欧州委、国際デジタル戦略発表、ルールに則した秩序を強調

(EU)

調査部欧州課

2025年06月10日

欧州委員会は6月5日、外務・安全保障政策上級代表と共同で、「国際デジタル戦略」を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この戦略は、デジタル分野でのグローバルリーダーとしての地位を強化するとともに、民主主義的価値観に基づく「ルールに則したグローバルなデジタル秩序」の推進を目指すEUの外交・産業・安全保障政策を一体化する「デジタル外交」の明確な方針を示したもの。「AI法」(2024年5月27日記事参照)とともに、デジタル分野におけるEUの外交と内政をつなぐ戦略的な連携を示すとともに相互補完的に国際的な影響力を高めることを目指す。

また、EUの官民投資や人工知能(AI)ファクトリー(2024年2月1日記事参照)の活用などにより、自国のみならずパートナー諸国のデジタル移行を支援し、技術競争力とセキュリティーなどの強化を目指す。

具体的な施策は次のとおり。

  1. 安全で信頼できるインフラ構築:エネルギー、輸送、金融、医療および通信領域でのデジタル基盤について、安全で信頼性の高いネットワーク構築とサイバーセキュリティーなどの強化。
  2. 新興技術の強化:AI、5G/6G、量子技術、半導体をはじめとする戦略的技術分野での競争力強化および民間企業との協力を通じた研究開発や市場展開の促進 。
  3. グローバルなデジタル規範の形成:多国間フォーラム(国連、G7、G20、OECD)を通じた、民主主義と人権を重視するデジタルガバナンスや標準化の推進。言論の自由、プラットフォーム規制、オンライン上の子供の保護、消費者保護、プライバシー保護の強化。
  4. 国際パートナーシップと協働:EU域外の多地域とのパートナーシップ形成による技術競争力やセキュリティーの強化、安全保障、「グローバル・ゲートウェイ」(2021年12月3日記事参照)などによる公共インフラ支援の展開。
  5. デジタルアイデンティティとデジタル公共インフラ:国境を越えたビジネスの簡素化と市民の移動の円滑化。欧州デジタルIDウォレット(2023年11月13日記事参照)や電子署名などデジタルアイデンティティの相互運用性。公共デジタルインフラの整備。

(坂本裕司)

(EU)

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