日米政府、通商合意の共同声明発表、日本製医薬品・半導体に対する米国の関税措置の方針明記
(日本、米国)
ニューヨーク発
2025年09月09日
日米両政府は9月4日、7月の日米合意に関する了解覚書に署名するとともに、共同声明を発出した。このうち共同声明
では、日本による米国産品の購入拡大の対象分野や金額規模、また、米国による日本製の医薬品、半導体・半導体製造装置、航空機・航空機部品に対する関税措置の方針を記載した。米国のドナルド・トランプ大統領が9月4日に発令した米国の日本産品に対する関税措置の修正に関する大統領令に続き(2025年9月5日記事参照)、日米合意の具体的な内容を明文化した。
共同声明の主な内容は次のとおり。
- 日本は、米国産の農産品(バイオエタノール、大豆、トウモロコシ、肥料など)、その他の米国製品を年間80億ドル規模で追加購入する。また、多様な米国の工業製品・消費財の購入を拡大する。
- 日本は、100機の米国ボーイング製の航空機を購入する。
- 日本は、ミニマムアクセス(MA)制度の枠内で米国産コメの調達を75%増加させる。
- 日本は、液化天然ガス(LNG)を含む米国産のエネルギーについて、米アラスカ州でのLNGのオフテイク契約を追求しつつ、年間70億ドル規模で追加購入する。
- 日本は、防衛力整備計画に基づく米国製の防衛装備品、半導体の年間調達額を数十億ドル規模で増加させる。
- 日本は、米国で製造され、米国で安全が認証された乗用車について、日本国内での販売のため、追加試験なしで受け入れる。また、米国車に対してクリーンエネルギー自動車導入促進補助金を提供する。
- 米国は、1962年通商拡大法第232条に基づき、医薬品や半導体(半導体製造装置を含む)に対して課されるいかなる関税についても、日本の製品に対して、他国の製品に適用される税率を超えない関税率を適用する。また、日本製の航空機・航空機部品にいかなる関税も課さない(注1)。
なお、米国政府は9月5日、日米合意の履行に関するファクトシートを公表した。同ファクトシートでは、(1)米国の日本産品に対する関税措置の修正に関する大統領令、(2)日本の5,500億ドルの対米投資の対象分野や選定方法などを記載した了解覚書(注2)、(3)今回の共同声明の3文書の一連の内容をまとめた。また、日米両国が第三国の非市場的政策に対処するための補完的措置を通じて、サプライチェーンとイノベーションを強化するとともに、関税回避対策、投資規制や輸出管理の分野で協力を推進し、経済・国家安全保障面での連携強化に取り組むことも記載した。
(注1)米国では、医薬品、半導体、航空機を含めた9分野で、追加関税など輸入制限措置の発動に先立つ232条に基づく調査が行われている(2025年8月22日記事参照)。なお、米国とEUの通商合意では、米国がEU製の医薬品、半導体に関して一般関税率(MFN税率)と232条関税率の合計で15%を超えて適用しないことや、航空機・航空機部品に関してMFN税率のみを適用することなどを共同声明で規定している(2025年8月22日記事参照)。
(注2)了解覚書については、9月8日(米国時間)時点で日米両政府ともに、政府HPなどには掲載していない。
(葛西泰介)
(日本、米国)
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