日本からの輸出に関する制度

水産物

EUの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2017年3月

東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、福島、岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉県産の水産物(生きた魚、海藻およびホタテを除く)をEU域内に輸入する際は政府作成の放射性物質検査証明書が必要となっています。その他の都道府県産の水産物の場合は産地証明書が必要です。いずれの場合も、輸入国にてサンプル検査が行われる場合があります。

また、規則(EC)853/2004 ANNEXⅢ、SECTIONⅧのCHAPTERⅤに基づき、

  • フグ科
  • マンボウ科
  • ハリセンボン科
  • キタマクラ科

については、有毒な魚類として上市(市場での販売)が禁止されています。

2. 動植物検疫の有無

調査時点:2017年3月

EU域内にブリを含む水産物(海藻類を除く)を輸出するためには、輸出元国が

  1. 指令96/23/ECに基づき、『残留物質モニタリング計画』の承認を受ける
  2. 欧州委員会決定2006/766/ECの『第三国リスト』に掲載されている
  3. 輸出元国等において登録(必要に応じて欧州委員会に通報)された漁船・市場等を経由する
  4. 輸出元国の所轄当局にEU規則に基づく衛生およびHACCP管理基準を満たしている旨の認定を受けた加工施設等で加工する

その上で、EU域内への水産物輸出に際しては、上記に関して輸出元国の所轄当局が証明する衛生証明書を提出の上、動物検疫を受ける必要があります。検査対象となる食品のリストは欧州委員会決定2007/275のANNEXⅠ、モデル衛生証明書については規則(EC)1664/2006のANNEXⅥにおいて確認することが可能です。

日本は第三国リストに掲載されているため、EUが認可した施設で生産・加工された水産物は、衛生証明書を添付してEU域内に輸出することが可能です。(ただし、二枚貝、棘皮動物(ヒトデ、ウニ、ナマコなど)、ホヤ、腹足類(巻貝など)については、冷凍または加工処理を施されたものに限りEU域内への輸出が認められています。)

加工施設等としての認定を受けるための手続きは、厚生労働省管轄の下に都道府県あるいは水産庁が実施しており、認定取得後も定期的な監視・検査が行われます。

認定を受けた加工施設等のリストは厚生労働省および水産庁のホームページにおいて確認することが可能です。

日本においてEU向け衛生認定・登録が必要な施設・船舶

・対EU輸出に向けた施設認定を受けるための手続きは、厚生労働省管轄の下に都道府県あるいは水産庁が行います。・例えば、市場、加工船、陸上加工施設、倉庫は厚生労働省が所管し、生産漁船、養殖場、EU向け冷凍船は農林水産省水産庁が所管しています。・加工船、陸上加工施設、倉庫は、都道府県で認定された後、EUに通報されます。・生産漁船、養殖場、EU向け冷凍船、市場は、都道府県で登録された後、国内でリスト管理され、必要に応じてEUに通報されます(EU向け冷凍船は登録後、EUに通報)。・なおIUU規則に関しては、養殖水産物は対象外です。黒矢印は水産物の動きの例を示していますが、すべての可能性を網羅するものではありません。・図はジェトロレポート「IUU漁業規則と水産食品の対EU輸出」より転載したものです。同レポートもご確認ください。※色は異なりますが、レポートと同様のフロー図です。

(※)図はジェトロ・調査レポート「IUU漁業規則と水産食品の対EU輸出」より転載

3. 残留農薬規制

調査時点:2017年3月

欧州理事会指令96/23第29条に基づき、EU域内に養殖魚介類を輸出することが可能な認定を受けた加工施設等の事業者は、都道府県知事等が定めたモニタリング計画および実施要領に従い、残留動物用医薬品等のモニタリング検査の実施が必要です。
サンプリングは毎年、生産量100トンにつき少なくとも1サンプル以上実施されます。検査物質により養殖場の段階で行われる場合と、出荷段階、加工施設あるいは卸売市場の段階で行われる場合とがあります。
検査対象となる残留動物用医薬品等およびモニタリング検査の詳細については、厚生労働省の「対EU輸出水産食品の取扱要領」の「10.養殖魚介類を使用した水産食品等の残留動物医薬品等の取り扱い」でも確認できます。

4. 重金属および汚染物質(最大残留基準値/禁止)

調査時点:2017年3月

EUでは、欧州委員会規則(EU)1881/2006で食品カテゴリ毎に含まれる汚染物質の残留濃度の上限値を規定しています。水産物の場合、鉛、カドミウム、水銀、ダイオキシン類、PCB類、メラミンの残留濃度の上限値が規定されています。

