シェインバウム大統領が週40時間労働に向けた協議会の設置を発表
(メキシコ)
メキシコ発
2025年05月08日
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は、労働の日である5月1日の記念式典において、週の労働時間の上限を現行の48時間から40時間に段階的に移行するために企業家、労働者、労働組合の代表者との対話の場を設置すると発表した。労働時間の短縮については、前政権下で2023年から議論されていた(2023年10月10日記事、2023年12月21日記事参照)。しかし、議論が紛糾したため、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)前大統領がその延長を要請し、審議保留となっていた。その後、2024年11月に与党の下院議員が最長週40時間へ短縮する法案を提出していた。
シェインバウム大統領は「労働者を守ることは常に重要であり、最低賃金の引き上げや他の改革と同様に、労働時間の改定も全ての当事者の合意に基づいて実施されるべきだ」と強調した。
メキシコ政府は既に1カ月前から清掃業の労働者との間で、労働条件の改善に向けた協議を行っていることを明かした。また、労働社会保障省(STPS)のマラス・バルチ・ボラニョス大臣は「週の労働時間を段階的に削減し、2030年1月までに週40時間にする」と発言した。さらに、「6月2日から7月7日まで、労働者、雇用主、学者、その他関係者を招集するフォーラムを全国各地で開催し、政策立案に生かす予定だ」と説明した。
経済団体は労働における構造的課題を指摘
メキシコ経営者連合会(COPARMEX)は、5月2日にプレスリリースで、STPSが主催するフォーラムに参加する用意があることを表明した。また、労働時間の改定は責任ある対話を通して、データに基づいた検討を行い、国と企業が直面する厳しい経済状況を考慮して進められるべきだと強調した。特に、各業界の生産能力に応じた段階的かつ柔軟な措置を取り入れ、特定の業界においては例外規定を設けるべきだとした。さらには、メキシコは経済減速や労働人口の54.5%を占める高いインフォーマル就労(注)率、OECD加盟国の中で最も低い労働生産性などの課題に直面しており、これらの構造的な課題に対処せずに労働時間の短縮を推進することは、正規雇用の減少、労働の不安定化、主要産業の弱体化など、負の効果を招く可能性がある、と警告した。
(注)露天商、行商人、犯罪組織など非合法な事業所で働く「インフォーマルセクター」における就労者に加え、事業所としては合法だが、雇用・就労形態が非合法(雇用契約がなく、社会保険登録もされていない)な就労者(税金や社会保険負担金を逃れることを目的とした企業や団体における隠れ労働者、非合法な家内労働者など)を含む。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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