米アマゾン傘下のズークス、サンフランシスコで自動運転配車サービス開始

(米国)

サンフランシスコ発

2025年11月26日

米国アマゾン傘下の自動運転タクシー開発企業ズークスは11月18日、サンフランシスコ市内で自社開発の自動運転タクシーの一般乗車サービスを開始した。まず、「エクスプローラープログラム(事前登録制)」として無料で運行し、限定エリアから段階的に運用範囲を拡大する。同社は2024年以降ラスベガスで一般乗車を開始しており、今回の展開はゼロから設計したハンドル・ペダルなしの専用車両を活用した事業の本格化を示すものとなる(2024年6月11日2025年6月24日2025年8月18日記事参照)。

ロボタクシー市場では、サンフランシスコ市内からベイエリア全域で展開したウェイモが先行している(2025年11月25日記事参照)。ウェイモは、英国のジャガー「I-PACE」、韓国の現代自動車の「Ioniq 5」や中国のジーカー製の小型バンなど複数メーカーの既存車両をベースに、ライダー(LiDAR)、レーダー、カメラを統合した自動運転システムを搭載する。高精度マップにリアルタイムのセンサー情報を重ね合わせる人工知能(AI)設計が特徴で(2025年5月8日記事参照)、都市部から郊外、高速道路まで広範囲のサービスを展開している。

一方、ズークスは「既存車両の改造では自動運転に最適化されていない」として、四輪操舵(そうだ)(4WS、注1)と双方向走行(Bi-directional、注2)を備えた専用設計の箱型車両を開発した点が特徴だ。4WSにより、ソフトウエアが決定した経路を誤差数センチ以内で維持でき、双方向走行により、Uターンや3ポイントターンが不要となるなど、狭い都市部での安全性と小回りの良さを重視した設計となっている。また、安全面では、2系統のパワートレインと2つのバッテリーによる冗長構造(注3)を採用し、いずれかが故障しても継続走行が可能。エアバッグも5種類を搭載し、衝突方向と速度に応じて展開順序を制御するなど、専用車両ならではの高度な安全設計を備える。

各社が自動運転技術で異なるアプローチを採用する中、どの構造が最も安全かつ効率的に機能するのか、あるいは都市の特性や用途ごとにすみ分けが進むのか注目される。

(注1)後輪も操舵角を持ち、前後輪の角度を組み合わせることで小回り性や安全性を高める機構。

(注2)車両の前後が対称設計で、どちらの方向にも同等に走行可能。

(注3)安全に関わる重要システムを二重化し、片方が故障しても車両機能を維持する設計。

(松井美樹)

(米国)

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