汚染物質の残留濃度上限値(水産物)
物質名 上限値 対象品目
0.30 mg/kg 魚肉(*1)
カドミウム 0.050 mg/kg 魚肉(*2)
水銀 0.50 mg/kg 魚肉(*3)
メラミン 2.5mg/kg 乳児用調製粉乳および乳児用栄養補給調整食品を除くすべての食品
(*1):
甲殻類の付属肢、腹部の肉(カニおよびカニ類甲殻類(ズワイガニ、ケガニなどの短尾下目とタラバガニ、ヤシガニ等の異尾下目)の場合は付属肢の肉)、二枚貝、頭足類(内臓は除く)を除く。
(*2):
*1に加えサバ、マグロ、ハリボウズハゼ、マルソウダ、アンチョビ、メカジキ、イワシの魚肉を除く。
(*3):
アンコウ、シロオオカミウオ、カツオ、ウナギ、シラスウナギ、ヒウヒダイ、ソコダタ、オヒョウ、キングクリップ、ニシクロカジキ、ヒラメ、ボラ、ミナミアカヒゲ、カワカマス、プアーコッド、マルバラユメザメ、エイ、タイセイヨウアカウオ、バショウカジキ、タチウオ、タイ、サメ全種、マナガツオ、チョウザメ、メカジキ、マグロの魚肉を除く。
ダイオキシン類の残留濃度上限値(水産物)
項目 上限値 対象品目
ダイオキシン類合計(OMS-PCDD/F-TEQ(ポリ塩化ジベンゾパラジオキシンとポリ塩化ジベンゾフランの毒性等量合計)) 3.5pg/g湿重量 魚肉、水産物とその派生品(*4)
ダイオキシン類、ダイオキシン様PCB類の合計(OMS-PCDD/F-PCB-TEQ(ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン、ポリ塩化ジンゾフラン、コプラナーポリ塩化ビフェニルの合計)) 6.5pg/g湿重量
PCB28,PCB52,PCB101,PCB138,PCB153,PCB180の合計(ICES-6) 75ng/g湿重量
(*4):
捕獲野生ウナギ、捕獲野生アブラツノザメ、捕獲淡水魚肉(淡水で捕獲される回遊魚を除く)、魚のレバーおよびその加工派生品、海洋油を除く。

また、規則(EC)2073/2005において、水産物中のヒスタミン濃度の上限値が定められています。濃度基準の測定に際しては、1ロットあたり任意に採取した9サンプルについて検査し、次の基準により判定します。

  • すべてのサンプルの平均値が100mg/kgを超えないこと
  • 2サンプルは100mg/kg以上200mg/kg未満でも可
  • すべてのサンプルが200mg/kgを超えない

ヒスチジン含有量の多い魚種由来の食品(特にサバ科、ニシン科、カタクチイワシ科、シイラ科、オキスズキ科、サンマ科など)については留意が必要です。

ブリは該当しませんが、規則(EC)2074/2005では全揮発性窒素の基準値が定められています。下表魚種の未加工水産物の場合、TVB-N(全揮発性塩基性窒素)またはTMA-N(トリメチルアミン窒素)が限界値を超えている場合は市場にだすことはできません。

TVB-N(全揮発性塩基性窒素)の基準値
基準値 対象魚種
25mg/100g ユメカサゴ、メバル、ケープメバル
30mg/100g カレイ類(オヒョウを除く)
35mg/100g 大西洋サケ、メルルーサ類、タラ類
60mg/100g 食用に供する魚油原材料

5. 食品添加物規制

調査時点:2017年3月

EUでは、食品添加物に関しては規則(EC)No 1333/2008に基づきポジティブリスト形式での規制が課されており、認可を得た食品添加物のみが使用を認められています。
日本と異なり、EU規制におけるポジティブリストでは、食品添加物ごとに『使用可能な食品カテゴリ』および『濃度限度(定められていない食品添加物もある)』が定められているため、食品添加物が当該水産物において使用可能かどうかについても確認の必要があります。

ただし、規則(EC)No 1333/2008 ANNEXⅠ PARTAのTable1に基づき、未加工の水産物に対しては、食品添加物の使用が認められていないので留意が必要です。 ポジティブリストについては、欧州委員会のウェブページで検索が可能です。

6. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)

調査時点:2017年3月

食品用の容器・包装に関しては、欧州議会・理事会規則(EC)No1935/2004において枠組み規制が、さらに欧州委員会規則(EC)No2023/2006において食品と接触する素材および製品の製造工程における適正製造規範(GMP)がそれぞれ定められています。特にプラスチック素材についてはポジティブリスト形式での使用規制がなされており、欧州委員会規則(EC)No 10/2011 ANNEXⅠのリストに掲載されている物質のみが原則として使用可能となっています。このリストは科学的評価に基づき更新されるため随時確認する必要があります。

また、食品の包装容量やサイズに関する規制として指令2007/45/ECにて定められていますが、水産物は当該規制の対象外です。

また、EUレベルで法規制が設けられていない場合にEU加盟国は独自規制を導入することが可能となっています。英国は独自規定を設けていませんが、加盟国の中には規定を設けている国もあり、また対象となる素材や規定の内容は各国で異なるため注意が必要です。例えばフランスでは、食品に接触するすべての包装容器等についてのビスフェノールAの使用が禁止されているため留意が必要です。

