2026年のメキシコにおける最低賃金は13%上昇

(メキシコ)

メキシコ発

2025年12月04日

メキシコの最低賃金委員会(CONASAMI)は12月3日、2026年の最低賃金引き上げ率を北部国境地帯で5%、それ以外の地域で13%に決定したことを発表した(CONASAMIプレスリリース12日3日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注1)。メキシコの最低賃金は、一般最低賃金と特定業種別最低賃金に分かれ、一般最低賃金は北部国境地帯とそれ以外に大別される。最低賃金の上昇率は、憲法が定める理念を満たすための購買力回復に向けた上昇分(Monto Independiente de Recuperación:MIR)と、インフレ考慮分で構成される。CONASAMIによると、北部国境地帯以外の一般最低賃金は現状の日給278.80ペソ(約2,370円、1ペソ=約8.5円)から315.04ペソへ、36.24ペソ(17.01ペソのMIRと、6.5%のインフレ考慮分の合計)引き上げられた。また、北部国境地帯の一般最低賃金は、現状の419.88ペソから440.87ペソとなり、20.99ペソ(5%のインフレ考慮分)の引き上げとなる。前政権下の2021年から北部国境地帯とそれ以外の地域における上昇率は同じだったが、2026年は異なる上昇率となった。

クラウディア・シェインバウム大統領は2025年12月3日の早朝記者会見で、最低賃金の引き上げはCONASAMIにおいて全会一致で合意に達したことを強調した。雇用主側代表のメキシコ経営者連合会(COPARMEX)も12月3日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで最低賃金の引き上げに賛成の意を表した。COPARMEXは、引き上げ後の一般最低賃金は、当初目標だった基礎物資を2人分賄うことができる金額(注2)の100%に達したと述べた。さらに、シェインバウム大統領の公約の1つである、2030年までに基礎物資2.5人分をカバーできるように最低賃金を引き上げる目標をあらためて支持するとし、「引き続き労働市場やインフレ、経済成長を継続的に観察し、毎年の上昇率の妥当性を評価した上で、企業と正規雇用の安定を保証することが重要だ」と強調した。

最低賃金と工員賃金が同一水準に

今回の最低賃金の上昇により、最低賃金と工員賃金との差はほとんど見られなくなった(添付資料表参照)。現地日系企業のうち、特に製造からは「賃上げは最低賃金に連動せざるを得ず、インフレ率よりも高く賃金を引き上げる必要がある」や「東南アジアと比較すると工員賃金が高い。賃金上昇率を売価に転嫁することが難しく、利益率を圧迫している」という声もある。また、「工場の自動化や代替地の模索を考えざるを得ず、雇用が守れなくなる恐れがある」と、雇用やメキシコ経済への影響を懸念する企業も存在した。2027年も賃上げ予想がされる中で、各社は最低賃金上昇への対応を迫られている。

(注1)12月3日時点で、連邦官報での公示はされていない。

(注2)政府が定める、家庭に必要な基本的な食糧や生活必需品のセット(Canasta Basica)。最低賃金のほか、家計調査やインフレの算出などにも利用される。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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