為替管理制度

最終更新日:2025年10月27日

最近の制度変更 

管轄官庁/中央銀行

カンボジア国立銀行

カンボジア国立銀行(National Bank of Cambodia:NBC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

所在地:#88, Street 102 Corner Street 19, Sangkat Wat Phnom, Khan Daun Penh, Phnom Penh, Cambodia(現在、新築工事中のため、仮の本部事務所(#60-70, St. Hanoi (1019), Bayab Village, Sangkat Phnom Penh Thmei, Khan Sen Sok, Phnom Penh)にて営業中)
Tel:+855-23-722-563, 722-221
Fax:+855-23-426-117
E-mail:info@nbc.org.kh

為替相場管理

管理フロート制

基本的には中央銀行NBCが、現地通貨リエルの対米ドルレートを安定的にするように管理している。ターゲットは明示されていないが、4,000~4,200リエル/米ドルをコンフォタブル・ゾーンとしているとされる(2022年の平均値は4,102リエル/米ドル、2023年の平均値は4,110リエル/米ドル、2024年の平均値は4,071リエル/米ドル)。

NBCは、2009年は5,400万米ドル、2010年は4,800万米ドル規模の為替市場への介入(米ドル売り・リエル買い)を行っているが、2011年~2019年にはリエル安定のための介入は実施していなかった。しかし、2020年にリエル流通促進を目的に8,020万米ドル、2023年に1億3,910万米ドル規模の米ドル売り・リエル買い介入が行われた。米国の利上げに伴うリエル安を牽制したもの。しかし、2024年にリエル需要の高まりに対応して、8,000万米ドル規模のドル購入が行われた。カンボジア国民の購買力を維持するためとされているが、カンボジア経済は高度に米ドル化しており、現金については2020年時点で83.7%が米ドル、預金については2020年時点で91.7%、2022年時点で83%、2023年時点で90.3%、2024年時点で90.9%が外貨建て(主に米ドル建て)と、現地通貨リエルの役割は小さい。給与の支払いを含め、国内取引の多くは米ドル建てで行われており、リエルは農村部での支払いや少額取引に限り使用されている。

緩やかな脱米ドル化を進めるカンボジア政府は、一部の公務員給与、証券取引所の建値、ガソリン価格などについてはリエル建てとしている。NBCも、リエル使用の緩やかな普及を図る方針であり、証券担保型流動性供給オペレーション(LPCO)などによるリエルの円滑な供給を行っている。また、2020年5月には、商業銀行およびマイクロファイナンス機関と協議を行い、1米ドル、2米ドル、5米ドル紙幣の受け入れを制限する旨の合意を行った。商業省も、価格表示のリエル化のための省令を公布している。

貿易取引

貿易取引の決済通貨としては主に米ドルが使用される。外為取引はカンボジアで営業する公認銀行を通じて行わなければならない。

1997年制定の外国為替管理法、および、2021年投資法ともに、外為取引の原則自由を定めており、カンボジアは外為取引については高度に自由化されている。ただし、すべての越境外為取引は、カンボジアで営業する公認銀行(公認両替業者を含む)を通じて行わなければならないと定められている。

国内における外貨保有・取引は自由であるが、居住者・非居住者が1万米ドルを超える現金をカンボジア国内に持ち込んだり持ち出したりする場合には、税関への申告が必要である(外為法第13条)。なお、マネー・ロンダリング規制が存在し、特に公認銀行においては厳格に適用されている。

決済通貨

主に米ドル。中国人民元なども一部で使用されている。

決済手段(輸出・輸入)

L/Cも利用されており、特段の規制は存在しない(外為法第5条第1項および2021年投資法第19条)。ただし、外為取引はカンボジア国内の公認銀行経由で行わなくてはならない(同)。相殺決済(ネッティング)も認められているが、ほとんど使用されていない。

外貨支払い時の中銀規制

特段の規制は存在しない(外為法第5条第1項)。ただし、外為取引はカンボジア国内の公認銀行経由で行わなくてはならない(同)。

貿易外取引

特段の規制は存在しない。

運賃、保険料などのサービス・役務、仲介貿易における外貨支払い、技術援助契約に基づくロイヤルティーの支払いについては、特段の規制は存在しない(外為法第5条第1項および2021年投資法第19条)。

資本取引

対内および対外直接投資、証券投資、対外借入・貸出、預金勘定取引、利子・配当・利益などの対外送金に関しては、特段の規制や許認可はない。

対内および対外直接投資に関する規制・許認可

特段の規制は存在しない(外為法第5条第1項および2021年投資法第19条)が、居住者による10万米ドル以上の対外投資については、中央銀行への事前届出が必要である(外為法第16条)。海外からのカンボジア向け投資について、10万米ドル以上の外為取引に関しては公認銀行から中央銀行に報告される。公認銀行は、預金で集めた資金の海外での運用は禁止されている。

