米国が対EU関税を引き下げ、自動車・航空機・医薬品など対象、8月以降の輸入に遡及適用も
(米国、EU)
ニューヨーク発
2025年09月25日
米国政府は9月24日、米EU通商合意に基づき、EU製の自動車などに対する関税引き下げを規定した連邦官報案を公表した。翌25日に正式に公示し、同日から新税率を適用する。引き下げは8~9月の輸入にも遡及(そきゅう)適用し、余分に支払われた関税は還付の対象となる。米国税関・国境警備局(CBP)も、9月24日に通関業者向けにガイダンス
を発表した。
米EU両政府は2025年7月に関税措置について合意し(米国側:2025年7月29日記事参照、EU側:2025年7月29日記事参照)、米国は8月からEUに対する相互関税率を15%に変更した(2025年8月1日記事参照)。さらに、両政府は8月に合意に関する共同声明を発表し、(1)EUが対米関税削減法案を提出した場合、米国はEU製の自動車に対する1962年通商拡大法232条に基づく追加関税率を25%から15%に引き下げる、(2)米国は航空機や医薬品など特定のEU産品に対する15%の相互関税を撤廃する、などの将来の措置を確認していた(2025年8月22日記事参照)。
既にEU側は8月に、共同声明に基づく措置の実施に向けて、米国製工業製品に対する関税を撤廃するとともに、米国産農水産品に対する特恵市場アクセスを認める法案を発表していた(2025年9月1日記事参照)。
今回の官報で規定した関税の引き下げは、共同声明に基づく米国側の措置を実施するもので、対象品目、適用時期、税率は次のとおり。
- 自動車・同部品:一般関税率(MFN)税率が15%未満の場合は232条関税率とMFN税率を合わせて15%、MFN税率が15%以上の場合には232条関税を課さず、MFN税率のみ適用する。米国東部時間8月1日午前0時1分以降の輸入に遡及して適用する。
- 同官報の付属書1(Annex 1)に記載される特定のEU産品(コルクなど米国で入手不可能な天然資源、航空機・同部品、ジェネリック医薬品・同原料・化学前駆体):相互関税を撤廃し、MFN税率のみ適用する。米国東部時間9月1日午前0時1分以降の輸入に遡及して適用する。
なお、日本製の自動車や航空機に対する関税は日米通商合意に基づき、既にEUと同等の水準に引き下げ済みだ(2025年9月16日記事参照)。ただし、日本原産の天然資源や医薬品などに対する相互関税については、ドナルド・トランプ大統領が撤廃の可能性を示しつつも、現時点で具体的な措置は講じられていない(2025年9月5日記事参照)。
このように、米国の232条関税や相互関税は、これまでの全世界に対してほぼ共通して同じ追加関税率を課す状況から、米国と各国の交渉結果を踏まえて国・地域や製品に応じて異なる税率を適用する状況へと、より複雑化している。そのため、日本企業は、米国と各国の合意内容(対象品目、適用時期、税率)を把握することが、外国企業との輸入価格の比較優位性を確認する上で一層重要になる。
(葛西泰介)
(米国、EU)
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