日本からの輸出に関する制度

水産物の輸入規制、輸入手続き

品目の定義

本ページで定義する水産物のHSコード

本稿で定義する「水産品(fishery products)」の規則は、原則的には、生きていない水産動物に適用されるものとし、輸出用の生きている魚(0301項)については触れないものとします。また、第16類に分類される魚、甲殻類、軟体動物もしくはその他の水棲無脊椎動物の調製品(加工食品)、加工済み水産品と植物性原料を加工した「混合食品」については、品目対象外であるため、網羅していません。

本ポータルサイト「EU」の「混合食品」も確認してください。ただし、「水産加工品」と「混合食品」の違いに関しては、本項「輸入規制」の「4.その他:加工済み水産品と混合食品」を確認してください。

0302項(生鮮のものおよび冷蔵した魚)のうち
  • 0302.35.99:生鮮および冷蔵の太平洋クロマグロ(トゥヌス・オリエンタリス)(0304項の魚のフィレその他の魚肉を除く)
  • 0302.89.90:生鮮および冷蔵のブリ(セリオーラ属)(0304項の魚のフィレその他の魚肉を除く)
0303項 冷凍した魚のうち
  • 0303.45 99:冷凍した太平洋クロマグロ(トゥヌス・オリエンタリス)(0304項の魚のフィレその他の魚肉を除く)
  • 0303.89.9092:冷凍したブリ(セリオーラ属のもの)(0304項の魚のフィレその他の魚肉を除く)
0304項 魚のフィレその他の魚肉(生鮮のものおよび冷蔵しまたは冷凍したものに限るものとし、細かく切り刻んであるかないかを問わない)のうち、
  • 0304.87 0090:大西洋クロマグロ(トゥヌス・ティヌスおよびメバチマグロ(トゥヌス・オベシュス)以外のマグロの冷凍したフィレ
  • 0304.89.9090:冷凍したブリ(セリオーラ属のもの)のフィレ(細かく切り刻んであるかないかを問わない。)※1
  • 0304.99.9900:冷凍した大西洋クロマグロ(トゥヌス・ティヌス)とメバチマグロ(トゥヌス・オベシュス)以外のマグロおよびブリ(セリオーラ属のもの)のフィレ以外、その他魚肉など(細かく切り刻んであるかないかを問わない)※2
0307項
  • 0307.22.10:冷凍したスキャロップ(イタヤガイ科のもの)
  • 0307.29.10:燻製したスキャロップ(イタヤガイ科のもの)

※1 このHSコードには、ニシン(クルペア属のもの)、ブリ(セリオーラ属のもの)、アジ(トラクルス属またはデカプテルス属のもの)およびサンマ(コロラビス属のもの)が含まれるが、本稿ではブリ(セリオーラ属のもの)について触れる
※2 このHSコードには、ブリ(セリオーラ属のもの)、イワシ(エトルメウス属、サルディノプス属またはエングラウリス属のもの)、アジ(トラクルス属またはデカプテルス属のもの)およびサンマ(コロラビス属のもの)の魚肉が含まれるが、本稿ではブリ(セリオーラ属のもの)について触れる

調査時点での最新情報を記載していますが、2021年4月以降、混合食品を含め、植物衛生、動物衛生、公的管理の規則が新制度に移行されたため、記載事項は常に変更される可能性がある点に留意してください。2021年4月以降に施行された新制度については、ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」も参照してください。

EUの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2024年6月

放射性物質検査証明書

東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、EUは、日本から輸出される一部の食品・飼料について、日本の政府機関が発行する証明書を求めていましたが、2023年8月3日に関連の輸入規制は撤廃されました。放射性物質検査証明書または原産地証明は不要となりました(実施規則2023/1453)。

化学物質などの管理計画

EU域内にブリを含む水産物(海藻類を除く)を輸出するためには、一次生産(養殖場、生産漁船)から加工・流通(加工船・市場・倉庫を含む)に至るまで、EUの求める衛生基準を満たすことが求められています。国レベルでは、対象の動物性食品の動物種は「薬理的活性物質、農薬、汚染物質の管理計画」(以下「管理計画」)の承認リストに掲載され、輸出する動物性食品はEU域内への輸出を許可された「第三国リスト」に掲載されていることが要求されます。

