ジェトロ対日投資報告2020(要約)

第3章 新型コロナが日本市場にもたらした変化とビジネス機会

日本では2020年4~5月にかけて経済活動が低下

  • 日本の人口10万人あたりの新規感染者数の推移をみると、最初の感染拡大は3月下旬に始まり、4月中旬にかけて感染者数が増加した。5月中旬にかけて感染者数は減少したものの、7月に入ると再び新規感染者数の増加がみられた。
  • 国内での新型コロナの感染拡大のため、日本政府は4月7日に緊急事態宣言を発令した。緊急事態宣言は、国内の感染状況などを鑑み、4月中旬に全国へ拡大されたのち、5月25日までにすべての都道府県で解除された。また政府は、新型コロナや関連措置による経済的な影響に対応するため、2度にわたって補正予算を編成した。

日本の新規感染者数の推移

  1. 〔注〕

    〇は日ごとの感染者数を示し、グラフは各国の日ごとの新規感染者数の散布図の近似曲線をとった傾向を示す。

  2. 〔出所〕

    世界保健機関(2020年11月5日時点)、国際連合から作成

緊急事態宣言の推移

緊急事態宣言の推移
発令日 対象都道府県 概要
4月7日 7都府県 関東、関西および九州の7都府県に対し、期間を4月7日から5月6日までとして、緊急事態宣言を発出した。
4月16日 47都道府県 5月の連休中の全国的な感染拡大防止のため、全都道府県に対し、期間を5月6日までとして、緊急事態宣言を発出した。
5月4日 47都道府県 5月6日までとしていた全都道府県に対する緊急事態宣言の期間を5月31日までとすることを発表した。なお、期間については5月14日を目途に改めて検討する旨を併せて発表した。
5月14日 8都道府県 感染状況や医療体制などを鑑み、北海道、関東、関西の8都道府県を除く39県について緊急事態宣言を解除した。残された8都道府県については、5月21日を目途に改めて検討する旨を併せて発表した。
5月21日 5都道県 関西3府県について、緊急事態宣言を解除した。翌週25日に残る北海道ならびに関東の計5都道県の評価を行う旨を併せて発表した。
5月25日 全国で解除 残されていた北海道ならびに関東の計5都道県について、緊急事態宣言を解除した。

〔出所〕首相官邸の関連資料から作成

  • 国内産業をみると、緊急事態宣言が発令されていた4月から5月にかけて幅広い産業でビジネス活動が低下した。鉱工業生産指数をみると、2020年1月に99.8だった生産指数は4カ月連続で低下し、同年5月に78.7まで落ち込んだ。生産指数が80.0を下回るのは2009年2-3月以来だった。
  • 第三次産業活動指数をみると、2020年1月に101.9だったサービス業全体の指数は、同年5月に86.4まで落ち込んだ。5月の指数は、比較可能な2008年1月以降で最低だった。

鉱工業生産指数の推移

  1. 〔注〕

    全体およびウェイトの大きな上位5業種を表示。

  2. 〔出所〕

    「鉱工業生産指数」(経済産業省)から作成

第三次産業活動指数の推移


  1. 〔注〕

    全体およびウェイトの大きな上位6業種を表示。

  2. 〔出所〕

    「第3次産業活動指数」(経済産業省)から作成

国内の大半の企業に負の影響も、企業はデジタル関連の投資を継続

  • 新型コロナは、国内の多くの事業者の事業展開に影響を及ぼしている。法人企業景気予測調査によると、企業の景況判断は2020年第2四半期に大きく落ち込んだ。第3四半期以降の景況判断をみると、いずれの企業規模の判断も上向いた。
  • 設備投資全体では投資額が減少する中、新型コロナで更に需要が高まるデジタル分野への投資は増加が期待される。日本銀行の地域経済報告によると、多くの地域で5G関連や自動化、省力化のほか、オンラインショッピングやテレワークなどの需要は継続しており、デジタル化に伴う投資の拡大の計画が報告されている。

企業の景況判断

  1. (注)

    ①%ポイントは、前四半期と比較して回答企業の景況判断の「上昇」をプラス、「下降」をマイナスとして算出。②2020年第4四半期の景況判断は予測。

  2. (出所)

