米ウェイモ、アリゾナ工場で量産体制を推進、対中関税には懸念

(米国)

サンフランシスコ発

2025年05月08日

米国アルファベット傘下で自動運転タクシーサービスを手掛けるウェイモは5月5日、カナダの自動車部品製造大手マグナ・インターナショナルと共同運営するアリゾナ州メサの「ウェイモドライバー統合工場」において、自動運転技術「ウェイモドライバー」を搭載したジャガー「I-PACE」車両の年間生産台数を倍増させ、年間2,000台以上を組み立てる計画を発表した。現在、同社はサンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックス、オースティンの4都市で1,500台超の車両を運用し、週25万件を超える有料配車サービスを提供している。今回の量産体制の強化により、2026年末までに完全自動運転車両は合計3,500台規模に達する見通しだ。

メサ工場は2024年10月に稼働した新工場で、面積は約2万2,200平方メートル。同工場では、センサー取り付け用のプレカット加工や設置用のプレートが施された未改装のジャガー「I-PACE」車両に、自社開発のライダー(LiDAR)、レーダー、カメラ、コンピュータなどを搭載する工程を担う。数十人の技術者がワイヤーハーネスや「トップハット」ユニット(3D認識用LiDAR、複数のカメラ、音声センサー)を手作業で組み込んだ後、バンパーなどの外装部品を再装着し、最終段階で人工知能(AI)システムとセンサー、短距離走行での評価を行う。これらの工程は平均20〜60分で完了し、この間に取得したデータはカリフォルニア州マウンテンビューの本社に送信され、最終チェックが行われる。現在、工場裏手の専用保管エリアには、改装待ちの「I-PACE」車両が2,000台以上保管されている。

今後導入予定の新型車両、現代自動車の「IONIQ 5」は、3月に稼働したばかりのジョージア州エラベルの新工場「メタプラント」で生産され、2025年末までに納入される見通しだ。また、中国のジーカーの小型バンには、第6世代の「ウェイモドライバー」システムの搭載が予定されている。メサ工場では、複数の車種を同時かつ大規模に製造することを視野に、自動化された組み立てラインの導入も計画しており、将来的には年間で数万台規模の生産が可能となる。

一方で、ジーカー車両については、通商政策の影響が懸念される。バイデン前政権下で既に中国製電気自動車(EV)には100%の追加関税が課されており(2024年5月15日記事参照)、さらにはトランプ政権になって上乗せで45%が追加されるに至っている。よって、完成車の直接輸入は高コストとなる。そのため、ウェイモはジーカー車両を部品単位で輸入し、メサ工場で「キット組み立て」を行う方式を検討していたとみられる。ただし、トランプ政権が一部を除く全ての中国原産品に145%の追加関税を適用している状況下では、部品単位であっても輸入コストは大幅に上昇し、国内組み立てでも、極めて高コストとなる恐れがある(注)。

なお、メサ工場の周辺にはテスト中の薄青紫色のジーカー車両が複数台駐車されており、広い車内空間や乗降しやすいスライド式ドア、低くフラットな床など、配車サービスに適した設計となっている。ウェイモは、こうした比較的低価格の車両モデルを導入することで、運用コストの削減とさらなる事業拡大を目指している。

(注)品目によっては、第1次トランプ政権から継続されている1974年通商法301条に基づく追加関税も加わるため、合計の追加関税率が145%を超える品目もある。トランプ政権の関税政策については、「特集:米国関税措置への対応」を参照。

(松井美樹)

(米国)

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