為替管理制度

最終更新日:2023年10月31日

管轄官庁/中央銀行

広範囲な通貨・金融政策を担当してきた通貨金融庁(MAS)は、2002年10月1日、造幣業務を担当してきたシンガポール通貨理事会(BCCS)を吸収し、シンガポールの中央銀行として機能している。

シンガポール通貨金融庁(Monetary Authority of Singapore:MAS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

所在地:10 Shenton Way, MAS Building
Singapore 079117
Tel:(65) 6225-5577
Fax:(65) 6229-9229

適用法

MAS法、通貨法、銀行法、金融会社法、保険法、両替・送金事業法、証券先物法、金融顧問法、事業信託法などがある。

業務内容
  1. シンガポールの中央銀行として、通貨政策(通貨バスケット制度の管理、シンガポール・ドルの非国際化政策等を含む(「為替相場管理」の項を参照))の立案と政策実施、通貨発行、決済システムの監督、国庫金の取り扱い
  2. 金融サービス(銀行、保険、証券、金融先物など)の包括的監督と金融安定化監視
  3. 外貨準備管理
  4. 国際金融センターとしてシンガポールの地位確立など

2002年10月1日、MASは造幣業務を担当してきたシンガポール通貨理事会(Board of Commissioners of Currency, Singapore:BCCS)を吸収した。

管轄金融機関

商業銀行(204行、うち地場銀行6行、外国銀行201行、外国銀行のうち20行がフルバンクのステータスを保有)、保険会社(387社)、外国銀行の駐在員事務所(32社)など(2023年10月31日現在)。

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為替相場管理

バスケット方式による管理型変動相場制、非居住金融機関に対するシンガポール・ドル(Sドル)貸出規制

外国為替管理制度は、1978年に廃止されている。しかし、経済規模が小さいシンガポールでは、通貨投機などによる為替の乱高下を避け、シンガポール・ドル(Sドル)の安定を図るため、外国通貨取引と自国通貨取引を完全に切り離す政策(Sドルの非国際化政策)を実施している。

  1. 通貨バスケット制度

    シンガポールでは、名目為替実効レート(NEER)の管理により、金融政策を毎年4月と10月に調整している。NEERの目標レートは、主要な貿易相手国・地域の通貨を各国・地域との貿易量で加重平均する通貨バスケット制度を採用。為替相場の変動幅が一定の変動幅(為替バンド)内に収まるように運営されている。通貨バスケットの構成通貨、構成比率および変動幅については、公表されない。MASは、金融政策で消費者物価指数(CPI)の上昇ペースを重視し、CPI上昇ペースが鈍化すると通貨の切り上げペースを緩和することで景気を刺激し、CPI上昇ペースが高まるとNEERの誘導レンジを上方シフトさせ金融引き締めを行っている。

  2. 非居住金融機関に対するSドル貸出(Lending of S$ to Non-Resident Financial Institutions)規制

    国外でのSドル取引市場の発生と拡大を制限し、Sドル為替レートの安定を図るための政策で、2004年まで「シンガポール・ドルの非国際化」政策と呼ばれていた。具体的には、[1]非居住金融機関に対する一定額以上の貸し出し(500万Sドル以上)に対するMASの事前承認取得義務、[2]銀行業免許の種類によるSドル取扱業務への参入制限、[3]国内資本市場から調達したSドルの国外使用制限(海外投融資等に当たっては、外貨転換等を行う必要がある)などが挙げられる。

貿易取引

現金、小切手、口座送金、カード決済等、通常の決済に関して、貿易取引を行う企業に対するMASの許認可・報告義務などの規制・制限はない(ただし、金融機関によるマネーロンダリングに関する確認は必要となり得る)。

貿易外取引

運賃、保険料などのサービス役務、仲介貿易の決済に対する規制・制限はない。また、技術援助契約に基づくロイヤルティー支払に対する規制・制限もない(ただし、金融機関によるマネーロンダリングに関する確認は必要となり得る)。

資本取引

特に制限なし。ただし、非居住金融機関に対するSドル貸出規制により、Sドルの使用方法については一定の制限がある。

資本取引における制限は概ねないが、非居住金融機関に対するシンガポール・ドル貸出については、次の制限がある。

  1. 銀行による非居住金融機関に対するシンガポール・ドル(Sドル)貸出規制

    銀行は、国内外において、目的を問わず、Sドルを非居住金融機関に対し、1法人当たり貸付総額が500万Sドル以下の範囲で貸し付けることができる。ただし、1法人当たりの貸付総額が500万Sドルを超え、かつ資金が国外で使用される場合、供与されるSドルは外貨に転換またはスワップされなければならない。ただし、当該SドルがSドル相場投機目的であると信じる理由がある場合は、信用供与できない。また、銀行は毎月の貸付残高についてMASへの報告義務がある。

  2. 非居住金融機関によるSドル建て有価証券の発行に関する規制

    シンガポール金融機関は、シンガポール市場における非居住金融機関によるSドル建て株式・債券の発行を手配できるが、Sドル資金がシンガポール外で使用される場合、供与されるSドルは、外貨に転換またはスワップされなければならない。また、非居住金融機関によって発行されたSドル債券は、預金業規制に抵触しないよう、原則として、12カ月以内の満期、20万Sドル以上でなければならない。

  3. デリバティブ商品等の取引に関する規制
    当初取引がSドルを非居住金融機関に対して供与する外貨スワップで、非居住金融機関1法人当たり500万Sドルを超える取引であり、Sドル資金がシンガポール外で使用される場合、供与されるSドルは外貨に転換またはスワップされなければならない。ただし、当該SドルがSドル相場投機目的であると信じる理由がある場合は、スワップ取引できない。

関連法

銀行法、通貨金融庁通達

1970年銀行法(Banking Act 1970

銀行業務の基準、規制、制限等を定めた法律。

通貨金融庁通達(MAS Notice

非居住金融機関に対するSドル貸出規制は、金融機関の種類ごとに定められている。

  1. 銀行:MAS Notice 757(2004年5月28日発効、2021年6月28日更新)
  2. マーチャント・バンク:MAS Notice 1105(2004年5月28日発効、2018年10月5日更新)
  3. ファイナンス・カンパニー:MAS Notice 816(2004年5月28日発効、2018年10月5日更新)
  4. 保険会社:MAS Notice 109(2004年5月28日発効、2021年6月28日更新)
  5. 資本市場サービス会社:MAS Notice SFA 04-N04(2004年5月28日発効、2021年6月28日更新)

その他

特になし。