関税制度

最終更新日:2023年10月31日

管轄官庁

シンガポール税関(Singapore Customs)

シンガポール税関(Singapore Customs外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

所在地:55 Newton Rd. #10-01 Revenue House
Singapore 307987
Tel:(65) 6355-2000(コールセンター)
Fax:(65) 6250-8663
E-mail:customs_documentation@customs.gov.sg

  1. 主な業務内容
    関税・その他諸税(GST、輸入管理品目の一部に課される内国物品税等)の徴収、保税貨物の管理・監督、不法行為(密輸、脱税等)の取り締まり、貿易関連手続き(輸出入申告、特恵関税申請の審査)、戦略物資管理など。
  2. 税関はウェブサイトにて、課税対象品目、課税基準、貿易・通関手続き、自由貿易地区(FTZ)や保税施設での保管など、貿易・通関に関する基本的な情報を提供している。
    輸出入ライセンスの取得等が必要な品目については、商品ごとに所管する省庁・政府機関が異なる(「貿易管理制度」の「輸入品目規制」、「輸出品目規制」の項を参照)。

関税率問い合わせ先

シンガポール税関(Singapore Customs)

HSコード4桁については無料。
その他詳細な問い合わせについては一件につき、75シンガポール・ドル(Sドル)。なお、税関は企業に対し、自社でTradeNet外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じた診断によるHSコード特定を奨励している。

    • シンガポール税関(Singapore Customs外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
      所在地:55 Newton Rd. #10-01 Revenue House
      Singapore 307987
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      Fax:(65) 6250-8663
      E-mail:customs_documentation@customs.gov.sg

シンガポール政府は「Form SG外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」というプラットフォームを通じた問い合わせツールに移行中のため、オンラインフォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでの問い合わせが推奨されている。

Tariff Finder外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
基本関税(MFN)、特恵関税、原産地規則、シンガポールの自由貿易協定に適用される固有の規則、および一般・特定の輸入要件などが検索可能な関税検索データベース。利用にあたっては、会社登記時にACRAより発行される個別企業登録番号(UEN)が必要。

関税体系

一般関税はビールなど4品目のみが課税対象。ただし、自由貿易協定(FTA)を締結している国に対しては、特恵関税が適用され、原則税率はゼロとなる。

シンガポールの関税体系は、一般関税と特恵関税(Preferential Tariff)の2種類に分かれる。一般関税は輸入税(Customs Duty)を指しているが、輸入時にはその他に物品税(Excise Duty)を課税される品目がある。シンガポール税関(Singapore Customs)は、輸入税と物品税を合わせて、輸入課税品目と定義している。

一般関税(輸入税)

一般関税(輸入税)の課税対象品目は、HS番号(8ケタベース)で4品目のみで、関税率は次のとおりである。

課税対象品目 HS番号(8ケタベース) 関税率(アルコール分量1リットル当たり)
アルコール度数5.8%以下のスタウト(黒ビール)(stout & porter 2203.00.11 16Sドル
アルコール度数5.8%超のスタウト(黒ビール)(stout & porter 2203.00.19 16Sドル
アルコール度数5.8%以下のビール(beer & ale 2203.00.91 16Sドル
アルコール度数5.8%超のビール(beer & ale 2203.00.99 16Sドル
アルコール度数40%以下の薬用サムス(Samsu) 2208.90.10 8Sドル
アルコール度数40%超の薬用サムス(Samsu) 2208.90.20 8Sドル
アルコール度数40%以下のその他サムス(Samsu) 2208.90.30 8Sドル
アルコール度数40%超のその他サムス(Samsu) 2208.90.40 8Sドル

