シェインバウム大統領、労働時間を週48時間から40時間に段階的に削減する改正案を提出
(メキシコ)
メキシコ発
2025年12月09日
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は12月3日、「労働時間の削減に関するメキシコ合衆国憲法および連邦労働法の改正案」を上院に提出した。労働時間の削減については、前政権から議論されてきた(注1)。しかし、議論が紛糾したため審議保留となり、労働社会保障省(STPS)が2025年6~7月に実施した労働時間短縮に関するフォーラムなど、関係者との対話の場が設けられてきた(注2)。12月3日の早朝記者会見
で、マラス・バルチ・ボラニョス労働社会保障相は「6月から11月末までに40以上の作業部会を実施し、労働者、企業経営者、労働組合代表、学者など2,000人以上が参加した」とし、今回の改正案に対して、国民の意見を聴取してきたことを強調した。
今回のメキシコ合衆国憲法および連邦労働法の主な改正ポイントは次のとおり(添付資料参照)。
- 週の労働時間は48時間から40時間に段階的に削減する。労働時間の削減は2027年から開始し、2時間ごとに削減されていく。
- 改正は2026年5月1日から施行し、2026年12月31日までは移行期間とする。
- 週の時間外労働時間は9時間から12時間に段階的に増加するとし、2027年から1時間ずつ増加する。
- 時間外労働は週12時間を上限とし、1日4時間、週に4日を超えてはならない。労働時間と時間外労働の合計は1日に12時間を超えてはならない。時間外労働に対して、時間割賃金(1時間当たり)の2倍を手当として支払わなければならない。
- 時間外労働を超える労働は週に4時間を超えてはならない。これに対し、時間割賃金(1時間当たり)の3倍を手当として支払わなければならない。
- 始業と終業時間を含む労働者ごとの労働時間を電子的な方法で登録すること。また、当局がその情報を求めた場合、当局に提出すること。STPSは、この義務について、適用範囲と例外範囲を決定する一般的規則を交付する。同規則は2027年1月1日から施行する。
- 労働時間の削減を理由に、労働者の給与、手当、福利厚生を減少させてはならない。
本改正案では、労働時間が段階的に削減され、移行期間が設けられた。また、時間外労働に関しても改正する予定で、前回よりも柔軟な改正案となった。さらに、前回の改正案では週休2日を表明していたが、今回は現行の週6日労働が維持されており、議論の中で提出された意見が反映された。労働時間や時間外労働も段階的な移行になったが、企業やセクターによって状況が異なるため、2026年は労働時間削減の対応や決断を迫られる年になるだろう(注3)。
(注1)議論の内容については、2023年10月10日記事、2023年12月21日記事を参照。
(注2)フォーラムに関しては、2025年5月8日記事、2025年6月26日記事、2025年7月9日記事、2025年7月22日記事を参照。
(注3)本改正案は法案段階であり、2025年12月3日時点で可決・官報公示されたものではない。本記事および添付資料はあくまでも参考情報としての情報提供を目的としており、法解釈を示し、保証するものではない。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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