日本は、本稿の対象品目である養殖の鮮魚について、

  1. EUへの輸出認定国判定を受け、対象品目が実施規則(EU)2021/405のANNEX-Iの国別のリストに掲載されており(管理計画承認)
  2. 実施規則(EU)2021/404または実施規則(EU)2021/405の「第三国リスト」に掲載されていることから、本稿の対象品目はEUへの輸出が可能です。

本枠組みの中で、養殖場では、動物用医薬品など薬理的活性物質、農薬、汚染物質の残留モニタリング検査が定期的に実施されています。
詳細は農林水産省「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」の「8.養殖魚介類を使用した水産食品等の残留動物用医薬品等の取扱い」および同要綱の別添6の「養殖魚介類を用いた対EU輸出水産食品中の残留動物用医薬品等のモニタリング対象物質(EU規則にて定められている物質)」で確認することができます。

欧州域内で使用禁止または未承認の薬理活性物質は次のとおりです(要綱別添6から一部抜粋)。

  1. Substances with hormonal and thyrostatic action and beta agonists the use of which is prohibited under Council Directive 96/22/EC
    (c)Steroids(Relevant only for finfish)
  2. Prohibited substances listed in Table 2 of the Annex to Regulation (EU) No 37/2010
    1. Chloramphenicol
    2. Nitrofurans
    3. Dimetridazole, metronidazole, ronidazole and other nitro-imidazoles
    4. Other substances
  3. Pharmacologically active substances, not listed in Table 1 of the Annex to Regulation (EU) No 37/2010 or substances not authorised for use in feed for food-producing animals in the Union according to Regulation (EU) No 1831/2003 of the European Parliament and of the Council
    1. Dyes
    2. Plant protection products as defined in Regulation (EU) No 1107/2009 of the European Parliament and of the Council and biocides as defined in Regulation (EU) No 528/2012 of the European Parliament and of the Council which may be used in animal husbandry of food-producing animals
    3. Antimicrobial substances
    4. Anti-inflammatory substances,sedatives and any other pharmacologically active substances

欧州域内で承認されている薬理活性物質は次のとおりです(要綱別添6から一部抜粋)。

  1. Pharmacologically active substances listed in Table 1 of the Annex to Regulation (EU) No 37/2010
    1. Antimicrobial substances
    2. Insecticides,fungicides,anthelmintics and other antiparasitic agents
    3. Sedatives
    4. Non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs),corticosteroids and glucocorticoids
    5. Other pharmacologically active substances
  2. Coccidiostats and histomonostats authorised according to Union legislation, for which maximum levels and maximum residue limits are set under Union legislation

なお、二枚貝など(ホタテを含む)もEU向け輸出の生産海域として指定され、貝毒などに関する海域のモニタリングを受ける必要があります。

衛生に関連する規則

欧州議会・理事会規則(EC)853/2004 ANNEX III、SECTION VIIIのCHAPTER Vに基づき、次の魚類については、有毒な魚類として上市(市場での販売)が禁止されています。

  • フグ科(Tetraodontidae)
  • マンボウ科(Molidae)
  • ハリセンボン科(Diodontidae)
  • キタマクラ科(Canthigasteridae)

さらに、クロタチカマス科(Gempylidae)、バラムツ(Ruvettus pretiosus)およびアブラソコムツ(Lepidocybium flavobrunneum)に属する生鮮、調製済み、冷凍および加工済みの水産物は、ラッピングまたはパッケージングされた形態で、下処理・加熱方法および胃腸障害のリスクを明記したうえでのみ上市することが認められています。

また、フグ毒のほか、シガテラ毒など生物毒素を含む水産物の上市は禁止されています。日本からの輸出が禁止されている魚種は次のとおりです。農林水産省「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」の別添5「EUに輸出できない魚種リスト」で確認することができます。

