-
(1)
インバウンド需要の拡大に向けた政府の取り組み
-
(2)
持続可能な観光と地方への観光客誘致
-
(3)
観光DX、ICT活用による観光地・観光産業の付加価値事業
観光
全体概況
インバウンド消費額の増加と共に、勢いを増す日本の観光市場
新型コロナウイルスの収束後、訪日外国人客数は急増し、インバウンド需要が高まっています。日本と各国間の航空便数が増加したことなどを背景に、2024年の1月-4月の訪日外国人客数は累計1,000万人に達しました。訪日外国人の居住国・地域別に見ると、全ての国・地域において2023年を上回る水準であり、中国・タイ・ロシア・北欧を除く全ての国・地域において、コロナ禍前の2019年を上回る水準となっています1。さらに、2023年のインバウンド消費額は、政府の目標を上回る350.5億米ドル*(5.3兆円)に達しており2、急速に日本の観光産業を拡大させています。
観光産業は、運輸、宿泊、観光施設・飲食、イベント、旅行業など、関係する業界が幅広く存在しますが、産業全体を通して、インバウンド需要が急拡大しており、事業参入のポテンシャルが高まっています。インバウンド消費額は、訪日外国人客数と1人当たり旅行支出に分解できます。2024年の1月-4月の訪日外国人客数は、累計で1,000万人(前年同期間比72.1%増、2019年同期間比5.7%増)を突破し、コロナ禍前の水準を上回る勢いで急速に増加しています(図表1)。
図表1「訪日外国人数の推移(2017年、2018年、2019年、2023年、2024年月次)」
〔出所〕日本政府観光局のデータを基にジェトロ作成 3
加えて、訪日外国人客1人当たりの旅行支出も増加しています。2023年の訪日外国人1人当たりの旅行支出は1,407.1米ドル*(21.3万円)(2019年比34.2%増)と推計されています。費目別では特に、宿泊費と食費への支出が増加しています4。
2023年の訪日外国人客による消費額はコロナ禍以前の2019年よりも10%多い350.5億米ドル*(5.3兆円)であり、過去最高額を更新しています(図表2)。
図表2「訪日外国人による旅行消費額の推移(2014年-2023年)」
〔出所〕観光庁のデータを基にジェトロ作成5
さらに、このインバウンド消費額は、日本の主要な輸出産業と同等の規模にあたります。2022年の輸出額と比較すると、858.8億米ドル*(13兆円)の自動車、376.5億米ドル*(5.7兆円)の半導体等電子部品に次ぐ規模であり、310.5億米ドル*(4.7兆円)の鉄鋼、270.8億米ドル*(4.1兆円)の半導体等製造装置などを上回ります(図表3)。よって、多額のインバウンド消費を生み出す日本の観光産業は、日本経済を牽引する重要な産業の1つと見なすことができます。
図表3「訪日外国人による旅行消費額(2023年)および主要品目別輸出額(上位6項目)の比較(2022年)」
〔出所〕観光庁・財務省のデータを基にジェトロ作成6
2023年に閣議決定された「第4次観光立国推進基本計画」においては、訪日外国人客1人当たりの支出を2025年までに1,321.2米ドル*(20万円)、訪日外国人旅行客による消費額を早期に330.3億米ドル*(5.0兆円)とする目標を立てていましたが7、2023年3月末時点で目標は前倒しで達成されました。政府の想定を上回るスピードで観光需要が急速に回復している一方で、人手不足は顕著となっています。高齢化や人口減少等の社会課題に加え、宿泊業等においてコロナ禍で離職した就業者が戻っていないこともあり8、引き続き労働力不足が課題になると考えられます。人材不足解消に向け、政府が宿泊事業者のDX化支援などに取り組む中9、外国企業の参入も期待されます。
日本のインバウンド需要が増加している背景には、世界からも注目を集めている豊富な観光資源と整備された環境があります。米国の大手旅行雑誌コンデナストトラベラーが2023年に発表した読者投票ランキング「リーダーズ・チョイス・アワード」の「世界で最も魅力的な国」において日本は1位に、大都市部門でも東京が2位に選ばれました10(図表4)。さらに、世界経済フォーラムによる2024年の「旅行・観光競争力調査」においても、充実した公共交通機関をはじめとしたインフラ整備、医療へのアクセシビリティといった健康・衛生、無形文化遺産等の豊富な文化資源が高く評価され、世界3位・アジア太平洋地域1位に選出されました11。
