米USTRがWTO閣僚会合に関する声明発表、限られた成果に失望も、WTO改革には引き続き関与
(米国、日本、オーストラリア、シンガポール)
ニューヨーク発
2026年04月01日
米国通商代表部(USTR)は3月30日、カメルーンで3月26~30日に開催されたWTO第14回閣僚会合(MC14)に関する声明を発表
した。MC14ではWTO改革が重要な課題と目され(注1)、USTRは会合に先立つ2025年12月と2026年3月の2回にわたり改革すべきアジェンダなどを発表していた(2025年12月18日記事、2026年3月25日記事参照)。しかし、MC14では閣僚宣言が採択に至らなかったほか、1998年以降継続して延長されてきた「電子的送信に対する関税不賦課モラトリアム」の延長にも合意できず(注2)、同モラトリアムは2026年3月26日に失効した(2026年3月31日記事参照)。
MC14についてUSTRのジェミソン・グリア代表は「失望している」とし、「今週の会議は、WTOが今後の世界の貿易政策において果たす役割が限定的であることを裏付けた」と評価した。特に、米国が恒久化を提案していた関税不賦課モラトリアムについては「2年以上の延長すら合意に至らなかったことは、とりわけ悔やまれる」とし、今後WTOの場で同様のルール策定ができない場合には、「関心を持つ全てのパートナーとWTOの枠外で協力してこれを成し遂げる」と述べた。一方、USTR次席代表兼WTO大使のジョセフ・バールーン氏は「米国はWTOにおける改革やその他の重要な課題について主導的な役割を果たしてきており、今後もその姿勢を継続していく」と述べている。
MC14に関して、米国シンクタンクのピーターソン国際経済研究でシニア・フェローを務めるアラン・ウルフ氏(注3)は3月31日に発表した論考
で、閣僚宣言や関税不賦課モラトリアムなどの合意がまとめられなかった点から、会議を「失敗に終わった」と評価した。一方で、MC14は終着点ではなく、「合意に至らなかったからといっても、これまでの着実な進展を見落としてはならない」とした。特に、日本、オーストラリア、シンガポールが共同議長を務め、66の加盟国・地域が参加する「電子商取引に関する協定のための暫定的な措置(注4)」がMC14期間中に採択
されたことを、「中規模の国々がともに行動すれば、少なくとも相互間においては、貿易関係の未来を形作ることができる」と評価した。米国は同暫定協定への参加を見送ったが、同氏は「米国にとって電子商取引は極めて重要な市場」であり、暫定協定の内容を米国も履行すべきとの立場を示した。
MC14で合意が成立しなかった事項については、WTO一般理事会での採択に向け、議論や交渉が行われる。加盟国・地域間の価値観が多様化し、全会一致の原則に基づく合意形成の難しさがあらためてあらわになった今回会合を経て、米国をはじめとする各国・地域の動向や交渉の行方が次の焦点となる。
(注1)WTOにおけるルール形成の動向については、ジェトロ世界貿易投資報告(2025年度版)を参照。
(注2)ブラジルとトルコが合意しなかったため、措置は延長されなかった。なお、通商専門誌「インサイドUSトレード」(3月30日)によると、WTOのオコンジョ・イウェアラ事務局長は、モラトリアムは失効したものの、関税の導入には時間を要することから、それまでに加盟国・地域がモラトリアム措置再延長に合意すると見込んだ。また、グリア代表は、米国は主要な貿易相手国・地域のほぼ全てから、米国のデジタル送信(digital transmissions)に対して関税を課さない確約を得ていると表明している。こうしたことから、今回の失効による影響が短期間で生じる可能性は低いと予想されている。
(注3)WTO事務局次長、USTR次席代表などを歴任。
(注4)同措置は、電子的送信に対する関税不賦課の恒久化を含む、グローバルなデジタル貿易に関する幅広い領域における共通ルールを定めた「電子商取引に関する協定(以下、電子商取引協定)」のWTO協定への組み込みが実現するまでの間、電子商取引協定を有志国・地域の間で実施するもの。66のWTO加盟国・地域が参加する(米国は現時点で不参加)。
(滝本慎一郎)
(米国、日本、オーストラリア、シンガポール)
ビジネス短信 35b394d3b5d55109





閉じる