外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2024年03月14日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

外国企業のインド進出の形態は、現地法人(独資子会社、インド側パートナーとの合弁会社)、駐在員事務所(L.O.)、支店(B.O.)、プロジェクト・オフィス(P.O.)、有限事業組合(LLP)のいずれか。

インドにおける会社設立や会社運営の基本となる〔会社法(Companies Act, 2013)〕は、2013年8月30日、約60年ぶりに全面改正されている。
企業省(Ministry of Corporate Affairs:MCA)により、同年9月12日から順次部分施行され、現在は全条文が施行されている。

重要な改正点は、居住取締役、独立取締役、女性取締役に関する規定の追加、重要な管理職の導入、一人会社の導入、CSR(企業の社会的責任)義務化、監査人のローテーション、簡易な合併手続きの導入など。
2013年会社法および規則は改正についての通達(Notification, Circular)が発出されるため、最新の規定については企業省のウェブサイトを確認する必要がある。
企業省(Ministry of Corporate Affairs:MCA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

現地法人(Company)の設立手続き

会社の形態

インドの会社の形態は、次の3つに分類される。

  1. 株式有限責任会社(Company Limited by Shares
    構成員(株主)の個人責任が、当該構成員が保有する会社の株式の未払い額に限定される。
  2. 保証有限責任会社(Company Limited by Guarantee
    構成員の個人責任が、清算の際には、当該構成員が会社に対して資産の出資を引き受けた額に限定される。
  3. 無限責任会社(Unlimited Company
    構成員の責任は無限である。

会社の種類

インドの会社の種類は、非公開会社と公開会社の2つに分類される。

非公開会社(Private Company

〔会社法 第2条68項、第149条1項・3項〕

株主が2人以上で、株主数の上限は200人。
取締役は2人以上必要で、うち1人は居住取締役でなければならない。居住取締役とは、当会計年度中182日以上インドに滞在した取締役のこと。
新規に設立された非公開会社の場合には、この滞在期間への要件は会社設立会計年度末で比例して適用される。

非公開会社は一定のコンプライアンスと開示要件が緩和されている。
非公開会社の例外規定(Exemption to Private Companies)は次の企業省通達で修正されている。

また、小企業(small company)に対しても一定のコンプライアンス緩和が講じられている。小企業の定義は、その適用対象企業を拡大する目的で度々改正され、2022年9月15日以降は、払込資本と売上高がそれぞれ4,000万ルピー、4億ルピー未満の企業を小企業とみなすと規定されている。ただし、持株会社または子会社等は小企業とはみなされない。

公開会社(Public Company

〔新会社法 第2条71項、第149条1項・3項〕

株主は7人以上。取締役は3人以上必要で、うち1人は居住取締役でなければならない。居住取締役とは、当会計年度中182日以上インドに滞在した取締役のこと。

一定の規模以上の公開(有限責任)会社については、独立取締役、女性取締役、監査委員会、重要な管理職等の設置が要求されることに留意。

設立手続き・書類

会社の設立には、次の3段階の手続きが必要となる。非公開有限責任会社、公開有限責任会社、いずれも手続は同様で、SPICe+ (Simplified Proforma for Incorporating a Company Electronically Plus)という企業省(MCA)のウェブフォームを通して行う(2020年2月23日以降のすべての会社設立申請に適用)。
なお、2023年1月19日付の2023年会社(法人設立)改正規則2023(Companies (Incorporation) Amendment Rules, 2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(5.4MB))(同年1月23日発効)により、SPICe+(INC-32)上での提出先は従前のバージョン2(V2)から、V3に移行している。V2からの変更点の詳細は、MCA作成のFAQ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(340KB)で確認できる。
必要書類のフォームは、企業省ウェブサイトから入手可能。
企業省:各種フォームのダウンロードページ(Company Forms Download外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

第1段階:会社名の登録

会社名の申請は、SPICe+ Part Aを通して行う。企業登録局の代理となる中央登録局(Central Registration Center:CRC)で処理され、登録された会社名の有効期間は20日となる。
有効期間内に法人設立申請書が提出されない場合、認可・登録された会社名は失効となるが、有効期間は、以下のとおり最長60日間まで延長ができる。

  • 当初の認可日から40日以内、手数料1,000ルピーを当初の20日満了前に納付を条件とする。
  • 当初の認可日から60日以内、手数料2,000ルピーを当初40日満了前に納付を条件とする。
  • 当初の認可日から60日以内、手数料3,000ルピーを当初の20日満了前に納付を条件とする。

