トランプ米政権、欧米製薬大手9社と薬価引き下げや関税減免で合意

(米国、英国、ドイツ、スイス、フランス、日本)

ニューヨーク発

2025年12月23日

米国のトランプ政権は12月19日、欧米の製薬大手9社と米国での薬価引き下げなどで合意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回合意が成立した製薬会社は、米国のアムジェン、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMS)、ドイツのベーリンガーインゲルハイム、スイスのロシュ傘下で米国のジェネンテック、米国のギリアド・サイエンシズ、英国のグラクソ・スミスクライン(GSK)、ドイツのメルク、スイスのノバルティス、フランスのサノフィの9社。

トランプ政権は9月以降に米国のファイザー(2025年10月2日記事参照)、英国のアストラゼネカ(2025年10月16日記事参照)、ドイツのメルク傘下で米国のEMDセローノ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、米国のイーライリリー、デンマークのノボノルディスク(2025年11月10日記事参照)と同様の合意を発表しており、これまでに合意が成立した製薬会社は計14社となった。トランプ政権は7月に製薬大手17社に薬価の引き下げを求める書簡を送付しており(2025年8月6日記事参照)、このうちまだ合意が成立していないのは、米国のジョンソン・エンド・ジョンソンなど3社となる。

ホワイトハウスのファクトシートによれば、9社は薬価に関して、(1)米国の低所得者向け公的医療保険「メディケイド」に他の先進国の薬価水準を上回らない「最恵国待遇(MFN)薬価」で提供、(2)新薬についてMFN薬価を保証、(3)特定のHIV、2型糖尿病、C型肝炎などの治療薬について、トランプ政権が設立予定の医薬品直接販売プラットフォーム「TrumpRx」を通じた販売での薬価引き下げ、などで合意した。さらに、9社が既存製品の海外収益の一部を米国へ還流することや、9社が米国での製薬工場建設に計1,500億ドル規模の投資を計画していることも記載された。また9社はそれぞれ、今回の合意に基づき、各社の医薬品が今後3年間にわたり米国の関税措置の免除対象になるとともに、将来の価格規制の対象外になるなどと発表している。

関税の免除措置は、米国の1962年通商拡大法232条に基づく追加関税措置を指しているとみられる。米国商務省は4月から、医薬品に関する232条調査を開始している(2025年4月15日記事参照)。調査結果や措置内容は公表されていないが、ドナルド・トランプ大統領は9月にSNS投稿で「100%の関税を課す」との考えも示していた。

なお、232条医薬品関税に関しては、日本は米国と7月に、「米国が日本製の医薬品に対して、他国に適用する税率を超えない関税率を適用する」ことで合意している(2025年9月9日記事参照)。米国は12月1日に英国と薬価の設定に関する基本合意の成立を発表し、英国製の医薬品に対して、232条関税を免除することを示していることから(2025年12月9日記事参照)、最恵国待遇を保証した日米合意に基づけば、日本に対する232条医薬品関税についても、同様に免除の対象になるとみられる。

(葛西泰介)

(米国、英国、ドイツ、スイス、フランス、日本)

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