  1. フグ毒を含有するおそれのある魚種
    • フグ科 Famille CANTHIGASTERIDAE
    • ハリセンボン科 Famille DIODONTIDAE
    • マンボウ科 Famille MOLIDAE
    • マフグ科 Famille TETRAODONTIDAE
  2. シガテラ魚による健康被害を起こすおそれのある魚種
    • アカマダラハタ Epinephelus fuscoguttatus(Forsskal)
    • アマダレドクハタ Plectropomus oligacanthus(Bleeker)
    • バラハタ Variola louti(Forsskal)
    • バラフエダイ Lutjanus bohar
    • フエドクタルミ Lutjanus gibbus(Forsskal)
    • オニカマス Spyraena barracuda(Walbaum)(Picuda)
  3. ワックスによる健康被害を起こすおそれのある魚種
    • アブラソコムツ Lepidocybium flavobrunneum
    • バラムツ Puvettus
  4. ビタミンAによる健康被害を起こすおそれのある魚種
    • イシナギ Stereolepis ischinagi

生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫の基準

食品事業者は、養殖段階から加工段階まで、クロマグロにかかる寄生虫管理が一定の基準に従って行われていること、EU向け輸出生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫による健康危害リスクがないことを保証する必要があります。詳細は、農林水産省「英国及び欧州連合向け輸出生食用生鮮養殖クロマグロの寄生虫管理に関する基準」で確認してください。

その他、EU向け水産品の輸出には、漁獲証明、第一次生産に関連する市場・施設および加工施設の衛生認定が必要なため、次項の「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」を必ず確認してください。

※本項以降では、EU規制に加え、主要EU加盟国がEU規制に上乗せで定めている独自規制についても言及していますが、これは、ジェトロで把握できた範囲において言及しているものであり、各国の独自規制を網羅しているものではありません。また、各項目で明示的な言及がない国については、記載できる情報がないということであり、独自規制が存在しないということではありません。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2024年6月

水産品に関連する施設の登録(衛生認定)について

EU域内に本稿の対象品目の水産物(海藻類を除く)を輸出するためには、一次生産(養殖場、生産漁船、冷凍船)から加工・流通(加工船・市場・倉庫を含む水産食品の処理、加工または製造などを行う施設・船)に至るまでEUの求める衛生基準を満たすことが求められています。

国レベルでは、対象の動物性食品の動物種が「管理計画」の承認リストに掲載され、EU域内への輸出を許可された「第三国リスト」として掲載されること、
事業者レベルでは、当該水産品が「EU(HACCP)認定施設(加工船・市場・倉庫を含む水産食品の処理、加工または製造等行う施設・船)」を経由、加工されることで輸出が可能になります。
なお、加工施設のEU(HACCP)認定取得だけでなく、「輸入規制」の「1.輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」の項の説明のとおり、原料を供給する漁船や養殖場、市場も認定施設由来である必要があります。

具体的には、本稿の対象品目である養殖の鮮魚について、

  1. EUへの輸出認定国判定を受け、対象品目が実施規則(EU)2021/405のANNEX Iの国別のリストに掲載される(管理計画承認)
  2. 実施規則(EU)2021/404または、実施規則(EU)2021/405の「第三国リスト」に掲載されている
  3. 日本の当局により認定(欧州委員会のウェブサイトに掲載)された養殖場・漁船・市場などを経由する
  4. 日本の所轄当局にEU規則に基づく衛生およびHACCP管理基準を満たしている旨の認定を受けた水産加工施設や倉庫などで加工する(温度管理を不要とする保管のみの施設は除く)ことが必要となります。
表 1 日本の「管理計画」の承認状況
動物種 「管理計画」の承認状況
ウシおよびウシ科動物(Bovine)
羊・山羊(Ovine/caprine) ×
豚(Porcine) △※1
ウマ科動物(Equine) ×
鶏・家きん類(Poultry)
水産養殖物(Aquaculture)
魚(鮮魚)・二枚貝など(冷凍・加工)
水産養殖物(Aquaculture)
キャビアなどの魚の派生品・甲殻類
×
乳(Milk)
卵(Eggs)
ウサギ(Rabbit) ×
野生の狩猟獣(Wild game) ×
飼育の狩猟獣(Farmed game) ×
ハチミツ(Honey) △※2
ケーシング
表2 日本の第三国リスト掲載品
動物種 第三国リスト掲載品目の一部(網羅版ではないため注意)
生鮮 掲載リスト 加工品 掲載リスト
生鮮の牛肉
(Bovine animals)
(EU)2021/404 ANNEX XIII 〇 ※1 (EU)2021/404 ANNEX XV