関連リンク(企業省):2020年会社(設立)第三次改正規則(Companies (Incorporation) Third Amendment Rules, 2020外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(1.23MB))(ヒンディー語・英語)

申請に際してのガイドラインは次のとおり。

  1. 各企業は、2つの社名のみ申請できる。
  2. 会社名は、すでに登録された他社名や商標等と酷似していてはならない。ただし、外国会社がインドに子会社を設立する場合は、親会社の社名にIndiaまたは州・都市名を加えることは認められる。
  3. 会社名の選定には、〔標章および名称(不適切使用防止)法(Emblems and Names(Prevention of Improper Use)Act, 1950)〕および2014年会社(法人設立)規則の規定に従う必要がある。
第2段階:会社の登記関連申請

会社の登記、取締役識別番号(DIN)取得、納税番号等の取得は、SPICe+(Form INC-32)を通して行う。進出地域(州)の企業登録局により同申請が承認されると、会社の設立・存在を法的に証明する「会社設立証明書」(Certificate of Incorporation)が発行される。
SPICe+による申請の際には、取締役候補者のデジタル署名証明書(Digital Signature Certificate:DSC)が必要となる。DSCの取得は、政府指定業者(Certifying Authorities外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)へ申請する。
なお、授権資本額が150万ルピー以下の会社設立の場合、企業登録局に法定手数料を支払う必要はない。
一般的な申請の手順は以下のとおり。
提出書類の詳細は、2023年1月19日付の2023年会社(法人設立)改正規則2023(Companies (Incorporation) Amendment Rules, 2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(5.4MB))(同年1月23日発効)およびMCA作成のFAQ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(340KB)を参照。

  1. SPICe+(INC- 32)に必要事項を入力し、以下などを添付し、申請を行う。
    1. 基本定款(Memorandum of Association)/電子基本定款(e-MoA):会社の範囲と業務を定義するものであり、次の情報や認証等を含む必要がある。
      1. 会社名、住所、目的、資本金
      2. 公証人役場での認証
      3. 領事館の認証または公印確認(アポスティーユ)が付与された株主や株式数にかかわる情報書(Subscription Sheet
    2. 付属定款(Articles of Association)/電子付属定款(e-AoA):取締役会の規定、株式譲渡などの会社内部の運営上の事項を記載するものであり、基本定款と併せて、提出が義務付けられる。
      特に、合弁会社の場合は、株式の譲渡など、会社設立後に問題となることもあり、慎重な対応が必要となる。
      付属定款の一部となる公証人役場での認証と領事館の認証、または公印確認が付与されたSubscription Sheetを含めた付属定款の提出が必要。
    3. AGILE-PRO、URC-1、INC-9(該当する場合)、DIR 12等: なお、フォームAGILE-PROを提出することで、以下の登録・申請がなされる。
      1. 物品・サービス税登録番号(Goods and Service Tax Identification Number:GSTIN)
      2. 従業員州保険公社(Employees State Insurance Corporation:ESIC)
      3. 従業員積立基金公社(Employee Provident Fund Organization:EPFO)
      4. プロフェッショナル税登録(マハーラーシュトラ州、カルナータカ州、西ベンガル州など、一部の州で必須となる登録)
      5. 法人銀行口座開設
  2. 取締役識別番号(DIN)を申請する。

    取締役識別番号(DIN)を未取得の3人以下の取締役がいる場合は、SPICe+(INC-32)で、取締役識別番号(DIN)を申請できる。
    3人超の取締役については、SPICe+(INC-32)提出以前に、DIR3において、取締役識別番号(DIN)の申請が必要。

  3. 会社の本店所在地(Registered Address)を登記する。

    会社の連絡先住所が登録済みである場合、SPICe+(INC-32)を提出後、INC22の提出は必要ない。
    当該住所が未登録の場合、会社設立後30日以内にINC22の提出が必要。

  4. 税務番号の発行を受ける。

    会社の納税者番号(Permanent Account Number:PAN)と源泉徴収者番号(Tax Deduction and Collection Account Number:TAN)は、SPICe+(INC-32)を提出後に発行される。