カンボジア証券取引所

2011年7月に開設され、2012年4月から取引が開始されたカンボジア証券取引所は、2025年7月現在、プノンペン上水道公社、グランド・ツイン・インターナショナル社、プノンペン港湾公社、プノンペン経済特区社、シハヌークビル港湾公社、ACLEDA銀行、Pestechカンボジア社、DBDエンジニアリング社、JS Land社、MENGLY J. QUACH EDUCATION社、CAMGSM社の11社が上場している。
また、社債市場は2018年に開始された。Royal Group Phnom Penh SEZ Plc、自動車販売などを行うRMAカンボジア社、Telcotech社、ROYAL RAILWAY社、GOLDEN TREE社、CAMGSM社、CIA FIRST国際学校、ACLEDA銀行、SCHNEITEX DYNAMIC社が社債を上場している。

対外借入・貸出に関する規制・許認可

特段の規制は存在しない(外為法第5条および2021年投資法第19条)が、公認銀行が海外に外国通貨の現金を持ち出す際には、中央銀行への事前届出が必要である。また、公認銀行が預金で集めた資金については、海外での運用は禁止されている。

預金勘定取引

  1. 居住者預金

    カンボジア国内において、外貨建て口座を保有することは自由である。実際に、預金通貨の85.1%はドル建てである(2024年末現在)。中国人民元建て、タイバーツ建ての口座も可能である。
    海外での預金口座開設についても、特段の制限はない(マネー・ロンダリング規制は存在する)。
    なお、居住者と非居住者では、普通預金・定期預金金利に対する課税税率が異なる(居住者4%・6%、非居住者14%)ため、居住者は居住証明などを提出する必要がある。

  2. 非居住者預金
    非居住者がカンボジア国内で預金口座を保有することは自由である。マネー・ロンダリング規制以外に特段の規制は存在しないが、銀行によって本人確認のための必要書類が異なる場合がある(6カ月以上有効のビザの提示などを求められる場合もある)。

利子・配当・利益等対外送金に関する規制

2021年投資法第19条により、次の海外送金は承認されている。

  1. 初期の資本拠出を含む資本拠出
  2. 収入、キャピタルゲイン、配当金、ロイヤルティー、ライセンス料、管理・技術支援料、利息およびその他投資からの収入
  3. 投資プロジェクトを実施する会社の全部または一部の売却または解散による利益
  4. 輸入時の支払い、ならびに、借入金の元本および利息の本国への送金
  5. 内乱、国による収用または没収が行われた場合における補償金の支払い
  6. 裁判所による判決や仲裁決定など、あらゆる手段による紛争の解決に起因する支払い
  7. その他の収入および従業員の給与

なお、利息、ロイヤルティー、手数料、配当などの海外送金については、原則として非居住者源泉徴収税(14%)が課税されることとなっているので、留意が必要である。

関連法

外国為替管理法、2021年投資法、マネー・ロンダリングおよびテロ資金防止法

  • カンボジア国立銀行(NBC):外国為替管理法(Law on Foreign ExchangePDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.43MB))(1997年8月22日制定)
  • カンボジア開発評議会(CDC):投資法(Law on Investment)(2021年10月15日制定)
    ジェトロ「ビジネス関連法・法務」内の『投資法』(2021年10月)参照。
  • カンボジア国立銀行(NBC):反マネー・ロンダリングおよびテロ資金対策法(Law on Anti-Money Laundering and Combatting Terrorist Financing)(2020年6月27日制定)
  • 税法(Law on Taxation)(2023年5月16日制定)

その他

カンボジア商業省は価格表示のリエル化を促進している。

価格表示のリエル化

カンボジア商業省は、2017年7月7日付で「すべての商品およびサービスに対する価格表示に関する省令第47号の改正に関する省令第172号」および同年9月1日付で「すべての商品およびサービスに対する価格表示に関する省令216号」を公布し、現地通貨であるリエルでの価格表示を求めている。

マネー・ロンダリング対策の強化

マネー・ロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)は、2019年2月20~22日にパリで総会を開催し、カンボジアを「グレー・リスト」に分類した。カンボジアは、2015年に1度この分類から外れたが、マネー・ロンダリングおよびテロ資金対策の新基準に基づいた評価で、再びグレー・リスト入りすることとなった。このため、中央銀行が中心となって2020年6月、反マネー・ロンダリングおよびテロ資金対策法が制定・施行された。FATFは2023年2月24日、資金洗浄に関する対策を強化したとして、カンボジアを「グレー・リスト」から除外した。

カンボジア・日本間の越境QRコード決済企画の開始

カンボジア国立銀行(NBC)および一般社団法人キャッシュレス推進協議会(PJA)は、2025年4月21日、カンボジアのKHQRと日本のJPQR間の越境QRコード決済企画に関する覚書を締結した。本企画は、2段階での実施となり、フェーズ1では、カンボジアのデジタル通貨(バコン)システムからJPQRによる決済が可能となり、フェーズ2では、日本のシステムからカンボジアでKHQRによる決済が可能となる予定である。フェーズ1は2025年7月4日に開始されており、ACLEDA銀行およびサタパナ銀行がカンボジア・日本間の国境を越えたQRコード決済を行っている。