米シンクタンク、関税低減の日米合意を肯定評価、今後の日米関係・米経済・USMCAへの影響注視
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年07月28日
日米両国政府は現地時間7月22日、日本に対する米国の相互関税率を15%に設定することなどで合意した(2025年7月24日記事参照)。米国の首都ワシントンのシンクタンクの研究者はおおむね、25%の相互関税を回避した点で合意を肯定的に受け止めている。日米関係、米国経済、他の通商協定などへの合意の影響を指摘する。
戦略国際問題研究所(CSIS)のクリスティ・ゴベラ日本部長は7月23日に掲載した論考で、日本は参議院議員選挙を7月20日に終え、米国は日本に対する25%の相互関税の適用開始を8月1日に控え、このタイミングに日米双方で合意成立の機運が高まっていたと背景を説明した。15%の相互関税については「(25%から)大幅な改善だ」「対米貿易黒字国に対する相互関税として過去最低水準だ」と評価した。一方で、15%の関税の維持は日本にとって引き続き重大な問題だとも指摘した。今後の日米関係については「トランプ政権発足以来、関税問題によって後回しにされていた経済安全保障や米日同盟などでの協力が進展する可能性がある」と述べ、特に日本の防衛費増額が主要な議題になると予想した。
アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)のデズモンド・ラックマン上席研究員は24日に掲載した論考で、各国に対する相互関税の適用開始が迫る中で、日本と合意が成立した事実を肯定的に評価しつつ、相互関税が15%に設定されたことを踏まえれば、今後の各国との関税協議でもトランプ政権が関税率を高水準で維持する意思が固いことは疑う余地がないと述べた。さらに、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の発動可能性があることから(2025年7月16日記事参照)、今後も関税が高止まりし、インフレを通じて米国経済にマイナスの影響を及ぼす可能性を指摘した。
ハドソン研究所のケネス・ワインスタイン日本部長は23日に掲載した論考で、米国の自動車や農産品の市場アクセス拡大や、日本の対米投資拡大などの合意内容を踏まえて、「ドナルド・トランプ大統領は大勝利を収めた」と評価した。同時に、相互関税と232条自動車関税の関税率がともに15%に設定されたことについて「予想されていた水準から大きく改善した」「日本も勝利を収めた」と評価した。同所のウィリアム・チョウ日本部副部長も25日掲載した論考
で、「米日両国が優先事項を確認し、両国に経済的利益をもたらし、両国の産業・技術・エネルギー協力を深化することを約束する重要な合意だ」と評価した。
また、日本からの乗用車の輸入(15%)の方がメキシコやカナダからの乗用車の輸入(25~27.5%)より関税率が低くなることから、米国企業が反発することに関して(2025年7月25日記事参照)、2026年の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しに対するトランプ政権のアプローチを占うものとなると位置づけた。
そのほか、ワシントンの日米関係有識者の見方は、2025年7月24日記事参照。
(葛西泰介)
(米国、日本)
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