トランプ米大統領、アストラゼネカと薬価引き下げで合意、ファイザーに続き2社目
(米国、英国)
ニューヨーク発
2025年10月16日
米国のドナルド・トランプ大統領は10月10日、英国の製薬大手アストラゼネカが米国で販売する医薬品について、価格を他の先進国で販売されている最も低い価格〔最恵国(MFN)待遇価格〕とすることなどで同社と合意したと発表した。トランプ氏は9月末にファイザーとも同様の合意を発表しており(2025年10月2日記事参照)、アストラゼネカで2社目となる。
ホワイトハウスの発表によると、今回の合意により、アストラゼネカは米国の患者への直接販売で、定価から大幅な割引価格での医薬品提供が義務付けられる。これにより、ぜんそくに苦しむ2,500万人や、米国で主要死因トップ10の1つの慢性閉塞性肺疾患(COPD)に苦しむ1,600万人の米国人が価格引き下げの恩恵を受けられる可能性があるという。
アストラゼネカも同じ10日、トランプ氏の医薬品コスト削減に関する要請の全てを実現するとのプレスリリースを発表した。トランプ氏は5月に医薬品価格引き下げを目的とした大統領令を発表し、7月には主要な製薬企業に対して、価格引き下げのために取るべき措置を示した書簡を送付していた(2025年8月6日記事参照)。プレスリリースによると、同社は定価から最大80%割引の直接消費者向け販売(DTC)を行うため、米国の患者が医薬品を直接購入できるプラットフォーム「TrumpRx.gov」に参加する。また、同社の医薬品が3年間、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象から除外されることで商務省と合意した。商務省産業安全保障局(BIS)は232条に基づく医薬品の輸入に関する調査を4月に始めていた(2025年4月15日記事参照)。
なお、同社は米国で販売する全医薬品を米国内で製造できるようにするため、今後5年間で米国で医薬品製造と研究開発に500億ドルを投資する。同社はバージニア州シャーロッツビルで製造施設を建設中で、3,600人の高度人材を雇用するという。テキサス州コッペルに新設・拡張した製造施設も今後、正式に稼働する。その他、2026年初めにメリーランド州ロックビルに細胞療法製造施設を開設し、同年末にマサチューセッツ州ケンブリッジに2つ目の研究開発センターを開設する予定となっている。
トランプ氏は10月1日から、米国で生産していない企業の医薬品に対して、232条に基づく追加関税を課すとSNSで述べていたが、このように製薬大手との交渉が進めば、232条関税は課さない可能性もあると報道されている。
(赤平大寿)
(米国、英国)
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