第3段階:電子証券/株式口座(DEMAT口座)の開設と株主への電子形態(Dematerialized Form)による証券/株式の発行
  1. 直近の法改正
    2023年10月27日付の法改正に伴い、小会社(small company)を除くすべての非公開会社は、2024年9月30日(2023年3月31日の会計年度終了後18カ月以内)までに、以下が義務付けられる。
    1. 株式等の有価証券(以下「株券等」)は、電子化された形態でのみ(only in dematerialized form)発行すること
    2. 発行するすべての株式等の電子化を促進(facilitate dematerialization)すること

    従前から公開会社(public companies)は株券等の有価証券(以下「株券等」という)を電子化することが義務付けられていたが、本規則により、非公開会社(private companies)も同様の義務を負う。
    対象外となる「小会社」とは、払込資本金額が4,000万ルピー以下、かつ直近の損益計算書上の売上高が4億ルピー以下の要件を満たす非公開会社を指す(会社法第2条第85号)。ただし、持株会社や子会社(holding company or a subsidiary company)は小会社の定義には含まれない(すなわち、持株会社や子会社は、本改正に基づき株式等の電子化が義務付けられる)。
    なお、2023年3月31日以降に小会社でなくなった場合は、小会社でなくなった日の属する会計年度末日から18カ月以内に遵守するものとされる。

    参照:2023年会社(証券の目論見書および割当)第2次改正規則(Companies (Prospectus and Allotment of Securities) Second Amendment Rules, 2023PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.1MB)

  2. DEMAT口座の開設
    電子化された株式等を保有するには、DEMAT口座を開設する必要がある。
    DEMAT口座を提供する金融仲介業者(銀行、証券会社等)はDepository Participants(以下、「DP」)と呼ばれる。会社はDEMAT口座開設にあたり、任意のDPを選択できる。規制当局(インド証券取引委員会:SEBI)に正式に登録されたDPはSEBIのウェブサイトに公開されている。
    なお、インドの中央証券預託機構(CSD)は、National Securities Depository Limited (NSDL)とCentral Depository Services (India) Limited (CDSL)の2種があり、加入するCSDごとにリストが異なる。

    DPを選択後、当該DPが規定する必要書類を揃え、本人確認(Know Your Customer:KYC)プロセスを完了させる必要がある。
    外国企業による申請の場合、DPにより追加書類や証明が求められることが多い。
    DEMAT口座開設のための申請そのものは、ほとんどのDPでは、オンライン上で手続きが可能である。

第4段階:事業開始までの手続

2019年会社(改正)法(Companies (Amendment) Act, 2019)の施行日後に設立された資本金を持つ会社は、次の条件を満たさない限り、事業開始および借入の実行は不可。

  1. 取締役が設立日後180日以内にフォームINC-20Aにおいて、基本定款に記載の各株主が合意された株価を支払済みであることを企業登録局に提出済。かつ
  2. 企業登録局に登録されている住所への確認をSPICe+/INC-22にて提出済(会社法第12条2項)。

駐在員事務所・支店等の設立手続き

インドの駐在員事務所、支店、プロジェクト・オフィスは、会社と異なり、インド準備銀行により管理・規制される。これらの設立にはインド準備銀行の事前承認が必要。ただし、以下の場合にはインド政府の事前承認が必要となる〔Para1(ii) of Master Direction〕。

  1. パキスタン人/法人による申請
  2. バングラデシュ、スリランカ、アフガニスタン、イラン、中国、香港、マカオの市民/法人であり、かつジャンム・カシミール州、インド北東7州、アンダマン・ニコバル諸島での設立の申請
  3. 防衛、電気通信(Telecom)、民間警備、情報・放送(Information and Broadcasting)の4部門に該当する場合。ただし、すでに政府承認や関係省庁・規制当局によるライセンス・許可が下りている場合は、インド準備銀行の事前承認は不要。また、防衛部門に関連するプロジェクト・オフィスの設立申請の場合、国防省、サービス本部、または国防公共部門との間で契約を締結していれば、インド政府による別途承認は必要ない。
  4. NGO、政府機関による申請。ただし、2010年外国寄付(規制)法で対象となる活動に、一部または全面的に関与する場合、当該法に基づく登録証明書を取得することで、2016年外国為替管理規制(Foreign Exchange Management Regulations, 2016)に基づく許可は不要。