    「法人企業景気予測調査」(内閣府・財務省)から作成

デジタル関連投資の例

デジタル関連投資の例
地域 業種 企業などの声
北海道 建設 慢性的な人材不足の解消に向け、ICT関連投資を継続するほか、今後はテレワークの本格導入に向け関連投資も積極化する。
東北 小売 コロナ禍のもとで店舗設備を削減する一方、eコマースへのニーズの高まりを受けてデジタル関連投資を強化するなど、投資計画の見直しを進めている。
北陸 繊維 収益環境が厳しくなった今だからこそ、検査工程の自動化や間接部門へのシステム導入など積極的な省力化投資で生産性向上を図っていく方針。
関東甲信越 輸送用機械 収益の悪化を受けて、今年度の投資額を当初計画の半分に絞り込んだ。とはいえ、競争力維持のためには新たな技術に対応した製品の開発が不可欠なことから、研究開発投資は手を緩めずに行う方針。
東海 生産用機械 手元資金の確保を優先するために設備投資の案件を絞り込み、前年対比で減額することとした。ただし、5G関連やAI活用のための生産用機械に関する研究開発投資はこれまで通りに実施する。
近畿 化学、電気機械 中長期的に市場の拡大が見込まれる成長分野への設備投資や研究開発投資は引き続き計画通り進めている。
中国 情報通信 中長期的にクラウドサービスの拡大が進む中で、今後もテレワークの普及などを背景に一段とデータ通信量が増加することが見込まれる。このため、当社ではデータセンターの増設を進めている。
四国 宿泊 新型コロナウイルス感染対策として、レストランや浴場における混雑具合をAIで計測し、宿泊者に情報提供するシステムを導入した。
九州・沖縄 はん用機械 先行き不透明感は高まっているが、5G関連需要の好調が続いていることを踏まえ、現時点では設備投資計画の見直しは考えていない。
  • ヒトとの接触機会を減らすために様々な形でデジタル化が進められる中で、世界的に在宅によるテレワークが注目を集めた。東京商工会議所が実施したアンケート調査をみると、2020年3月時点でテレワークを実施していた企業は全体の26.0%にとどまっていたが、同年5~6月の調査では同回答率が67.3%と、40%以上増加した。
  • 今後もテレワークの継続的な運用が見込まれる一方で、その持続的な運用には課題を伴う。ワークマネジメント(仕事の管理)のためのプラットフォームを提供するAsanaのように、リモートワークの課題解決をとおした外資系企業のビジネス展開が期待される。

在宅勤務の実施率の推移

  1. 〔出所〕

    「「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」調査結果」(東京商工会議所)から作成

テレワーク実施にかかる課題

テレワーク実施にかかる課題
課題 概要
インフラ環境整備 東京商工会議所のアンケート調査によると、テレワークを実施した企業(732社)の半分以上が、社員がテレワークを実施するための「ネットワーク環境の整備」(全体の56.7%)や、「PC・スマホ等機器の確保」(同55.9%)を課題とする。
社内コミュニケーション 東京商工会議所のアンケート調査によると、テレワークを実施した企業(732社)の55.5%が「社内のコミュニケーション」をテレワークの課題として挙げる。また、パーソル総合研究所が2020年5~6月にテレワーク実施者(500名)を対象に行ったアンケート調査でも、最も多い32.2%が「非対面のやり取りは相手の気持ちがわかりにくく不安」とコミュニケーションにおける懸念を課題として挙げる。
業務の進捗管理 パーソル総合研究所が2019年12月以前からテレワークを行う部下を管理する管理職700名を対象に行ったアンケート調査によると、回答者のうち46.3%が「業務の進捗状況がわかりにくく、不安に思うことがある」と回答した。同社が2020年5~6月に実施したテレワーク実施者(500名)へのアンケート調査でも、2番目に多い31.4%が「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安」と回答した。
書類の確認や押印対応 アドビ社の調査によると、テレワークを経験したビジネスパーソン(500名)のうち、紙書類の確認や押印などのために出社をした回答者は64.2%に上った。東京商工会議所のアンケート調査によると、テレワークを実施した企業(732社)のうち、49.9%が「書類への押印対応」を課題に挙げた。特に、同回答率は2020年4月以前からテレワークを実施している企業で高い。
セキュリティ確保 東京商工会議所のアンケート調査では全体(732社)の50.9%が、大阪商工会議所のアンケート調査では実施中小企業(210社)の50.5%がセキュリティの不安を課題に挙げる。

新型コロナにより消費のデジタル化が進展

  • 新型コロナや政府による感染拡大防止策の導入により、国内の消費意欲は大幅に減少した。2020年4月の消費者態度指数は21.6で、比較可能な1982年6月以降で最低となった。消費者態度指数を構成する4項目全てで指数が過去最低となった。5月以降は指数の回復がみられるものの、感染者数の増加により回復の鈍化などがみられる。

消費者態度指数の推移

  1. 〔出所〕

    「消費動向調査」(内閣府)から作成

  • 新型コロナの感染拡大によって外出を控える消費者が増加したことにより、オンラインでのモノおよびコトの消費が世界的に急増した。家計の消費額をみると、オンラインを介した支出の増加が窺える。
  • 国内のアンケート調査によると、非接触での決済を可能とするキャッシュレス決済の利用が拡大している。政府は、2019年までに26.8%まで増加していたキャッシュレス決済利用率(金額ベース)を2025年までに4割程度、将来的には8割までの引き上げを目指す。

インターネットを利用した支出額の推移

  1. 〔出所〕

    「家計消費状況調査」(総務省)から作成

国内キャッシュレス決済の内訳の推移

国内キャッシュレス決済の内訳の推移
2016年 2017年 2018年 2019年
クレジットカード 18.0 19.2 21.9 24.0
デビットカード 0.3 0.4 0.4 0.6
電子マネー 1.7 1.7 1.8 1.9
QRコード - - 0.1 0.3
20.0 21.3 24.1 26.8

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