欧州委、競争力強化に向けた最先端研究・技術インフラの強化戦略発表
(EU)
ブリュッセル発
2025年09月17日
欧州委員会は9月15日、域内の科学技術やイノベーションの促進に向けた「欧州研究・技術インフラ戦略」を発表した(プレスリリース)。同戦略は研究・技術インフラに関する域内エコシステムを拡大強化する長期ビジョンを定めたものだ。域内産業の競争力強化というEUの最優先課題に資するべく、研究者のほか、スタートアップを含む産業界による最先端の研究・技術インフラや高品質データへのアクセスを容易にすることを目指す。
同戦略が対象とするのは、最先端の実験設備やデジタルリソースを備えた大規模施設である研究インフラと、産業界向けの技術開発・試験・検証・規模拡大のための技術インフラだ。目標は次の5つを掲げる。
- 研究・技術インフラの欧州エコシステムの強化
- 研究・技術インフラのアクセス性の強化
- 研究・技術インフラに基づく有望なキャリア形成を通じた人材確保
- 研究・技術インフラのガバナンス枠組みの向上と簡素化
- 戦略的パートナーとの協力を通じた研究・技術インフラの国際性と強靭(きょうじん)性の向上
1.については、欧州委はEU加盟国と共同で、2026年に域内の研究・技術インフラのマッピングと評価を実施し、優先分野を特定した上で、共同投資ロードマップを策定する。2027年から重要技術に関する世界水準の研究・技術インフラの新設やアップグレードに向けた投資を開始するとしている。
同戦略は、最先端の研究・技術インフラは設備の高度化によって高額化が進んでいるとして、EUと加盟国が協調して投資を進める必要があると指摘している。EUが推進するマイクロエレクトロニクス・半導体(2024年10月29日付地域・分析レポート参照)、クリーンテック(2025年3月4日記事参照)、量子技術(2025年7月4日記事参照)、人工知能(AI)・データ(2025年6月10日記事参照)、バイオ技術(2024年3月25日記事参照)、循環型経済、先端素材(2024年3月1日記事参照)などを中心に、研究機関や独立系技術インフラなどに対し、2030年までに過去5年間の2倍以上となる130億~160億ユーロの設備投資が必要だと試算する。
ただし、具体的な財源については、2028年以降の次期中期予算計画(MFF)案(2025年7月22日記事参照)が提案されたばかりということもあり、EUの研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」を含む欧州競争力基金に沿って実施すると述べるにとどめている。
(吉沼啓介)
(EU)
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