7. その他

調査時点:2017年3月

規則(EC)No 853/2004は食品事業者に対し、寄生虫の殺虫処理のため、

  • 生食用
  • 殺虫には不十分なマリネ、塩漬けおよびその他の処理しか施されていない
  • 魚類または頭足類由来の水産物については市場への投入前に特定の温度で一定の期間冷凍処置を施すことを義務づけています。
  • 冷凍処置に際して食品事業者は当該水産物のすべての部位の温度を少なくとも-20℃で24時間以上、または-35℃で15時間以上冷却する必要があります。

なお、次に該当する水産物に関しては、前述の冷凍処理を実施する必要はありません。

  1. 寄生虫を殺虫するための熱処理を行った、または消費前に熱処理を行うことが意図されている水産物。吸虫類以外の寄生虫の場合、当該水産物は中心温度60℃以上で1分以上加熱されなければならない
  2. 生存可能な寄生虫を殺虫するのに十分な期間冷凍保存された水産物
  3. 次の条件を満たす、野生で捕獲された水産物
    1. 原産漁場が寄生虫の存在に関して健康上の危険をもたらさないことを示す、有効な疫学データがあること
    2. 所轄官庁がこれを認可していること
  4. 胚から養殖された上で、健康上の危険をもたらす生存可能な寄生虫を含まない飼料のみを与えられた養殖魚に由来する水産物で、次のいずれかの要件を満たすもの
    1. 寄生虫のいない環境で排他的に養殖されている
    2. 食品事業者が、当該水産物が寄生虫による健康上のリスクがないことを、所轄官庁が承認した手続きを通じて検証している

前述の水産物を市場に出す際は、最終消費者に供給される場合を除き、冷凍処理を施した業者が作成した冷凍処理の種類を明記した書類が添付されていなければなりません。
また食品事業者は、前述のc・dに該当し、冷凍処理が施されていない、または消費前にその他の殺虫処理を施す予定がない水産物を市場に出す前には、該当水産物が各要件を満たしていることを確認しなければなりません。

また、食品事業者は水産物を市場に出す前に目視検査を実施しなければならず、検査の結果明らかに寄生虫に汚染されている水産物をヒトの食用として市場に出すことはできません。

EUの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス、商品の事前登録等(登録に必要な書類)

調査時点:2017年3月

規則(EC)1005/2008に基づき、日本船籍の漁船により漁獲された水産物をEU域内に輸出する際は、当該水産物が違法・無報告・無規制(Illegal, Unreported and Unregulated)漁業で漁獲されたものではない旨を証明するため漁獲証明書の提出が必要となります。
また、日本船籍以外の漁船で漁獲された水産物を日本で加工した上でEU域内に輸出する場合には、当該船籍国の漁獲証明書に加えて加工証明書が必要となります。

ただし、上記漁獲証明書・加工証明書の提出を求められるのは次のHSコードに該当する水産物をEU域内に輸出する場合に限られます。

  • 3類(HSコードの先頭が03の魚並びに甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物)
    • 1604(調製または保存処理済みの魚)
    • 1605(調製または保存処理済みの甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物)

漁獲証明書、加工証明書については水産庁で発行していますが、加工証明書の発行には漁獲船の船籍国が発行した漁獲証明書が必要となります。発行に係る詳細については水産庁ホームページで確認が可能です。
また、養殖魚、淡水魚はIUU漁業規則の対象外とされており、日本産ホタテ・ハマチ・ブリ・太平洋サケは養殖・人口ふ化放流が行われているため、漁獲証明書提出義務の対象外です。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2017年3月

日本から水産物をEU域内に輸入する際には、「EUの輸入規制」の「1.輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」で前述した放射性物質検査証明書または産地証明書、「2.動植物検疫の有無」で前述した衛生証明書に加えて、魚種および漁獲地によって「EUの輸入手続き」の「1. 輸入許可、輸入ライセンス、商品の事前登録等(登録に必要な書類)」において前述した漁獲証明書、加工証明書の提出が必要となります。

3. 動植物検査検疫、残留農薬検査、重金属等検査

調査時点:2017年3月

EUの輸入規制」の「2.動植物検疫の有無」で前述のとおり、水産物の輸入時には動物検疫が課されます。

4. その他

なし

品目の定義

本ページで定義する水産物のHSコード

(いずれにも「ブリ(セリオーラ属のもの)」が含まれる。)

030449 :『その他の魚のフィレ(生鮮のものおよび冷蔵したものに限る。)』のうち『その他のもの』(※2)
030459 :『その他のもの(生鮮のものおよび冷蔵したものに限る。)』(※1)のうち『その他のもの』(※2)
030489 :『その他の魚のフィレ(冷凍したものに限る。)』のうち『その他のもの』(※2)
030499 :『その他のもの(冷凍したものに限る。)』(※1)のうち『その他のもの』(※2)

(※1):
この『その他のもの』とは、「HSコード0304 魚のフィレその他の魚肉(生鮮のものおよび冷蔵しまたは冷凍したものに限るものとし、細かく切り刻んであるかないかを問わない。)」のうち「フィレ」以外のものが該当する。
(※2):
この『その他のもの』には、「まぐろ」「ブリ(セリオーラ属のもの)」のほか、他のいずれの関税分類にも属さない魚種が含まれる。

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