(Porcine)
× (EU)2021/404 ANNEX XIII 〇 ※1、2 (EU)2021/404 ANNEX XV
鶏・家きん類
(Poultry)
× ※4 (EU)2021/404 ANNEX XIV 〇 ※1、3 (EU)2021/404 ANNEX XV
水産養殖物
(Aquaculture)

ヒレ付き鮮魚
(キャビア等派生品・甲殻類を除く)
(EU)2021/405 ANNEX IX
キャビア等派生品・甲殻類を除くヒレ付き魚の加工品
(EU)2021/405 ANNEX IX

(冷凍)
冷凍された二枚貝、棘皮動物、尾索動物および腹足綱
(EU)2021/405 ANNEX VIII
加工された二枚貝、棘皮動物、尾索動物および腹足綱
(EU)2021/405 ANNEX VIII

(Milk)

(原料乳・初乳)
(EU)2021/404 ANNEX XVII
(乳・乳製品)
(EU)2021/404 ANNEX XVII
鶏卵
(Eggs)

(クラスA卵)
(EU)2021/405 ANNEX IV (EU)2021/404 ANNEX XIX
牛・豚・羊等、家きん、魚由来のゼラチン・コラーゲン (EU)2021/405 ANNEX XIIまたはXIIIまたはIX
有蹄類と家きん由来のケーシング (EU)2021/404 ANNEX XVI
ハチ × (EU)2021/404 ANNEX VII ※5ハチミツの第三国リストはない。表1の「管理計画」の承認が必要

前述の表のとおり、日本は本稿の対象品目の水産品に関して、管理計画の承認を受け、「第三国リスト」に掲載されているため、認定施設を経由または生産・加工された水産品は、日本の所轄当局が発行する衛生証明書を添付してEU域内に輸出することが可能です。

認定の申請先は、都道府県の水産部局、農林水産省輸出・国際局、厚生労働省地方厚生局、保健所設置市または特別区の衛生部局など、施設の形態により変わってくるため、農林水産省のウェブサイトまたは、農林水産省「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」を確認してください。また、以前は水産庁が認定登録を行っていた施設も2021年から農林水産省に変更になっている場合があるため留意してください。

表3 認定施設の認定先
分類 施設 認定当局
第一次生産 養殖場 都道府県の水産部局
冷凍船(Freezer vessels)
生産漁船
加工船(Factory vessels) 農林水産省輸出・国際局
市場(産地市場、消費地市場)
(二枚貝などの)浄化センター・出荷センター 農林水産省輸出・国際局
都道府県の水産部局
厚生労働省地方厚生局
保健所設置市または特別区の衛生部局
水産加工施設
倉庫

農林水産省による認定では、スクリーニング機関が、書類審査および現地調査(スクリーニング)を行ったうえで、農林水産省により確認審査が行われるため、まずはスクリーニング機関である「一般社団法人日本食品認定機構」に申請依頼をしてください。

一般社団法人日本食品認定機構 :東京都千代田区内幸町1-2-1日土地内幸町ビル3階
連絡先 :03-6550-9013

なお、「一般社団法人大日本水産会」では、認定取得に向けたサポート(講習会、現地指導など)を行っています。

一般社団法人大日本水産会 :東京都千代田区内幸町1-2-1日土地内幸町ビル3階
連絡先 :03-3528-8515

農林水産省による水産加工施設や冷凍倉庫の施設認定の流れの詳細は、農林水産省「農林水産省によるEU向け輸出水産食品取扱施設の認定申請ガイドライン(令和3年3月)」でも確認することができます。

