トランプ米大統領、ファイザーと薬価引き下げで合意、232条関税の3年間免除も約束

(米国)

ニューヨーク発

2025年10月02日

米国のドナルド・トランプ大統領は9月30日、米国製薬大手ファイザーが米国で販売する医薬品について、価格を他の先進国で販売されている最も低い価格〔最恵国(MFN)待遇価格〕とすることなどで同社と合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたと発表した。トランプ氏は5月に、医薬品価格の引き下げを目的とした大統領令を発表し、7月には主要な製薬企業に対して、医薬品価格の引き下げのために取るべき措置を示した書簡を送付していた(2025年8月6日記事参照)。

ホワイトハウスが発表したファクトシートによると、今回の合意によって、ファイザーは米国で販売する全ての革新的新薬にMFN価格を保証する。また、同社は、既存の医薬品の海外収益の増加分を米国へ還流することや、米国の患者へ医薬品を直接販売する際に大幅に割引くことが義務付けられた。

ファイザーも同日、プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、7月の大統領の書簡に対応するため、米国市民が他の先進国と同等の医薬品価格を享受できるようにし、新薬を他の先進国と同水準の価格設定にするほか、米国の患者が割引価格で同社医薬品を直接購入できるプラットフォーム「TrumpRx.gov」に参加すると発表した。同社の多くの医薬品は最大で85%、平均で50%割引いた価格で提供するという。

ファイザーはまた、米国内での製造への追加投資を条件に、同社の医薬品が3年間、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象から除外されることで米政府と合意したことも明かした。232条は、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合に、追加関税などの措置を発動する権限を大統領に認めている。商務省産業安全保障局(BIS)は、232条に基づく医薬品の輸入に関する調査を4月に始めている(注)。調査結果はまだ公表されていないが、トランプ氏は9月にSNSへの投稿で「米国に医薬品製造工場を建設中の企業を除き、全てのブランド医薬品、特許医薬品に対し、100%の関税を課す」意向を示していた。

なお、米政府高官によると、ファイザー以外にも、「既に合意に至った複数の企業、現在交渉中の企業、対応待ちの待機リストにある企業」が存在するという。そのほか、米通商代表部(USTR)と商務省は「医薬品価格を抑制するために他国が用いる不公正かつ差別的な慣行に対処するため、積極的に他国と協議している」「今後数カ月で締結される協定の一部には、現地の処方薬価格に影響を与える条項が含まれる見込み」とも明らかにしている(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」9月30日)。また、ファイザーとの合意のように、他の主要製薬企業とも今後合意できれば、232条に基づく医薬品への追加関税措置は発動されない可能性もあるという(政治専門紙「ポリティコ」10月1日)。

(注)BISは、個人用防護具(PPE)・医療機器などに対する232条調査も9月から始めている(2025年9月26日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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