図表4「コンデナストトラベラー Reader’s Choice Award 世界で最も魅力的な旅行先上位10カ国(2023年)」
順位 | 国名 |
---|---|
1 | 日本 |
2 | イタリア |
3 | ギリシャ |
4 | アイルランド |
5 | ニュージーランド |
6 | スペイン |
7 | ポルトガル |
8 | イスラエル |
9 | ノルウェー |
10 | スイス |
世界的な指標においても観光資源の魅力が取り上げられるなど、世界からの関心も高まる中、国内の主要産業の1つとして、想定以上の勢いで発展を見せる観光産業には、さまざまな事業機会が見込まれます。
-
*
日銀換算レート1ドル150.07円で計算(2024年3月1日時点)
脚注
- 日本政府観光局 「訪日外客数(2024 年 4 月推計値)」 (pp.4-5, 7-11)
- 観光庁 「『訪日外国人消費動向調査』 2023年暦年 調査結果(確報)の概要」 (p.5)
- 前掲注1(pp.1-3, 6)
- 前掲注2 (p.2)
- 観光庁 「『訪日外国人消費動向調査』 2023年暦年 調査結果(確報)の概要」 (p.5)
- 財務省 「貿易統計 品目別輸出額の推移」
- 観光庁 「観光立国推進基本計画」
- 日本総合研究所「観光業の人手不足の現状と課題」 (p.3)
- 観光庁「観光地・観光産業における人材不足対策事業」
- コンデナストトラベラー 「Top Countries in the World: Readers’ Choice Awards 2023」
- 世界経済フォーラム 「Travel & Tourism Development Index 2024(旅行・観光競争力調査)」 (pp.11, 35)
- コンデナストトラベラー 「Top Countries in the World: Readers’ Choice Awards 2023」、日本政府観光局 「米旅行雑誌の『世界で最も魅力的な国ランキング』で日本が第 1 位に選出!」
-
政府の取り組み
インバウンド需要の拡大と観光産業のさらなる発展に向けて、デジタル化や持続可能な観光、地方観光の推進が進む
-
魅力的な注目市場分野
市場規模が大きく、成長率が高い、観光産業における魅力的な3つの市場を取り上げます。
-
(1)
トラベルテック:DXと地方への観光の推進を背景に関心が拡大
-
(2)
金融サービス:訪日外国人観光客向けのキャッシュレス決済サービスを中心に需要が増加
-
(3)
ホテル市場:高級ホテルを中心に海外企業が続々と進出
-
観光レポート
ウェブページでご紹介している内容を1つにまとめた資料を無料でダウンロードできます。フォームにご入力いただくだけで、日本市場における有望産業情報を手に入れることができます。ぜひダウンロードいただき、みなさまのビジネスの成功に役立ててください。
メールマガジン登録
このメールニュースでは、最新の投資環境情報やジェトロが支援した外国・外資系企業の動向等を紹介します。内容は自治体によるセミナー、インセンティブ、進出事例、規制緩和トピック、産業情報などです。
お問い合わせ
フォームでのお問い合わせ
ジェトロはみなさまの日本進出・日本国内での事業拡大を全力でサポートします。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせフォームお電話でのお問い合わせ
-
- 拠点設立・事業拡大のご相談:
- 03-3582-4684
-
- 自治体向けサポート:
- 03-3582-5234
-
- その他の対日投資に関するお問い合わせ:
- 03-3582-5571
受付時間
平日9時00分~12時00分/13時00分~17時00分
(土日、祝祭日・年末年始を除く)