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EU、ETS市場安定化リザーブ見直しで政治合意、将来の排出枠不足に備え
(EU)
ブリュッセル発
2026年11月05日
EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は10月20日、EU排出量取引制度(EU ETS、注)の市場安定化リザーブ(MSR)に関する改正案について暫定合意に達した(プレスリリース
)。MSRは、EU ETSにおいて排出枠が売買される炭素市場(排出量取引市場)に流通する排出枠の量を調整することで、排出枠価格の急激な変動を抑制する仕組みだ。今回のMSR改正案は、将来的な供給逼迫に備えて市場安定化のためのバッファー機能を強化するもので、EU ETSの安定性と予見可能性を高めるとともに、乱高下するエネルギー価格への対応や産業競争力の保護を図るものだ。
MSRは、EU ETSの第3フェーズ(2013~2020年)にかけて排出枠の供給過剰により、炭素市場で排出枠価格が長期間低迷し、企業の排出削減に向けた投資を促すというEU ETS本来の機能が十分に働かなくなったことを受け、2019年に導入された。市場参加者が保有する排出枠の総量(TNAC)を指標として、市場に流通する排出枠が過剰な場合にはオークション予定量の一部をMSRに取り置き、不足している場合にはMSRから市場へ供給する仕組みだ。現行制度では、MSRで保有する排出枠のうち4億枠を超える部分は失効することになっており、2024年末までに累計32億枠が失効した。
一方、近年はEU ETSの排出上限の段階的な引き下げに伴い、将来的な排出枠の供給逼迫や価格上昇への懸念が高まっていた。排出枠価格の上昇はエネルギー価格や産業競争力にも影響するため、一部加盟国からEU ETSの見直しを求める声が強まっていた(2026年3月26日記事参照)。こうした政策環境の変化を受け、欧州委員会は2026年4月、4億枠超の排出枠の失効を停止し、将来の供給逼迫時に活用できる排出枠をMSR内に維持する改正案を提案した(2026年4月9日記事参照)。
今回の合意案では、排出枠の失効を全面的に停止する欧州委案は採用されず、失効制度を維持した上で、失効対象となる基準値を現行の4億枠から7億枠へ引き上げる。これは、欧州議会が求めた6億5,000万枠と、EU理事会が主張した8億枠の妥協案だ。さらに、7月に欧州委が提案したEU ETSの包括見直し(2026年7月29日記事参照)の中で、失効基準値の段階的な引き下げについても検討することでも合意した。
法案は今後、EU理事会と欧州議会による正式な採択を経て施行される見込みだ。
(注)詳細は、調査レポート「EU ETSの改正およびEU ETS II創設等に関する調査報告書(2024年5月)」を参照。
(吉沼啓介)
(EU)
ビジネス短信 d14bc5666d346c60





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