※アルコール製品は、輸入税以外に物品税を課税される。詳細は「関税以外の諸税」の項を参照。

物品税

物品税は、基本的に内国税であり、輸入品のみに課税される訳ではなく、シンガポール国内製品にも等しく課税されるが、輸入してシンガポール国内で使用・消費されるものについては一様に課税されるため、輸入関税の一種として機能する。物品税を含めたシンガポールの輸入課税品目は、大別して「アルコール製品」、「たばこ類」、「自動車」、「石油製品およびバイオディーゼル混合燃料」の4種類のみとなる。

特恵関税

特恵関税については、後述の「特恵等特別措置」の項を参照。ただし、いずれの場合も、自由貿易協定で定める原産地規則を達成していることが条件となる。また、特恵関税の適用対象となるのは、輸入課税品目である4品目のみ(黒ビール、ビール・エール、薬用サムス、その他サムス)である。

品目分類

HSコードに従い、ASEANが採用している統一関税分類(AHTN)が採用されている。2022年6月より世界税関機構(WCO)の最新HSコードに準拠したAHTN2022年版のシンガポール版であるSingapore Trade Classification, Customs & Excise Duties 2022(STCCED 2022)が採用されている。同分類は8ケタ。

関税の種類

大部分は従価税だが、一部の品目は従量税方式が適用される。

輸入税(Customs Duty)の課税対象品目は4品目に限られており、そのいずれもが従量税方式を採用している。

  • スタウト(黒ビール)(stout & porter、HS番号:2203.00.11および2203.00.19)
  • ビール(beer & ale、HS番号:2203.00.91および2203.00.99)

前述の「関税体系」の項を参照。

物品税(Excise Duty)の大部分(乗用車・二輪車)は従価税だが、一部の品目(アルコール飲料、たばこ・葉巻、石油製品)は従量税(後述の「関税以外の諸税」の項を参照)。

課税対象品目(シンガポール税関):Duties & Dutiable Goods外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

課税基準

従価税方式では、CIF価格+貨物取扱手数料+商品の販売・運送にかかるその他の費用を合計した取引価格に対して課税。従量税方式では、商品ごとに定められた基準に基づき課税。

関税は、次の諸費用を含んだ取引価額合計に対し課税される。

  • CIF価格(cost, insurance and freight
  • 貨物取扱手数料(航空輸送、海上輸送の場合)
  • 商品の販売・運送にかかるその他の手数料(代行料、書類作成費用、梱包費、ロイヤルティー、ライセンス料など)

送り状(インボイス)に記載された取引商品の価格がFOB価格で表示され、運賃や保険料が把握できない場合などは、シンガポール税関が定める一定率の基準(flat rate)に従い、運賃および保険料を算定し、これらを加算した金額をCIF価格とみなす。

  1. インボイスがFOB価格で表示されている際の運賃および保険料
    1. 輸出地が米国、カナダ、アフリカである場合、FOB価格の24.5%
    2. 輸出地が欧州、日本、オーストラリア、ニュージーランドである場合、同19%
    3. 輸出地が中国、台湾、韓国、インド、スリランカ、パキスタンである場合、同15.5%
    4. 輸出地が香港、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアである場合、同9.5%
    5. 輸出地がマレーシア(マレー半島地区)である場合、同5%
  2. インボイスがC&F価格で表示されている際の保険料
    運賃込み価格(C&F:Cost & Freight)の1%。2003年5月以降、輸入において保険料が実際にかかっていない場合、保険料ゼロとして申告することができるようになった。
  3. インボイスに記載の価格がシンガポール・ドル以外の外国通貨で表示されている場合は、申告時点で適用されているシンガポール税関が発表する為替レートが適用され、シンガポール・ドルに変換される。

関連ウェブサイト:

シンガポール税関の公表為替レート:Exchange Rates外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