駐在員事務所(Liaison Office

駐在員事務所は、インド国外の本社との連絡拠点として機能する事務所として設立される。営業活動や売買活動などの商業活動は、直接的であれ間接的であれ、一切禁止されている。事業活動として認められているのは、輸出入促進業務、外国親会社の代理業務、技術・資本提携の促進業務、連絡調整業務など。事務所の経費は、インド国外の本社からインド国内への外国為替送金によってすべて賄わなければならない。また、国外法律事務所は、インドに駐在員事務所を設立できない〔Annexure C of Master Direction〕。

インドで駐在員事務所を申請する外国居住者は、本国において直前の3事業年度において利益を計上しており、かつ直近の監査済財務諸表で5万ドル(または相当額)以上の純資産を有する必要がある。
設立申請は、以下の必要書類を所定申請書式に添付し、承認取引銀行(AD Category-I bank)経由でインド準備銀行へ提出する。

  1. 本社の登記簿謄本および定款(本社所在国で公証・アポスティーユを受けたものおよびインド大使館/領事館の認証を受けた英訳)
  2. 本社の最新直近3年間の監査済み財務諸表
  3. 本国の取引銀行が発行する、取引年数を示す銀行取引レポート
  4. 活動範囲・規定遵守等に関する宣誓書
  5. 必要に応じて承認取引銀行/インド準備銀行から求められるその他書類

設立許可取得後30日以内に企業登録局に、以下の必要書類・情報を所定書式に添付し、登録申請を行う。

  1. 本社の登記簿謄本および定款
  2. 本社の登記住所
  3. 取締役等の氏名・役職・住所等を示すリスト
  4. 本社を代表する権限を付与された(authorised)インド居住者の氏名・住所
  5. インド国内の主たる拠点とみなされる場所の住所
  6. 本社の委任を受けたインドでの代表者(authorised representative)を決議した取締役会の議事録
  7. 過去にインドでビジネスを行っていた場合、当該事務所の設立、閉鎖にかかる情報
  8. 取締役・代表者に、過去に有罪判決を受けた者またはインド国内外で会社設立や経営資格を剥奪された者がいないことの宣誓書

手続きの詳細および必要書類のフォームは、インド準備銀行(RBI)ウェブサイトより入手できる。インド準備銀行:FEMAフォームのダウンロードページ(FEMA FORMS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
* FEMA:Foreign Exchange Management Act(外国為替管理法)

承認は、通常3年間で、3年ごとに更新する必要がある。駐在員事務所の更新手続きは承認取引銀行で行う〔Para 2(ⅲ), 5 (1) of Master Direction〕。ただし、ノンバンク(Non-Banking Finance Companies:NBFCs)および建設工事・開発分野の駐在員事務所の場合、承認は2年間限定となり、更新はできない〔Para 2(ⅲ) of Master Direction〕。

支店(Branch Office

支店は、本社の代理として貿易、または各種サービスの提供等の商取引を行うことを目的に設立される。
事業活動として認められているのは、輸出入業務、コンサルタント・サービス(法律業務除く)、親会社の事業分野に関する調査業務、技術・資本提携の促進業務、外国親会社の代理業務・売買代理業務などである。通常、支店形態の場合、インドでの製造・加工活動はできない〔Annexure C of Master Direction〕。
ただし、SEZ内に設立する外国企業の支店については、製造・販売活動も認められている。

インドで支店を申請する外国居住者は、本国において直前の5事業年度において利益を計上しており、かつ直近の監査済み財務諸表で10万ドル(または相当額)以上の純資産を有する必要がある。
設立申請は、必要書類を所定申請書式に添付し、承認取引銀行経由でインド準備銀行へ提出する。
設立許可取得後30日以内に企業登録局に、必要書類・情報を所定書式に添付し、登録申請を行う。
いずれも、必要書類は駐在員事務所と同様。

プロジェクト・オフィス(Project Office

通常、プロジェクト・オフィスは、大規模な建設事業、土木工事およびインフラ整備といった大規模プロジェクトを実施するために設立され、プロジェクト終了後はインドからの撤退を前提としている。

プロジェクト・オフィスの設立申請は、インド準備銀行(RBI)が指定する以下の条件を満たす場合、一般的に許可される(general permission)。そうでない場合には、RBIの個別の承認が必要となる〔Para 2 (ⅳ) of Master Direction〕。

  1. プロジェクト実施のための契約をインド企業と締結していること
  2. プロジェクトが規制当局の必要な許可を得ていること
  3. 以下のいずれかに該当すること
    • プロジェクトの資金が海外からの直接送金であること
    • 二国間もしくは多国間の国際金融機関により資金提供を受けていること
    • 契約相手方となるインド企業・事業体が当該プロジェクトのために公営金融機関や国内銀行による期限付き貸付を受けていること

