2025年11月
国内外に開かれた半導体による産業イノベーション推進コミュニティ、始動
2025年11月18日
RISE-A設立記念シンポジウム登壇者
半導体とそのユーザーに関連する企業、研究機関や大学など様々な人が集まり、つながる「場と機会」を提供するRISE-A(Revolutionary Innovation by Semiconductor Ecosystem for All Industries、ライズエー)
が2025年6月に誕生し、11月4日に設立記念シンポジウムが開催された。SEMIをはじめとする半導体特化型の業界団体は一般的だが、RISE-Aは、「産業の血液」ともいわれる半導体を活用し、「for All Industries」が表すように、すべての産業にイノベーションを届け、日本の次世代産業の競争力強化に繋げる事を目指している点が特徴だ。東京駅からのアクセスが良好な日本橋の拠点を活用しながら、海外パートナーとの連携も深め、産業革新の起爆剤となることが期待される。
RISE-Aは三井不動産が主体となって立ち上げた一般社団法人だ。同社は、「不動産ディベロッパーから産業ディベロッパーになる」という理念の基、RISE-Aの前に、LINK-J
というライフサイエンスのイノベーション・ネットワーク・プラットフォームを2016年3月に設立、活発なイベントの開催、スタートアップやアカデミアの誘致に取り組み、事業は奏功した。2022年9月にはcross U
という宇宙産業関連のコミュニティ形成に乗り出し、RISE-Aは3例目となる。LINK-Jの会員企業は9年あまりで約950社を超え、日本橋エリアに構える集積拠点は12カ所にまで拡張し、200を超えるスタートアップ企業等が拠点を設けている。ドイツが本社の検査試薬・分析機器メーカーEUROIMMUN Japan株式会社は2019年にLINK-J拠点に日本子会社を設立するなど、入居企業の約1割は海外企業であり、日本進出の受け皿としての機能も果たしている。RISE-Aは2025年10月末時点で既に会員企業が約40社あり、国内外に幅広く門戸を広げ、今後拡大を目指す。
日本橋の拠点RISE GATE NIHONBASHI
設立記念シンポジウムではまず、主催者であるRISE-A副理事長 兼 三井不動産常務執行役員の山下和則氏から事業概要の説明があり、特にソフト面で、世界最先端の半導体研究開発機関であるベルギーのimec(アイメック)や台湾の工業技術研究院(ITRI)、米ニューヨーク州オルバニーのNY CREATESといった主要な半導体関連の研究機関との協力に関する覚書(MOU)締結による海外とのつながりを重視し、それら機関との交流の機会を提供していく旨、伝えられた。
そのほか、RISE-A理事長 兼 名古屋大学の天野浩教授は基調講演で、RISE-Aを介して製造と顧客の融合、様々な半導体の融合、ベテランと若手人材の融合、産業界、学界、行政、金融界の融合といった、多角的な側面での異種が混ざり合うことで、新たな半導体の価値を創造していくことが重要と述べた。
その後、「新たな半導体を活用したイノベーション」と題してNTT株式会社チーフエグゼクティブフェローの川添雄彦氏、ウーブン・バイ・トヨタ株式会社の代表取締役CEO隈部肇氏が、「海外から見た日本の半導体産業エコシステムへの期待」と題して日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役副社長執行役員 最高技術責任者の森本典繁氏、imec日本代表の伊藤慶太氏、ITRI電子光電システム研究所副所長の駱韋仲氏が、それぞれ講演を行い、最後は一般社団法人OpenSUSI代表理事の岡村淳一氏をモデレーターに、登壇者のパネルディスカッションで締めくくられた。
NTTの川添氏は、R&Dを米西海岸に新規設立した事をきっかけに、暗号理論の難関国際会議「Crypto」で採録される自社の論文が全体のうち約20%を占めるまで増加した事例を挙げ、人が集まりやすい場所に新たに拠点を設けることで人と人との交流が生まれ、そこから新たなイノベーションが創出される点を強調し、RISE-Aの役割に期待を寄せた。
また日本IBMの森本氏は、北海道で先端半導体の量産を目指すラピダスとの技術開発や連携に触れ、拠点として日本を選んだ理由として(1)サプライチェーンの多重化が重視される時代に1社1カ国への依存から脱却するため、(2)日本の多くの装置・材料メーカーとの20年以上にわたる長期的なパートナーシップの存在、(3)先端技術の製造実践と適用能力が世界トップレベルである点、を挙げた。
imecの伊藤氏は今後日本との連携を強化していきたいとして、imec xpand
というベンチャーキャピタル(VC)を活用しながら、日本の優れたスタートアップやアカデミアなどのシーズの産業化支援に意欲を示した。
パネルディスカッションの様子
今後の取り組みについて、RISE-A事務局長の中沢潔氏は、「半導体と銘打ったが、製造者だけでなく特に幅広いユーザー企業との交流は重要で、AIや量子などの先端技術との連携・派生も大いに期待したい。またLINK-Jやcross Uなどライフサイエンスや宇宙産業の既存の強力なコミュニティを活かし、相乗効果も狙う」と話す。
世界にはドイツ・ザクセン州に拠点を置くシリコンザクソニー
(ジェトロビジネス短信2025年6月24日
記事参照)や、米アリゾナ州のアリゾナテクノロジーカウンシル
、台湾の新竹サイエンスパーク管理局
などが存在し、先進的な半導体エコシステムにおいては同様の会員制コミュニティの存在は重要とされる(「海外の主要半導体エコシステム4地域からの学びと北海道での活用案」p.46
(KB))。これからの動向に注目だ。
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