対日輸入適用税率

一般税率。ただし、「日本・シンガポール新時代経済連携協定(JSEPA)」に基づく原産地規則を満たせば、日本からのすべての輸入品にかかる関税が免除される。

特恵等特別措置

自由貿易協定(FTA)締約国・地域からの輸入、一般特恵関税制度(GSP)、世界的貿易特恵関税制度(GSTP)に対し、特恵関税が適用される。

特恵関税

  1. 自由貿易協定(FTA)、一般特恵関税制度(GSP)、世界的貿易特恵関税制度(GSTP)を利用した協定締約国との輸出入に対して特恵関税が適用される。
  2. シンガポールでは、関税(Customs Duty)の課税対象品目が4品目(前述の「関税体系」の項を参照)に限られるため、特恵関税適用による輸入拡大効果は限定的である。なお、一部品目に対して課税される物品税(Excise Duty)については、特恵関税制度の対象に含まれない。

自由貿易協定(FTA)

二国間FTA

WTO・他協定加盟状況」の項を参照。

一般特恵関税制度(GSP)

GSPにより、先進国を中心とした特恵供与国へのシンガポール原産の特定輸出製品の関税率が、軽減または免除される。現在、シンガポールに対して特恵関税を供与しているのは、ロシアのみである。

世界的貿易特恵関税制度(GSTP)

GSTPは、発展途上国間で特恵的な取引を提供することによる貿易促進のための経済協力である。GSTPは、77カ国の発展途上国(G-77)によって1964年6月に創設された。1988年4月にG-77のうちシンガポールを含む43カ国がGSTP協定に調印。

原産地規則

  1. シンガポールでは、シンガポールを原産地として証明する2種類の原産地証明がある。通常の貿易活動で輸入相手国の要請に基づいてシンガポールの原産地規則に則って発行される通常原産地証明(Ordinary Certificate of Origin)と、特恵関税制度または自由貿易協定に基づいて輸入相手国側で輸入者が特恵関税を享受するために発行される特恵原産地証明(Preferential Certificate of Origin)である。2021年1月11日より、税関が発行したCOおよびPreferential CO の取消し申請は、すべて「FormSG外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を介してオンラインで行うことになった。抹消できるのは、未使用のCO/PCOのみである。
  2. シンガポールの原産地規則の一般的定義は、[1]一次産品の場合、シンガポールで全面的に取得されたもの、すなわち、シンガポールで全面的に成長したもの、あるいは輸入原材料を使用することなく全面的に生産されたもの、[2]製造品の場合、全面的または部分的に輸入された原材料・部品を使用してシンガポールで製造されたもので、簡易または最小限の処理が施されて製品となったものを除く、とされている。製造品の場合には、加工工程基準、付加価値基準、関税番号変更基準のいずれかが原産地の資格を判定する判断基準となっている。
  3. 通常原産地証明を発行するためには、次の4つのいずれかを満たす必要がある。
    1. 完全生産品(Wholly Obtained:WO)
    2. 最終製品の工場出し価格ベースのローカル・コンテンツが25%以上
    3. HSコード変換(Change in Tariff Classification:CTC)ルールにおける、6桁レベルの変更
    4. 化学反応工程を経ていること(ただし、HSコード27から40の間に限る)
  4. シンガポール税関は、通常原産地証明の発行機関として5つの機関に発行権限を付与している。これら機関はシンガポールで製造・加工された製品に対する証明書だけでなく、第三国で製造・加工され、シンガポールから再輸出される製品についての証明書も発行することができる。ただし、米国向けシンガポール原産繊維・同製品の証明書を発行することはできない。
    1. シンガポール華人商工会議所(Singapore Chinese Chamber of Commerce and Industry
    2. シンガポール・インド商工会議所(Singapore Indian Chamber of Commerce and Industry
    3. シンガポール国際商工会議所(Singapore International Chamber of Commerce
    4. シンガポール・マレー商工会議所(Singapore Malay Chamber of Commerce and Industry
    5. シンガポール製造業者連盟(Singapore Manufacturing Federation
  5. シンガポール税関は通常原産地証明を発行するとともに、唯一特恵原産地証明の発行機関でもある。シンガポール税関に特恵原産地証明、および原産地証明を申請する際の手続きは次のとおりである。
    1. 工場登録