また、認定養殖場とは別に、二枚貝など(ホタテを含む)もEU向け輸出の生産海域として指定され、貝毒などに関する海域のモニタリングを受ける必要があります。ホタテ貝などの指定海域のリストについては農林水産省のウェブサイトで確認することができます。

衛生証明書に関しては、「輸入規制」の「3.動植物検疫の有無」の項も参照してください。

公的証明書(衛生証明書)について

EU向け水産品の輸出には、政府が発行したEU向けの「公的証明書(衛生証明書)」の添付が必要となります。農林水産省による施設の認定を受けた場合や、農林水産省 輸出・国際局に、厚生労働省または都道府県知事(水産部)などによる施設の認定を受けた場合は、当該当局に衛生証明書の発行手続きを依頼します。手続きの詳細や様式は、農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」で確認することができます。

なお、2022年4月から、農林水産省の「一元的な輸出証明書発給システム」によるオンライン申請が可能になりました。

漁獲証明書について

これらの認定施設の条件を満たしたのち、欧州委員会規則(EC)1005/2008に基づき、日本船籍の漁船により漁獲された水産物をEU域内に輸出する際は、当該水産物が違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported and Unregulated)漁業で漁獲されたものではない旨を証明するため、漁獲証明書の提出が必要です。ただし、規則(EC)1005/2008のANNEX Iに列記された条件の水産物(稚魚から育てられた養殖魚、淡水魚など)については提出が不要です。詳細は農林水産省「英国及び欧州連合向け輸出水産製品の漁獲証明書及び加工証明書の取扱要綱」で確認することができます。

本原稿の対象品目の水産品のうち、漁獲証明書対象外の品目は次のとおりです。

表4 本稿対象品目のうちEU/IUU 漁業規則の対象外の品目
EUのCNコード EU/IUU 漁業規則の対象外の品目
03類(魚ならびに甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物) 稚魚または幼生を養殖して生産された養殖水産物、ならびにそれを原料とする水産製品
0307 22 10
0307 29 10
貝付きであるか否か問わず、イタヤガイ属(Pecten)のスキャロップ(イタヤガイ科のChlamys、 Placopectenも含む)ならびにその他のイタヤガイ科(Pectinidae)の貝やスキャロップで冷凍のもの、乾燥、塩漬け、燻製したもの

また、日本船籍以外の漁船で漁獲された水産物を日本で加工したうえでEU域内に輸出する場合、当該船籍国も日本同様、EUに「旗国通知(Flag State Notification)」のうえ認定されている必要があります。さらに、当該国の漁獲証明書に加えて加工証明書も必要です。EUに通知をして受理された「第三国リスト」の情報(2021/C 93/03)は関連情報のリンクから確認することができます。

日本産ホタテ・ブリ(ハマチ)・太平洋サケ(シロザケおよびカラフトマス)は、稚魚および幼生を用いて生産された養殖水産製品であることを日本政府からEU担当局に説明しているため、漁獲証明書の提出義務の対象外です。他国(加工貿易国)を経由した場合などに、漁獲証明書の提出をEU加盟国から求められた場合は、水産庁の発行するレターを提示することで、「稚魚および幼生を用いて生産された養殖水産製品」であることを証明できます。

漁獲証明書・加工証明書については水産庁で発行しています。また、2022年4月から、農林水産省の「一元的な輸出証明書発給システム」によるオンライン申請が可能になりました。発行にかかる詳細やEU向け漁獲証明書の発給申請に添付して提出する書類については、同システムの「輸出先・品目別マニュアル」で確認することができます。

マグロ類の輸出証明書

本稿で対象品目のクロマグロを含むマグロ類を輸出または再輸出する際には、漁獲証明書、統計証明書、輸出証明書または再輸出証明書の添付が必要となります。証明書の発行対象は、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロおよびメカジキの魚肉部分です。

具体的に、クロマグロに関しては、漁獲証明書または再輸出証明書が必要となるため、水産庁漁政部加工流通課または都道府県の部局に各証明書を確認するために必要な書類をそろえたうえで、発行申請書類を提出する必要があります。