設立申請の必要書類は駐在員事務所・支店と同様。ただし、プロジェクト・オフィス申請の場合は、所定様式に以下の情報も記載する〔Annex B of Master Direction〕。

  1. 契約書のレファレンス番号・日付
  2. プロジェクト/契約を承認した関係当局の詳細
  3. 契約金額の総額
  4. プロジェクト・オフィスの住所/E-mail/電話番号/ファックス番号
  5. プロジェクト・オフィスの存続予定期間
  6. プロジェクトの内容

年次活動証明書の提出

駐在員事務所、支店、プロジェクト・オフィスは、会計年度末から6カ月以内に、所定のフォームで勅許会計士から年次活動証明書(Annual Activity Certificate)を取得し、承認取引銀行に提出する義務がある〔Para 4 of Master Direction〕。

企業登録局・管轄警察当局への登録

企業登録局への登録

駐在員事務所、支店、プロジェクト・オフィスは、設立許可取得後30日以内に企業登録局に所定のフォーム(Form FC-1)で申請し、登録を行う必要がある〔Para 12 of Master Direction、会社法 第380条〕。

管轄警察当局への登録

バングラデシュ、スリランカ、アフガニスタン、イラン、中国、香港、マカオまたはパキスタンからの申請者の場合には、当該州の管轄警察当局への登録が義務付けられている。

当該国からの申請者に対する承認書面のコピーは、必要な措置と記録のため承認取引カテゴリーI銀行(AD Category-I Bank)によりインド内務省国内治安部-Iニューデリー事務所に提出される〔Para 6 of Master Direction〕。

有限責任事業組合(Limited Liability Partnership:LLP)

LLPは、会社の有限責任性を有しつつ、その構成員により、企業登録局への最低限の報告により、柔軟な事業運営が可能な事業体の設立が可能である。

LLP法が導入された2008年当初は、外国企業によるLLPでのインド進出は認められなかったが、その後の改正で、外国直接投資(FDI)が自動認可ルートで100%出資まで認められる分野については、外国投資促進委員会(FIPB)の事前認可を必要とせず、LLPでの進出が可能となっている〔2020年統合FDI政策、項目3.2.4〕。

商工省産業政策促進局:2020年統合版FDI政策(Consolidated FDI Policy 2020外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

外国企業がLLPでインドに進出する場合、大きな資本投資を必要としない事業形態では、現地法人設立に比べて、より効率的な運営ができる。なお、インド準備銀行(RBI)の対外商業借入に対するFAQによれば、LLPは対外商業借入を実施できない。

LLP法は、2022年4月1日以降、2021年LLP(改正)法(LLP (Amendment) Act, 2021)が発効している(2022年2月11日付企業省通達S.O. 621 (E))。同改正法により改正された主な内容は次のとおり。

  1. インド居住要件の緩和:最低1人はインド居住者である必要があるが、当該基準が従前の「直前1年間に182日以上」から「会計年度中に120日以上」に変更(第7条)
  2. 詐欺の場合の罰則厳罰化:詐欺行為に対する罰則として禁固刑が2年から5年に引き上げられ、責任が増加(第30条第2項)(併科となる罰金は5万ルピー以上50万ルピー以下で変更なし)。
  3. 同法に基づく特定のコンプライアンス違反の非刑罰化:年次申告書の提出等の特定のコンプライアンスに違反した場合、従前は刑罰を意味する罰金(fine)が規定されていたが、改正法ではこれに代わり、金銭的な罰則(penalty)を科すことで、非刑罰化。
  4. 小規模LLP(Small LLP)の導入:拠出額が250万ルピー(または所定額)未満、かつ売上高が400万ルピー未満の場合は、小規模LLPとみなされる。