      会社概要、生産品の概要、希望する原産地証明の種類(自由貿易協定、一般特恵関税制度など)、UEN(企業登録)番号などを記載した工場登録申請書をシンガポール税関にオンラインで申請する。工場登録申請書提出時には、申請書のセクションEに記載されたすべての添付書類を提出する必要がある。添付書類の提出がない場合、申請が受理されない場合がある。

      〔申請先〕シンガポール税関
      Singapore Customs
      55 Newton Road #07-01 Revenue House
      Singapore 307987
      工場登録申請書ダウンロード:MANUFACTURER’S APPLICATION FORM外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(203KB)
      オンライン申請:Update to Manufacturer Registration Details外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
      E-mail:customs_roo@customs.gov.sg

      シンガポール税関の係官は工場を検査し、製品を製造する機械・労力と適正な計算・操業記録が保持されているかを審査する。製造者登録は、会社のUENに基づいて認識される。登録の有効期間は、登録が完了した日から2年だが、継続するための更新の通知は、期限切れの1カ月前に登録された会社担当者へ送られる。担当者は通知に記載された指示に従う必要がある。

    2. 製造コスト試算表の提出

      工場登録を終えると、製造者は製品が原産地規則に必要な要件を満たしているか判定するため製品の製造コスト試算表をシンガポール税関に提出する。試算表は、税関の定めたテンプレートを使用しなければならない。本テンプレートはシンガポール税関のウェブサイトより取得することができる。

      シンガポール税関:テンプレートおよびサービス一覧 "Manufacturing Cost Statement Template外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます" (ダウンロード)

    3. TradeNetによる原産地証明申請

      シンガポール税関による製造コスト試算表の査定を終えると、試算表の有効期間として1年が付与される。製造者は査定された製品を適用する特恵関税制度または自由貿易協定に基づいて輸出するため、TradeNetを通じて原産地証明を申請することができる。

    4. 原産地証明の入手
      原産地証明の承認日から1カ月以内に回収する必要がある。承認された原産地証明は、Crimson Logic Service BureauまたはSingapore Aircargo Agents Associationより回収する。2016年4月以降、輸出者は原産地証明の回収を第三者機関に依頼する場合、承認書の発行が必要となる。または、輸出者から包括的な任命書が提供されている場合は、任命された第三者は本任命書を承認書と一緒に提供しなければならない。
  6. 日本原産の商品をシンガポールに一時蔵置し、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定の締約国であるマレーシア、タイ、ベトナムなどに分割して輸出するような場合には、シンガポール税関に申請し、連続する特恵原産地証明書(Back to Back preferential Certificate of Origin)を取得することができる。この連続する特恵原産地証明書とは、経由する締約国において発給されるもので、原産性を維持したまま分割して他の締約国に輸出する場合に用いられる。シンガポールの場合、保税状態でも輸入通関後でも発給されるが、オリジナル原産地証明書のコピーなどが必要になる。
  7. 輸出者が製造業者でない場合、製造者から(シンガポール税関により発行された)「原価計算書検証書」(Verification of Cost Statement Letter)を受け取っている限り、通常または特恵原産地証明書を申請することができる。輸出者はTradeNetで申告する際に製造業者名、担当者、連絡先を輸出者備考欄に記載しなければならない。

関連法

税関法、輸出入規制法、自由貿易地区法

1960年税関法(Customs Act 1960

輸出入および同関連手続きに関する規定を定めた法律。関税の評価、賦課方式などについても規定している。税関法は2008年1月に一部改正され、従来は税関が個別に免許を付与していた製造業、課税品倉庫業といった複数事業を包括する「合同免許」制度を導入、適切なリスク管理を行っている企業に税関が発行できるようになり、企業の負担コストが軽減されるようになった。また、税関局長官に酒類など課税品目の認可要件を放棄する権限を新たに付与した。2020年に条文番号を編集する改正が行われた。