太平洋クロマグロ(我が国で養殖または完全養殖したクロマグロを含む)の漁獲証明書の発行に必要な添付書類は次のとおりです。

  1. くろまぐろ漁獲証明書(太平洋クロマグロは漁業者等に対し漁獲証明書の作成義務が課されていないことから、輸出者が作成する)
  2. 輸出の対象となるクロマグロの起源が確認できる書類
    • 漁船による漁獲の場合
    • 養殖(天然の幼稚魚を育成した)の場合
    • 完全養殖(人工種苗を育成した)の場合

    により、添付する書類が異なります。詳細は水産庁ウェブサイト「マグロ類の輸出手続きについて」で確認することができます。

  3. 輸出の対象となるクロマグロの売買関係書類(売人買人双方の名称、売買年月日および数量が確認できる書類とし、漁獲者から輸出者までの間のすべての売買関係書類の写し)
  4. 当該輸出に係るインボイスの写し

これらの書類は、輸出または再輸出の荷物口ごとに書面、電子メールまたは「NACCS」経由で証明書の発行申請を行います。

なお、本稿対象品目ではありませんが、大西洋クロマグロ(トゥヌス・ティヌス)の場合はeBCDの登録申請などが必要となります。

大西洋クロマグロの漁獲証明書の発行に必要な添付書類は次のとおりです。

  1. くろまぐろ漁獲証明書(クロマグロを漁獲した漁船の船長または船主がクロマグロ漁獲証明書を作成する義務があり、それらの者から取得する)
  2. 輸出の対象となるクロマグロの売買関係書類(売人買人双方の名称、売買年月日および数量が確認できる書類とし、漁獲者から輸出者までの間のすべての売買関係書類の写し)
  3. 当該輸出に係るインボイスの写し

適法漁獲等証明書

本稿の対象品目ではありませんが、特定第一種水産動植物などに指定された水産品の輸出には、水産流通適正化法により、適法に採捕されたことなどを示す国が発行する適法漁獲などの証明書の添付が必要です。アワビ・ナマコおよびその加工品は2022年12月1日から、シラスウナギの稚魚は2025年12月1日から、同証明書が必要となります。
詳細は、水産庁のウェブサイト「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」および「水産流通適正化法第10条に基づく適法漁獲証明書の交付等に関する取扱要綱の制定について」を参照してください。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC)1005/2008(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)2017/625(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC)2074/2005(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC)853/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU)2021/404(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU)2021/405(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則 (EU)2022/2293 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会による通知(2021/C 93/03)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
欧州委員会「Illegal fishing」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁「EUのIUU漁業規則に関するQ&Aについて 」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「欧州 | 証明書や施設認定の申請 : 水産食品」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品取扱施設の認定について」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」(令和6年9月2日更新)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(461KB)
農林水産省「英国及び欧州連合向け輸出水産製品の漁獲証明書及び加工証明書の取扱要綱」(令和6年5月28日更新)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(271KB)
農林水産省「輸出証明書のオンライン申請手続 一元的な証明書発給システム」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「システム操作マニュアル(一元的な証明書発給システム)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「農林水産省によるEU向け輸出水産食品取扱施設の認定申請ガイドライン」(令和3年3月)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2391KB)
水産庁「マグロ類の輸出手続きについて」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省「まぐろ類の輸出証明書の取扱要綱」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1259KB)
水産庁「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
水産庁「水産流通適法化法第10条に基づく適法漁獲等証明書の交付等に関する取扱要綱の制定について」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(611KB)
ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査」(2021年3月)
ジェトロ「NACCSの概要:日本」

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2024年6月

欧州委員会規則(EU)2017/625および実施規則(EU)2021/632のANNEXのリストに掲載のとおり、本稿の対象品目であるHSコード0302項、0303項、0304項、0307.22号および0307.29号はEUの国境での動物検疫の対象となっています。

