トランプ米政権、人身取引報告書・児童労働報告書を発表、各国の労働慣行を問題視

(米国、世界)

ニューヨーク発

2025年10月01日

米国国務省は9月29日、世界188カ国・地域の人身取引への対策状況を評価した「2025年人身取引報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。報告書は2000年人身取引被害者保護法(TVPA)に基づき、2001年から毎年公表している。

各国・地域は人身取引への対策状況に応じて、ティア1~3のグループ(注)に分類し、最も対策が遅れているティア3に分類した国・地域は、人道や貿易を除く分野での2026会計年度の対外援助が停止される可能性がある。今回、ティア3には中国、ミャンマー、カンボジア、ラオスなど20カ国・地域を分類し、中国については前年に続き(2024年6月25日記事参照)、新疆ウイグル自治区での強制労働の存在を指摘した。

国務省は8月に発表した人権報告書の中でも、新疆ウイグル自治区などでの強制労働の状況を問題視していた(2025年8月14日記事参照)。米国はウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づき、新疆ウイグル自治区が関与する製品を強制労働の関与があるものとみなし、原則として輸入を禁止している(2025年8月20日記事参照)。

さらに、労働省は9月に世界130カ国・地域の「最悪の形態の児童労働」に関する報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。報告書は2000年通商開発法(TDA)に基づき、2002年から毎年公表している。各国・地域は児童労働への対策状況に応じて、「顕著な進展」「中程度の進展」「最低限の進展」「進展なし」のグループに分類し、最も深刻な「進展なし」には、ミャンマー、エチオピア、ルワンダ、南スーダンなど12カ国・地域を分類している。

労働省のロリ・チャベスデレマー長官は報告書について、「米国の企業と労働者を損なう違法かつ容認できない労働慣行を明らかにすることで、貿易相手国に責任を問うというドナルド・トランプ大統領のミッションを推進するものだ」などと述べ、米国企業と外国企業の競争条件を平準化する狙いがあると説明した。

(注)ティア1は、TVPAに基づく人身取引への対応の最低基準を完全に満たす国・地域、ティア2は、TVPAに基づく対応の最低基準を完全には満たさないが、重要な努力を行っている国・地域、ティア2監視リストは、ティア2と同様の国・地域だが、人身取引の被害者数が多い、または増加している国・地域、ティア3は、TVPAに基づく対応の最低基準を完全に満たさず、基準を満たすための重要な努力も認められない国・地域。

(葛西泰介)

(米国、世界)

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