インドから米国への輸出、9月・10月は前年同月比で11.9%・8.6%の減少
(インド、米国)
ニューデリー発
2025年12月05日
インド商工省商業情報統計総局(DGCI)の公表データによると、2025年のインドから米国への輸出額は1月から8月にかけて前年同月比を上回る推移を続けていたが、9月は11.9%減、10月は8.6%減と減少に転じた(添付資料図参照)。他方、前月比でみると、10月のインドから米国への輸出額は63億690万ドルで9月の54億6,580万ドルより15.4%増加し、回復傾向もみられた。
米国のドナルド・トランプ大統領は2025年4月2日にすべての国を対象とした「相互関税」の導入を発表(2025年4月3日記事参照)した。その後7月30日に、8月1日からのインドに対する25%の関税適用を発表(2025年7月31日記事参照)し、8月6日にはインドのロシア産石油購入に対する制裁措置として、8月27日からさらに25%の関税を上乗せすることを発表した(2025年8月7日記事参照)。世界最高水準に設定された50%の関税率の影響が、9月以降の貿易統計の数値に反映されたかたちだ。
品目別にみると、宝石・宝飾品の減少幅が特に大きく、9月は前年同月比74.0%減、10月は66.6%減となった(添付資料表参照)。また、織物用糸・布地(9月:34.7%減、10月:28.3%減)、綿製既製服(9月:25.1%減、10月:19.7%減)、水産物(9月:26.9%減、10月:22.5%減)などの下げ幅も目立った。これらのインド国内産業に与える影響は深刻で、いずれも労働集約型のセクターであることから、雇用維持へのリスクが高まっている。他方で、米国の追加関税対象ではない携帯電話などを含む通信機器については(2025年4月14日記事参照)、9月、10月ともに前年同月比でそれぞれ約3倍に増加した。インドで組立生産されている米アップルのスマートフォンiPhone(アイフォーン)の米国向け輸出が伸びていることが背景にあるとみられる。
在インド日系企業でも、米国市場向け製品を製造する一部メーカーでは、輸出先の見直しなど対応に追われている。他方で、大部分の日系企業はインドの国内需要を主なターゲットとしたビジネスを展開していることから、直接的な影響は限定的だ。
インド政府は、米国関税による国内経済への影響を考慮し、9月22日に日本の消費税にあたる物品・サービス税(GST)を大幅に引き下げた(2025年9月25日記事参照)。これにより、10月の乗用車の新車販売台数は前年同月比で17.2%増となるなど、国内消費は好調に推移している(2025年12月5日記事参照)。IMFが11月26日に発表したレポートでは、GST改革による恩恵と米国関税から受ける悪影響とが相殺されることで、2025年度(2025年4月~2026年3月)のインドの実質GDP成長率は2024年度と同水準の前年度比6.6%となると予測している。
(丸山春花)
(インド、米国)
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