1995年輸出入規制法(Regulation of Imports and Exports Act 1995

シンガポール税関が所管する輸出入禁止措置などの決定の根拠となる法律。また、輸出入、貨物積み替えなどを行う貿易業者、通関業者等が各種許可、証明書、その他書類の取得を申請するために、シンガポール税関への登録を義務付ける規定も含まれる。同法は2003年11月に改正され、自由貿易協定(FTA)で合意された税優遇措置を悪用し、シンガポール以外の製品を同国産と偽って表示した業者を取り締まるための規定を導入した。2020年に条文番号を編集する改正が行われた。

1966年自由貿易地区法(Free Trade Zones Act 1966

シンガポール国内で自由貿易地区(FTZ)を指定する権限の付与、指定されたFTZ内で操業する企業に対して認可された運営業務と税制などを規定。

関税以外の諸税

物品税(アルコール製品、たばこ・葉巻、ガソリン、乗用車・二輪車など合計597品目)、財・サービス税(GST)

物品税(Excise Duty

  1. アルコール製品(調製品を含む)、たばこ・葉巻、石油製品(ガソリン)、乗用車・二輪車など、合計597品目(HS番号8ケタ)については、物品税の課税対象となっている。課税基準は、従価税方式または従量税方式となる。
  2. 課税対象品目および課税基準
    1. アルコール製品(アルコール調製品、工業用原料を含む)(62品目)

      従量税方式。製品の種類により、アルコール分量1リットル当たりの税額が異なる。(注)
      主な商品でみた課税基準は次のとおり。

      1. ビール、スタウト、リンゴ酒:アルコール分量1リットル当たり60Sドル(ビール・スタウトの輸入品には一般関税としてアルコール分量1リットル当たり16Sドルが別途課税される)。
      2. ワイン、日本酒、ウイスキー、ブランデー:アルコール分量1リットル当たり88Sドル。
      3. アルコール飲料製造用原料として使用されるアルコール調製品(液状のもの):アルコール分量1リットル当たり88Sドル。
      4. アルコール飲料製造用原料として使用されるアルコール調製品(液状以外のもの):製品量1キログラム当たり113Sドル。

      (注)【計算例】「アルコール15度」の「日本酒」を「100リットル」輸入する場合、1リットル当たり88Sドル。
      88×100×15% = 1,320Sドル

    2. たばこ・葉巻(34品目)

      従量税方式。種類により、1キログラム当たり378Sドル、446Sドル、491Sドルの3段階で課税される。ただし、紙巻たばこ(Cigarette)は1本単位で課税される。1グラム以下の紙巻たばこの場合、1本当たり0.491Sドル、これを超える場合、1グラム当たり0.491Sドルが追加される。

    3. 石油製品(ガソリン)(19品目)
      従量税方式。
      1. 無鉛ガソリン:1デカリットル(10リットル)当たり3.7~7.9Sドル。
      2. 有鉛ガソリン:1デカリットル(10リットル)当たり6.3~7.1Sドル。
      3. 自動車燃料用天然ガス:1キログラム当たり0.20Sドル。
    4. 乗用車・二輪車(482品目)
      従価税方式。
      1. 乗用車:20%
      2. 二輪車:12%

      乗用車・二輪車の物品税は車両製造国の自動車販売価格に輸送コストなどを加えた公開市場価格(Open Market Value:OMV)をもとに算出される。車両の登録時点で、物品税、GSTのほか、乗用車にはOMVの価格によって100~320%、二輪車にはOMVの15~100%に税額が設定されている追加車両登録税(ARF)が別途徴収される。なお、葬儀屋による霊柩車の輸入は2021年9月3日以降、一定の条件に従い、20%の物品税が免除される。