「輸入規制」の「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項で説明のとおり、日本での衛生証明書の発行申請は、厚生労働省または都道府県などで施設認定を受けた場合は都道府県などの衛生部局、農林水産省で施設認定を受けた場合は農林水産省 輸出・国際局となります。衛生証明書の発行申請書については、農林水産省「英国、欧州連合、スイス及びノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」別紙様式で確認することができます。なお、雛形については、欧州委員会実施規則(EU)2020/2235のANNEX I Chapter 3において確認することができます。

ただし、水産品の加工食品に関しては、規定や様式が異なるため、注意が必要です。さらに、EUは、動物由来加工食品(動物性原材料)と植物性原材料の両方を含む食品(魚粉末やカツオエキスなど)を「混合食品」として、独自の規制を設けています。「水産加工品」と「混合食品」の違いに関しては、「輸入規制」の「4.その他:加工済み水産品と混合食品」の項を確認してください。混合食品に関する詳細は、本ポータルサイト「EU」の「混合食品」を確認してください。

(注)「加工」とは加熱、くん製、保蔵、熟成、乾燥、マリネ、抽出、押出成型、またはそれらを組み合わせて当初の(加工前の)材料を実質的に変化させるプロセスのことで、粉末化、製粉、スライス、急速冷凍のみは未加工品となります。

4. その他:加工済み水産品と混合食品

調査時点:2024年6月

水産品、加工済み水産品および混合食品の違い

EUでは、動物性加工済食品(Processed products of animal origin)(※1)と植物性原料(Products of plant origin)の両方を含むヒトの消費向け食品を「混合食品」と定義し、特別な規制を設けています。混合食品については、本ポータルサイト「EU」の「混合食品」のサイトを確認してください。

例えば、刺身(生)とコメからなる「寿司」などは未加工動物性食品(未加工水産品)とされ、魚と塩の発酵によって得られた「魚醤」やツナのオイル漬け(マリネ)などは加工済み動物性食品(加工済み水産品Processed fishery products)と分類されます。

一方で、ツナ缶(加工済み水産品)とトマトソースなど野菜を加工して製造された加工食品やかつお節エキスと醤油を混合したソースなどの調理済み食品などは「混合食品」とされることがあります。
他方、かつお節と植物性添加物を混合しただけの製品は「加工済み水産品」と判断される場合もあることから、事前にEUの国境管理所(BCP:Border Control Post)に問い合わせてください。

※1「未加工食品」とは、加工を受けていない食料品を指し、分割、分離、切断、スライス、骨抜き、刻み、皮剥ぎ、粉末化、切り込み、洗浄、トリミング、殻剥き、製粉、冷却、急速冷凍または解凍された食品も含む、と定義されています(欧州議会・理事会規則(EC)852/2004 第2条の1項)。一方、「加工」とは、当初の(加工前の)材料を実質的に変化させるプロセスのことであり、加熱、くん蒸、保蔵(curing)、熟成、乾燥、マリネ(marinating)、抽出、押出成型、またはそれらの組み合わせも含まれます。

なお、ヒトの消費向けでない魚油(fish oil)を同時に製造する施設などには別規制が課されますが、本稿では言及していません。

水産品の加工施設の認定

本稿の対象品目である「水産物」同様、EU輸出向け加工済み水産品を製造する施設も、認定が必要となります。「輸入規制」の「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項を参照してください。

認定後の衛生証明書の申請

本稿の対象品目である「水産物」同様、EU向けに加工済み水産品を輸出する場合には、衛生証明書が必要になります。詳細は、「輸入規制」の「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」の項で確認してください。また、必要となる「漁獲証明書および加工証明書」に関しても同項を確認してください。

混合食品

加工済み水産品と植物性原材料を混合して製造される「混合食品」の詳細は、本ポータルサイト「EU」の「混合食品」または「乳・乳製品」「鶏卵・卵製品」「菓子」「調味料」で確認してください。EUにおいては2021年4月21日から新しい混合食品に関する制度が適用され、混合食品の分類や添付書類は英国向けとは異なる点に注意が必要です。
また、水産物のみからなる混合食品であるか、肉製品、乳製品、卵製品を含む混合食品であるか、あるいはその他の条件により、輸入可否や提出書類が変わるため、注意が必要です。