)文書検査(衛生証明書などの必要書類の確認、輸入条件への適合状況の確認など)、(2)同一性検査(貨物が提出書類と一致しているかの確認)、(3)現物検査(官能検査、簡単な化学検査、ラボラトリー検査)の3段階により行われます。(1)の文書検査において、衛生証明書は必ず原本でなければならず、コピーやファックスは認められません。また、(3)の現物検査については、過去の違反事例や健康被害リスクなどを踏まえ、検査官が必要と判断した場合に実施されます。動物検疫の結果、輸入条件に適合することが確認されると、検査官から共通検疫入国証が発行され、貨物を国境検疫所から移動させることができます。

これら動物検疫上の検査に加えて、食品添加物規制や残留農薬基準など、食品衛生に関するほかの英国/EU規制についても、適合状況をあわせて検査される場合があります(維持規則(EU)2017/625 第44条)。

いずれの検査についても、要した費用が請求されますので、詳細は利用したBCPに問い合わせてください。

4. 販売許可手続き

調査時点:2021年12月

英国では、2018年EU離脱法(2020年EU(離脱協定)法にて改正)に基づき、EU離脱移行期間終了時点のEU法は、原則的に国内法体系に、直接組み込まれています(移行期間終了時点のEU規則は国内法となり、移行期間終了時点のEU指令に基づく国内法の効力も維持)。さらに、英国独自の国内法も別途設けられており、一部EUの要求事項から変更がある可能性に留意してください。

食品事業者は英国法または英国国内法に組み込まれたEUの衛生法に従い動物性由来の原材料を含む食品を取り扱う場合、第一次産業、家庭用消費を除き、管轄当局により各施設の登録、通知、または承認を受けることが義務付けられている場合があります(「一般食品に関する衛生規則」維持規則(EC)No 852/2004第6条および「動物性食品に関する衛生規則」維持規則(EC)No 853/2004第4条)。

英国において食品事業を開始する際も、その施設を登録しなくてはならず、管轄の地域の自治体に開業の28日前に登録・通知する必要があります。レストラン、小売り、テイクアウト、ケータリングだけでなく、遠隔販売、宅配、一時的なポップアップストアなど、食品を調理、料理、保管、流通、供給、販売などの取り扱いをする事業者は登録が必要です。

また、食肉、生乳、卵や水産物など動物性食品を製造・加工する食品事業者は施設認定が必要となりますが、直接消費者に販売する商店(肉屋や魚屋など)は前述の自治体への登録・通知のみとなります。ただし、例外規定もあるため管轄地域の当局に問い合わせる必要があります。詳細は英国食品基準庁(FSA)のウェブサイトで確認することができます。

これらの衛生に関する要件(「衛生パッケージ」)は、維持規則(EC)No 178/2002、維持規則 (EC)No 852/2004(一般食品衛生規則)、維持規則 (EC)No 853/2004 (動物由来食品衛生規則)そして、維持規則 (EU) 2017/625(新公的管理規則)により補完されます。

関連リンク

関係省庁
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根拠法等
維持規則(EC) 178/2002(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC) 852/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
維持規則(EC) 853/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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※関連リンクに示したEU維持法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Latest available (Revised)」で最新時点のものを確認してください。
その他参考情報
英国食品基準庁(FSA)一般食品法(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
英国食品基準庁「食品事業を始められる方へ」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

5. その他

調査時点:2021年12月

なし