財・サービス税(Goods & Services Tax:GST

1994年より一般消費税であるGSTが導入されている。2023年1月1日以降、税率は8%(ただし、2022年予算案において、2024年に9%へ増税することが公表されている)。

あらゆる商品は輸入された時点で、原則としてシンガポール税関によりGSTが徴収される。一般関税または物品税の課税対象品目を輸入する場合も、GSTはこれら税金とともに徴収される。ただし、輸出品と国外向けのサービスについては、GSTは徴収されない。また、国内で調達した商品を輸出するGST登録事業者は、国内で支払ったGSTを還付請求することができる。
2018年の税制改正により、2020年1月以降はサービス輸入に対してGSTが課税されることとなり、特にシンガポール顧客向けにデジタルサービスを行う外国法人は影響を受けることとなった。

2021年予算案で発表されたように、2023年1月1日からは、航空便や郵便でシンガポールに輸入され、シンガポールの消費者がGST登録業者から購入する低額商品(400Sドル以下の商品)にもGSTが適用される。現在、シンガポール国内で調達された低額商品にはGSTが適用されているが、海外から調達して航空便や郵便で輸入された同じ商品にはGSTが適用されていない。この変更は、シンガポール国内で調達されたもの、もしくは海外から調達されたものかにかかわらず、シンガポール国内で消費されるすべての商品に対し、GSTの扱いを公平にすることを目的としている。

これに加えて、2023年1月1日以降、GSTに登録された海外のサービスプロバイダーから購入した非デジタルサービスの輸入にもGSTが適用される。現在GSTの対象となっているデジタルサービスは引き続き課税対象となる。つまり、デジタル・非デジタルを問わず、遠隔地で提供・受領できる輸入サービス(「リモート・サービス」)の提供はすべてGSTの対象となる。

シンガポール税関では、シンガポールを域内物流拠点として活用する多国籍企業や物流事業者を促進する目的で、GST徴収に一時的猶予または免除を適用する各種ライセンス制度を設けている。詳しくは後述「その他」の「一般関税(輸入税および物品税)、GSTの徴収の一時的猶予および免除」、「保税倉庫運営などのライセンス制度」の項を参照。

GSTの詳細:内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

その他

一般関税、物品税、GSTの支払いは、自由貿易地区(FTZ)での保管、修理や展示会のための一時的輸入、ライセンス倉庫での保管、主要輸出業者として認定を受けた事業者による輸入などの場合において、猶予または免除される。また、投資貴金属のシンガポールへの輸入は、資格基準を満たせばGSTが免除される。

自由貿易地区(Free Trade Zone:FTZ)

自由貿易地区(FTZ)は、1966年自由貿易地区法(Free Trade Zones Act 1966)により指定された地区で、シンガポールに空路および海路で輸入された商品はすべて一旦FTZに搬入され、保管される(ただし、課税対象品目である酒類、たばこ類は、保管期間30日以降、シンガポール税関に認可された「ライセンス倉庫」に搬入されなければならない)。FTZ内に保管された商品は、内貨品として通関されない限り、一般関税、物品税、GSTは徴収されない。輸入品が再輸出または積み替えされる場合、同一のFTZ内または他のFTZ内で納税することなく積み替え作業を行うことができる。

シンガポールには9カ所のFTZがあり、公社3社により管轄されている。

  1. PSA コーポレーション(PSA Corporation Ltd
    シンガポール港(Port of Singapore)内のTanjong Pagarターミナル、Keppelターミナル、Braniターミナル、Pasir Panjangターミナル、Sembawang埠頭、Keppel物流パークおよびその架け橋、Tuas港から成る。
  2. ジュロン港公社(Jurong Port Pte Ltd
    ジュロン港(Jurong Port)
  3. チャンギ空港グループ(Changi Airport Group (Singapore) Pte Ltd
    チャンギ空港内のシンガポール空港物流パーク(Airport Logistics Park of Singapore)、チャンギ空港貨物ターミナル・コンプレックス(Changi Airport Cargo Terminal Complex)から成る。