外国企業の会社清算手続き・必要書類

外国企業の会社清算手続き・必要書類については、〔2016年倒産および破産法〕および〔2013年会社法〕が適用される。

現地法人の閉鎖

現地法人(以下「会社」という)は、次の4つの方法により清算される。

  1. 会社法審判所(National Company Law Tribunal:NCLT)による清算(Winding up by the Tribunal

    〔2016年12月15日付企業省通達〕で、NCLTによる清算に該当する規制が施行された。次の場合には、NCLTが主体となって清算を行う(会社法第271条)。

    1. 会社が直前の5年間にわたって、財務諸表や年次申告書を企業登録局に提出していない場合
    2. 会社の構成員が特別決議を可決した場合
    3. 会社がインドの主権および威信、安全性、外国への友好関係、社会秩序、礼節や道徳に違反した場合
    4. 会社運営を不正に行う、詐害・違法目的で会社が設立されている、または会社設立や会社運営管理をする関係者が不正・失当・違法行為を犯した場合
    5. NCLTが会社清算につき公正かつ公平と決定した場合

    さらに、企業省が施行したNCLTによる清算の条項は、〔2016年倒産及び破産法〕により改正された。

  2. 自主清算(Voluntary winding up

    適用されるすべての関係法令を遵守している会社が自主的に清算を行う場合、自主清算手続きを開始できる〔2016年倒産及び破産法59項〕。

    取締役の過半数が宣誓供述書に基づく宣言を行えば、会社は自主清算を開始できる。
    また、宣誓供述書では、当該過半数の取締役が会社運営に関する十分な調査を行った上で、取締役の意見として、この会社には債務がない、もしくは債務がある場合には清算手続きにおいて、資産の売却収入をもって全債務の弁済ができる。
    さらには、詐害目的による清算手続きでないことが証明されている必要がある。

    その後、会社は清算人を選定し、業務の清算、資産の分配を行う。一旦清算人を選任すると、会社の取締役、社長などの権限はなくなる。
    会社が清算された後には、清算人は清算手続きがどのように行われたか、および会社の財産がどのように換金されたかを記載した清算書を作成する必要がある。当該清算書は、NCLTへの清算申請書類の一部となる。

  3. 会社倒産処理手続と清算〔2016年倒産及び破産法〕

    会社・有限責任事業組合が債権者に1,000万ルピー以上の債務の支払いができない場合、当該債権者や会社・有限責任事業組合(あるいは会社・有限責任事業組合の構成員、パートナー、取締役等を通じて)は、NCLTに会社倒産処理手続きの開始申請ができる。

    会社倒産処理手続きは申請者・NCLTが任命する倒産専門家によって行われる。会社倒産処理手続中、債権者委員会が設置される。
    倒産専門家は再生計画を作成し、債権者委員会およびNCLTから承認を受ける。
    NCLTは次の場合、会社・有限責任事業組合の清算開始命令を宣告できる。

    1. NCLTが、倒産処理手続、または早期倒産処理手続の期限(180日間、さらに90日間延長可能)までに、再生計画を受け取れない場合
    2. コンプライアンス違反により、NCLTが再生計画を承認しなかった場合
    3. 再生計画の承認前に、倒産専門家が、NCLTに債権者委員会による債務者の清算決定を通知した場合
    4. 債務者が承認された再生計画に違反し、それにより不利益を受けた債務者以外の利害関係者からの清算申立てがあった場合

    詳細は次の企業省資料を参照。

  4. 企業登録局の会社登録簿からの社名削除

    〔新会社法〕の下、次の場合には、企業登録局は自ら、または会社からの申請により、当該社名を削除し、会社解散命令を行うことができる。

    1. 会社が会社設立後1年以内に事業活動を開始できない場合
    2. 会社が直前の2年間に、ビジネスまたは事業活動を行っていない場合

    また、株主総会の特別決議での可決、または株主の75%以上の同意を得た上で、〔Companies(Removal of Names of Companies)Rules 2016〕の要件を満たす場合には、会社は会社登録簿からの社名削除申請ができる。

    詳細は次の資料を参照。

支店および駐在員事務所の閉鎖〔Para 10 of Master Direction

支店または駐在員事務所を閉鎖する場合には、必要書類を承認取引銀行(AD Bank)に提出しなければならない。
主な書類は次のとおり。

  1. 支店または駐在員事務所設立のためのインド準備銀行の許可、または部門別の規制当局の承認の写し
  2. インドにおける全債務が弁済されたことなどを記載した監査役の証明書
  3. インドで係争中の裁判がなく、送金を合法的に妨げるものがない旨の申請者または本社からの確認
  4. 申請者がインド会社法を遵守したことを記した会社登録局の報告書

これらの書類を受理した承認取引銀行は必要書類を精査し、その内容を確認した旨の宣誓書とともに、インド準備銀行に提出する。

その他

特になし。