外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2023年06月30日

外国人就業規制

現地人の雇用義務があるため、外国人の雇用は制限されるケースがある(「現地人の雇用義務」の項目参照)。

在留許可

駐在予定者が「訪問者」として一旦メキシコに入国し、その後「一時的居住者」にステータスを変更するという方法は、現在は原則として不可能である。

2012年9月28日、移住法施行規則が公布された。「訪問者」「一時的居住者」「永住者」という3通りの滞在ステータスについて、移住法は次のように規定している。

訪問者

  1. メキシコで報酬を得ない訪問者(報酬を伴う活動許可なし。連続滞在期間は最長で180日)
  2. メキシコで報酬を得る訪問者(報酬を伴う活動許可あり。同180日)
  3. 地域訪問者(指定国境地帯の居住者。報酬を伴う活動許可なし。同3日)
  4. 国境地帯労働訪問者(隣国の国民のみ。報酬を伴う活動許可あり。同1年)
  5. 人道的理由による訪問者(政治的迫害、亡命希望者など。滞在期間は不特定)
  6. 養子縁組のための訪問者(メキシコと協定を締結した特定国国民のみ。滞在期間は手続き期間中)

一時的居住者

  1. 一時的居住者(報酬を伴う活動許可あり。連続滞在期間は最長で4年だが、更新も可能)
  2. 一時的居住者:学生(大学以上の場合は、報酬を伴う活動許可あり。滞在期間は在学期間中)

永住者

  1. 永住者(報酬を伴う活動許可あり。滞在期間は無期限)

これらの滞在ステータスのうち、日本からの出張者は1.や2.の「訪問者」(日本人の場合、滞在期間180日以内の訪問者についてビザは不要)、駐在員については7.の「一時的居住者」のステータスを得る必要がある。

以前は、飛行機の機内などで配られる入国カード(FMM)に、旅行者またはメキシコで報酬を得ない本社派遣の技術支援職などと記入し、メキシコに入国した後、同国内で「資格活動の変更」手続きを行い、メキシコで報酬を得る「信任職」のステータスを取得することができた。
しかし移住法第53条は、「訪問者ステータスでの入国者は、人道的理由またはメキシコ人や定住許可を持つ外国人との家族関係などがない限り滞在ステータスを変更することはできず、許可された滞在期間が終了する前に出国しなければならない」と規定する。また、同法の施行規則141条は、「一時的居住者」ステータスへの変更については、人道的理由による訪問者、あるいはメキシコ人またはメキシコに合法的に居住する外国人との婚姻・養子関係を持つ訪問者、などに限定している。従って、駐在員の場合、「一時的居住者」としての滞在許可を取得してから入国する必要がある。

駐在員が「一時的居住者」としての滞在許可証を取得するまでには、次の手続きを取る必要がある。

  1. 就労ビザ承認手続き(Autorización de Visa por Oferta de Empleo
    在メキシコ現地法人もしくはその代理人を経由して、国家移住庁(INM)に就労ビザを申請する。INMには、ビザを取る外国人の職種や報酬額などに関する情報を提出する必要がある。承認までに3週間~2カ月程度を要する。
  2. 在外メキシコ大使館領事部における面接と署名・拇印登録
    就労ビザの承認が下りた後、在日メキシコ大使館領事部などで本人が面接を受け、署名と拇印の電子登録をした上で手数料を支払い、パスポートに入国ビザを添付してもらう。領事部の混雑状況により、所要日数は異なる。
  3. 滞在許可証発給手続き
    入国ビザを取得した駐在員が実際にメキシコに入国した後に行う手続きが滞在許可証発給手続きであり、INMの管轄事務所に滞在許可証(プラスチック製のIDカード)の発給申請を行う。申請から24時間前後で連絡があり、INMの事務所に出頭して再度署名と拇印の電子登録を行う。首都メキシコ市では、署名と拇印が印字されたIDカードが即時発行される(州によって違いがある)。

現地人の雇用義務

労働法第7条では、原則として外国人1人に対してメキシコ人を少なくとも9人雇用する義務がある(取締役員、執行役員、総支配人などは母数から除かれる)。また、特殊業種に関しては、外国人の就業が禁止されている。

これまでは労働法が現実に適用されることは稀であったが、2012年9月28日の移住法施行規則第166条「雇用主登録」により、「被雇用者とその国籍リスト」の登録が求められることとなり、これを根拠として当局の査察実施も可能となった。

メキシコ国籍の船舶および民間航空機の乗務員は、他国籍を有しないメキシコ人(帰化メキシコ人を除く)に制限されている(連邦労働法第189条および216条)。また、鉄道員についても、メキシコ人に限られる(連邦労働法第246条)。

社会保険

社会保険負担率は、社会保険法(Ley del Seguro Social)、および国家労働者住宅基金法(Ley del Instituto del Fondo Nacional de la Vivienda para los Trabajadores)によって規定されている。賃金水準や職種によって負担率は異なり、料率の計算に用いられる福利厚生を含む基準給与(Salario Base de Cotización)は、勤続年数によって料率が異なる。

自動車部品製造業(創業1年目)で福利厚生費を含む基準給与が測定・更新単位(UMA)の3倍の労働者と仮定すると、社会保険負担率は以下のようになる。

  1. 事業主負担率:26.489%
  2. 従業員負担率:4.138%
  1. 事業主負担率の内訳:
    • 医療保険:8.55%
    • 労災保険:4.653%
    • 年金:6.241%
    • 労働者住宅基金:5.00%
    • 身体障害・生命保険:1.75%
    • 保育関連負担金:1.00%
  2. 従業員(本人)負担率の内訳:
    • 医療保険:0.625%
    • 年金:1.125%
    • 身体障害・生命保険:0.625%

従来、医療保険の計算基準には最低賃金が用いられていたが、2016年1月27日付の官報で、最低賃金を計算単位から切り離し、新たにUMA(Unidad y Medida de Actualización)が設定された。 改正憲法第26条B項では「測定・更新の単位(UMA)はINEGI(メキシコ国立統計地理情報院)が法の規定に従って計算する」としており、2023年のUMAは1月10日付の官報で、月額3,153.70ペソと制定された。

なお、雇用主の年金負担率(現行:6.241%)は、2020年12月16日付官報で公布された社会保険法の改正に基づき、2023年から従業員の給与水準に応じて段階的に引き上げられ、2030年には、最終的に最大で13.875%まで引き上げられる。

その他

特になし。