2010年5月、チャンギ空港に隣接したFTZ内に貴重品専門倉庫「シンガポール・フリーポート」が開業し、大手競売商などがフリーポートを使って高価な貴重品を保管している。シンガポール政府は、顧客の9割以上、預かり荷物の9割以上が海外顧客である貴金属・美術品・骨とう品の倉庫保管サービス事業者のうち「特定倉庫制度(Specialised Warehouse Scheme=SWS)」の認定を受けた事業者に対し、2011年10月より関税およびGSTの納付を免除している。また、2020年1月1日よりSWSにて、海外の人に提供される適格サービスが、シンガポールに属するGST登録者に「直接利益をもたらす」場合、当該関税およびGSTの納付が免除されている。SWSの管轄は内国歳入庁(IRAS)である。

一時的輸入制度(Temporary Import Scheme

展示会、オークション、修理や公演・試運転など認定された目的のために一時的に国内に輸入される出展品(たばこ類、酒類は除外される)は、6カ月以内に再輸出されることを条件として、一時的輸入制度(Temporary Import Scheme)を利用すると、一般関税、物品税、GSTの支払いが免除される。申告者は、税関に対し、金融機関による課税額相当の保証を添えて、輸入未払(一時貨物)許可[In-Non-Payment (Temporary Consignment) Permit]を申請する。なお、6カ月以内に再輸出されなかった場合には、国内輸入と見なされ、その時点で税金の支払い義務が発生する。

ライセンス倉庫制度(Licensed Warehouse Scheme

一般関税・物品税の対象となるアルコール製品、たばこ類、自動車・二輪車、石油製品を保管する倉庫を運営する事業者は、シンガポール税関にライセンスを申請すると、ライセンス倉庫として指定された倉庫に搬入・保管される課税対象品目の一般関税、物品税、GSTの納税は猶予される。年間ライセンス費用は、予測関税額、または過去の平均関税月額に応じて2,500Sドル(月額100万Sドル以下)、4,000Sドル(同100万Sドル超1,000万Sドル以下)、2万1,000Sドル(同1,000万Sドル超)の3段階に分かれている。認可倉庫のライセンスは3種類あり、規模に準じたライセンスの取得が必要となる。

主要輸出業者制度(Major Exporter Scheme:MES)

輸入品の50%以上を再輸出し、かつ輸入品の過去12カ月の輸入総額が1,000万Sドルを超える事業者(輸入した原材料・部品の組立を行う製造業者やシンガポールを域内の物流拠点として利用する物流業者など)は、本制度に基づく認定を受けると、非課税品目である原材料・部品・製品の輸入時点でのGST納付が猶予される。事業者は当該製品の国内販売に伴い徴収したGSTを内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore:IRAS)へ納付すればよい。なお、MES制度はIRASの管轄となる。

保税倉庫運営などその他のライセンス制度

  1. 航空貯蔵保税制度(Air Store Bond Scheme

    機内サービス用アルコール飲料など物品税の課税対象となる品目を航空会社に販売する目的で、チャンギ空港内で保管する倉庫を運営する事業者は、ライセンスを取得すると物品税およびGSTの徴収が猶予される。年間ライセンス費用は、予測関税額、または過去の平均関税月額に応じて2,500Sドル(月額100万Sドル以下)、4,000Sドル(同100万Sドル超1,000万Sドル以下)、2万1,000Sドル(同1,000万Sドル超)の3段階に分かれている。ライセンスの申請先はシンガポール税関であるが、事業者はチャンギ空港グループ(CAG)からも運営する倉庫の場所に関して認可を受けなければならない。

