グリア米USTR代表が講演、製造業の米国内回帰のためUSMCA見直しなどを強調
(米国、カナダ、メキシコ、中国)
ニューヨーク発
2026年04月14日
米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は4月7日、米シンクタンクのハドソン研究所で今後の通商政策をテーマに講演
した。
グリア代表はトランプ政権の通商政策について、規制緩和やエネルギー政策、税制改革などと並び、米国の製造業を活性化するための手段だと述べ、製造業の米国内回帰を重要視する同政権の立場をあらためて強調した(注1)。また、米国が貿易赤字の急拡大という課題に直面していると指摘し、それが製造業の生産や雇用の国内回帰を図る上での構造的な問題との認識を示した。特に対中貿易赤字の大きさを問題視し、2025年は多くの中国製品に対し高い関税率を維持した結果、財の貿易赤字を前年から1,300億ドル削減できたと主張した。一方で、中国との対立を求めているわけではない点を強調し、現在の米中関係は「安定している」と評価した。
5月に予定されている米中首脳会談については、安定的な関係性を維持しつつ、中国からの重要鉱物の供給を継続して確保したいと述べた。3月にスコット・ベッセント財務長官とともに中国の何立峰副首相と会談した際は(2026年3月13日記事参照)、重要鉱物の安定供給の在り方について協議したことを明らかにした。また、中国の重要鉱物の多くが日本など第三国で加工・製造されて米国に輸入されることから、中国による第三国への輸出管理が米国のサプライチェーンに及ぼす影響についても協議しているとした(注2)。これらの課題は閣僚・省庁間レベルで解決できれば理想的だとしつつ、ドナルド・トランプ大統領自身も首脳会談で、重要鉱物へのアクセス確保を引き続き習近平国家主席に求めるだろうと述べた。このほか、重要鉱物の安定供給について、トランプ氏の指示の下、米国やパートナー諸国での新規生産を拡大していく方針を示した。同時に、中国などによるダンピングを防ぐメカニズムの構築に取り組むとした(注3)。過去に中国が重要鉱物の輸出規制を実施した際に、日本や米国が生産を拡大したタイミングで中国が市場価格を下回るレアアースを大量に供給し、事業の継続が不可能になったことを挙げ、構築の重要性を示した。なお、中国とは、経済安全保障上重要でない品目の米中間での貿易の在り方を政府間で議論する「貿易委員会(board of trade)」の設置についても議論していると述べた。
7月に見直しが予定される米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)については、米国含む北米全体で自動車生産を促進したことなどを成果として挙げた。一方で、自動車や鉄鋼、アルミニウムのカナダとメキシコからの輸入量が協定締結後に急増した点を挙げ、両国との貿易収支を均衡させるというトランプ氏の当初の意図どおりに機能しているとは言いがたいとし、協定内容を修正する必要性を強調した。また、メキシコおよびカナダとの貿易の状況や両国の労働事情、貿易赤字が生じる要因は異なることから、見直しに向けた両国との協議は個別に実施する必要があると、かねての主張をあらためて述べた。なお、USTRは、メキシコとの見直し協議を3月に開始したが(2026年3月19日記事参照)、カナダとの交渉はまだ開始していない。グリア氏は、「今後数カ月、おそらく5月頃から始まる」との見通しを述べた。
(注1)グリア代表は2025年7月にも、「堅調な製造業のない国は、国とは呼べない」とし、自身のUSTR代表としての目標として貿易赤字の解消や米国への製造業回帰を掲げた(2025年7月18日記事参照)。また、ベッセント財務長官は2025年4月、財務省の発表の中で「トランプ政権の経済政策の3つの柱の『関税、減税、規制緩和』は独立した政策ではない。これらは経済成長と米国内製造業の活性化を推進するエンジンの相互に連携した要素だ」とした(2025年5月1日記事参照)。
(注2)USTRは3月に発表した2026年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」の中で、中国が重要鉱物の輸出管理強化を武器化していると主張した(2026年4月2日記事参照)。
(注3)トランプ大統領は1月、1962年通商拡大法232条に基づき、重要鉱物の輸入量調整に向け、各国・地域と交渉するよう商務長官とUSTR代表に指示した(2026年1月16日記事参照)。2月に開催した重要鉱物閣僚会合では、重要鉱物サプライチェーンを強化する取り組みを推進する「FORGE」の創設の発表や、公正な市場価値を反映した市場形成を目指す「重要鉱物特恵貿易圏」の創設の提案があった(2026年2月5日記事参照)。また、USTRは同月下旬、重要鉱物に関する複数国間協定の設計やサプライチェーンの強靭(きょうじん)化に向けたパブリックコメントの募集を開始した(2026年3月2日記事参照)。
(滝本慎一郎)
(米国、カナダ、メキシコ、中国)
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