トランプ米政権とイーライリリー、ノボノルディスクが薬価引き下げや関税減免で合意

(米国、デンマーク)

ニューヨーク発

2025年11月10日

米国トランプ政権は11月6日、米国製薬大手イーライリリーおよびデンマーク同業ノボノルディスクと、米国での薬価引き下げなどで合意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国政府は9月に米国のファイザーと(2025年10月2日記事参照)、10月に英国のアストラゼネカと(2025年10月16日記事参照)、同様の合意をそれぞれ発表しており、合意が成立した製薬会社は計4社となった。

ホワイトハウスのファクトシートによれば、両社は薬価に関して、(1)米国の低所得者向け公的医療保険「メディケイド」に他の先進国の薬価水準を上回らない「最恵国待遇(MFN)薬価」で提供、(2)今後米国で販売する新薬についてMFN薬価を保証、(3)両社の特定の糖尿病、心臓病、肥満症などの治療薬について、トランプ政権が設立予定の医薬品直接販売プラットフォーム「TrumpRx」を通じた販売での薬価引き下げ、などで合意した。さらに、両社が既存製品の海外収益の一部を米国へ還流することや、両社が米国での製薬工場建設に数百億ドル規模の投資計画を発表していることも記載された。

一方で、米国政府は両社に対して、米国の高齢者や障害者向け公的医療保険「メディケア」の適用対象に、肥満症治療薬のイーライリリーの「ゼップバウンド」およびノボノルディスクの「ウゴービ」を新規に追加する。

さらに、イーライリリーは同日のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、今回の合意に基づき、同社が「3年間の米国関税の救済措置の対象となるとともに、将来の価格規制の対象外となる」と発表した。ノボノルディスクも同日のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで同様に、同社が「3年間の関税の免除を受ける見込みだ」と発表した。これらの米国の関税措置の取り扱いは、ホワイトハウスのファクトシートには記載がなかった。

これらの関税の軽減措置は、米国の1962年通商拡大法232条に基づく追加関税措置を指しているとみられる。米国政府は2025年4月から、医薬品に関する232条調査を開始している(2025年4月15日記事参照)。調査結果や措置内容は現時点で公表されていないが、ドナルド・トランプ大統領は9月にSNSへの投稿で「米国に医薬品製造工場を建設中の企業を除き、全てのブランド医薬品、特許医薬品に対し、100%の関税を課す」との意向を示していた。

(葛西泰介)

(米国、デンマーク)

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