  2. 免税店制度(Duty Free Shop Scheme

    アルコール飲料、たばこなど物品税の対象となる品目を旅行者に免税品として販売する免税店運営事業者はライセンスを取得し、他の非課税品目の売り場と分離しなければならない。免税店運営事業者の年間ライセンス費用は1店舗当たり一律7万Sドルとなっている。ライセンスの申請先はシンガポール税関であるが、免税店運営事業者はチャンギ空港ターミナルおよび各フェリーターミナルを管轄する政府機関からも認可を受けなければならない。

  3. 物品工場制度(Excise Factory Scheme

    物品税の課税対象となるアルコール製品、たばこ、乗用車・二輪車、石油製品を国内で製造・保管する工場は本制度の下、ライセンスを取得すると、保税工場としての資格が付与され、物品税およびGSTの徴収が猶予される。保税工場は他の非課税品目の生産ラインまたは貯蔵倉庫と分離しなければならない。年間ライセンス費用は、品目に応じて異なり、紙巻タバコ製造工場が12万Sドル、他のタバコ製品製造工場が1,800Sドル、石油精製所が7万5,000Sドル、天然ガス製造工場が2,600Sドル、エール・ビール・スタウト・ポーター工場が3万1,600Sドル(年間生産量180万リットル以上)または8,400Sドル(年間生産量180万リットル未満)などとなっている。活動規模によっては、Trade FIRST(Trade Facilitation & Integrated Risk-Based System)というシンガポールにおける企業を総合的に評価するフレームワークで、上位の評価を得る必要がある。

  4. 免除工場制度(Industrial Exemption Factory Scheme

    アルコール製品、石油製品(ディーゼルとバイオ燃料除く)など物品税の課税対象となる品目を原材料として使用・加工する工場は、本制度の下で免除工場証明書を取得すると物品税の支払いが免除される。当該原材料はシンガポール税関の許可なく転売、譲渡、処分されてはならず、在庫等に関する正確な記録を保持しなければならない。免除工場証明書の発行にあたり、年間600Sドルの手数料が徴収される。

  5. ゼロGST倉庫制度(Zero GST Warehouse Scheme

    2006年1月1日から導入された制度で、ライセンスを取得した物流事業者は、商品を輸入した時点でのGST納付が猶予され、商品が国内消費に供される際にのみGSTを納付すればよい。再販売目的で商品を輸入する事業者から輸入した商品を他のゼロGST倉庫事業者に移転する事業者までライセンスの資格は3つに分類され、それぞれの資格に応じて税関に提出する要件が異なる。本制度では物品税の課税対象品目、国内で製造・調達された商品、GSTを支払った商品は適用対象外となる。年間ライセンス費用は、平均在庫価額に応じて、1,000Sドル(平均在庫価額が100万Sドル以下)、2,500Sドル(同100万Sドル超500万Sドル以下)、4,000Sドル(同500万Sドル超)の3段階に分かれている。本制度は非課税品目を取り扱う物流事業者に適した制度で、倉庫を保有する事業者であれば、シンガポール国内のいずれの場所でもゼロGST倉庫として申請することができ、保有する倉庫の一部をゼロGST倉庫として他の保管スペースと区分することもできる。特定の商品(list of listed goods外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(40KB))を保管する際は、TradeFIRSTにおける中級の評価、第二種認可倉庫の認定を受ける必要がある。

  6. 輸入GST繰延払い制度(Import GST Deferment Scheme

    2010年度予算にて発表された輸入業者の資金繰りを緩和するための新たな制度で、内国歳入庁(IRAS)に申請して認可を受けると、2010年10月1日以降、輸入した時点で支払うべきGSTを毎月のGST申告期限まで繰り延べて支払うことができるようになった。

  7. コンテナ・フレート倉庫(Container Freight Warehouse

    本制度の下で認定された物流業者は、自由貿易地区(FTZ)の指定区域外で LCL(Less Than Full Container Load)貨物のブレークバルクや混載作業を行うことができる。年間ライセンス費用は一律4,000Sドル。非課税、非管理品目、非戦略的管理品目のみ取り扱いが可能。