米USTR、メキシコとのUSMCA見直し協議開始、非市場経済国の参入制限と原産地規則の強化を議論
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2026年03月19日
米国通商代表部(USTR)は3月18日、ジェミソン・グリア代表とメキシコのマルセロ・エブラル経済相が首都ワシントンで会談し、7月1日に予定されている米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しに向け、初の2国間技術協議を行ったと発表
した。両閣僚は3月5日、2国間協議を3月16日の週から開始すると発表していた。
2020年7月に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後の見直しで3カ国が延長に合意すれば、合意時点から16年間延長する。従って、2026年7月に初めての見直しを迎える(注1)。
USTRの発表によれば、両国は今回の協議で、北米サプライチェーンへの非市場経済国の参入を制限しつつ、米国およびメキシコの製造業における雇用を増加させるための選択肢を検討した。その上で、具体的な方針として、経済安全保障、原産地規則、補完的貿易措置(注2)における協力強化などについて議論した。また、グリア代表とエブラル経済相は、7月1日の見直しに向け、定期的に技術協議を行う枠組みを確立するよう両国のスタッフに指示した。
米国が見直しにおいて提案する具体的な内容は依然として不明ながらも、今回議論された経済安全保障の分野では、対米外国投資委員会(CFIUS)と同様の仕組みをメキシコに創設するよう米国が要請する可能性があるとみられている。また原産地規則の強化においては、域内原産割合(RVC)の引き上げや、米国内で生産や加工をしなければならない割合の創設、中国製部品の利用制限などが提案されるのではないかと指摘されている。これらは全て、今回の会合で取り上げられた「北米サプライチェーンへの非市場経済国の参入制限」に資する措置となる。
なお、USMCAの延長には3カ国での合意が必要となるが、カナダとの協議開始はまだ発表されていない。首都ワシントンの通商弁護士は、米国とカナダの関係は現在良好ではないとし、これがUSMCA見直し協議に影響する可能性があると指摘している(注3)。カナダのマーク・カーニー首相は2026年1月に、中国との新たな戦略的パートナーシップを発表するなど、米国と競争関係にある中国との関係強化を図っている(2026年1月20日記事参照)。
自動車関連企業を中心に、USMCAの特恵関税の利用を前提としてサプライチェーンを構築している日本企業は少なくない。USTRは、「USMCAの欠陥が解決可能な場合にのみ延長を勧告する」との立場をとっていることから(2025年12月19日記事参照)、今後の見直し協議の行方を注視する必要がある。米国が提案するとみられる原産地規則強化の詳細や見直しの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。
(注1)見直しで延長に合意できなかった場合、それ以降毎年、見直しを継続する。見直しで合意できれば、その時点から16年間延長する。合意できない状態が続けば、USMCAは条文に従い2036年に失効する。
(注2)トランプ政権が結んだ相互貿易協定において、補完的貿易措置は、米国が安全保障上の理由から、関税などの輸入制限措置を課す際に、相手国にも同等の措置を求める内容として位置づけている。こうした米国の方針は、2026年2月6日付地域・分析レポート参照。
(注3)ジェトロによるインタビュー(2026年3月10日)。
(赤平大寿)
(米国、メキシコ、カナダ)
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