トランプ米大統領、日米合意を履行する大統領令を発表、相互関税・自動車関税を引き下げ
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年09月05日
米国のドナルド・トランプ大統領は9月4日、米国の関税措置に関する日米合意を履行する大統領令を発表した。相互関税率や自動車・同部品に対する追加関税率の引き下げなど、日本政府が発表していた合意内容をおおむね履行する内容となった。
今回発表された大統領令では、相互関税率は、日本政府が発表した内容どおり(2025年7月28日記事参照)、一般関税率(MFN税率)を含めて15%、一般関税率が15%以上の品目には相互関税は課されないと明記された。これにより、日本に対する相互関税率はEUと同じになった。相互関税率の修正は、米国東部時間2025年8月7日午前0時1分以降の輸入にさかのぼって適用されるため、余分に支払った関税は、米国税関・国境警備局(CBP)による標準的な還付手続きに従い還付される(注1)。
通商拡大法232条に基づく自動車・同部品に対する追加関税も、相互関税と同様に、一般関税率が15%未満の場合は一般関税率と232条関税を合計して15%、一般関税率が15%以上の場合は、232条関税は課されないと記載された。EUも同内容で米国と合意していたが、米国が自動車・同部品に対する追加関税を引き下げるのは、EUが米国産品に対する関税を撤廃や削減する法案を正式に提出してからとされており、現時点ではまだ引き下げられていない(注2)。
大統領令では、WTOの民間航空機貿易に関する協定の対象品目(注3)は、相互関税、通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム(2025年8月19日記事参照)、および銅(2025年8月4日記事参照)に対する追加関税の対象外とすることも定められた。自動車・同部品、および民間航空機に対する相互関税の修正は、同大統領令が官報に掲載された日から7日以内に公示される(注4)。
大統領令ではさらに、商務長官が、国内で入手不可能(または国内需要を満たすのに十分な規模で入手不可能)な天然資源、ジェネリック医薬品(原料、化学前駆体を含む)に関して、日本産品に対する相互関税率をゼロに修正する権限を有するとも記載された。なお、いつ、どの品目に対して相互関税率を修正するかは、米国の国益や本命令の目的である国家非常事態に対処する必要性などに鑑みて決定すること、日米合意に基づく約束を実施するために日本政府が講じた措置などを考慮するとした。商務長官は、日本による日米合意の履行状況を監視し、大統領に報告するとともに、大統領は、日本が日米合意に基づく約束を履行しない場合、同大統領令で定めた内容を変更できるとも記載された。
なお大統領令では、日本がミニマムアクセス(MA)制度の枠内で米国産米の調達量を75%増加させること、トウモロコシ、大豆、肥料、バイオエタノールなどを含む米国産農産品やその他の米国製品を年間総額80億ドル相当購入すること、日本が米国に対し5,500億ドルの投資をすることなども記載されている。
(注1)CBPによる標準的な関税還付手続きには、関税清算前であれば事後修正(PSC)、清算済みの場合は異議申し立て(protest)がある。PSCの詳細はCBPのウェブサイト、ユーザーズガイド
を参照。異議申し立ては、清算から180日以内に輸入者、代理人または弁護士がCBPに対して行える。通常、CBPフォーム19
というフォーマットが利用される。詳細はCBPのウェブサイト
参照。
(注2)欧州委員会は8月28日に、米国製工業製品に対する関税を撤廃するとともに、米国産農水産品に対する特恵市場アクセスを認める法案を発表している(2025年9月1日記事参照)。
(注3)全ての民間航空機やその部品などが対象となる。
(注4)自動車・同部品、民間航空機に関する関税還付についての記載はない。削減される関税率の具体的な適用日は、今後発表される官報やCBPによるガイダンスなどで明らかになるとみられる。
(赤平大寿)
(米国、日本)
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