米自動車メーカーや労組、対日自動車関税引き下げに反発
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年07月25日
ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスの米国系自動車メーカー3社を代表する米国自動車政策評議会(AAPC)は7月22日、日本から輸入する自動車および同部品に課す関税率を25%から15%に引き下げる米政府の決定に対し、強い懸念を表明した(2025年7月24日記事参照)。米系メーカーの主な輸入相手国であるカナダやメキシコなどからの輸入品に対する関税率が25%に据え置かれる可能性がある中、日本車が相対的に割安になるとの見方が背景にある。
AAPCのマット・ブラント会長は「米国産部品をほとんど含まない日本からの輸入品の関税率が、米国産部品を多く含む北米製自動車に課されている関税率よりも低い合意は、米国の産業と自動車労働者にとって不利益な協定だ」と批判した(ロイター7月22日)。
また、全米自動車労働組合(UAW)も7月23日の声明で「(われわれは)トランプ政権が発表した日本との関税合意に激しく憤慨している。これまでの状況から明らかなのは、米国の労働者が再び取り残されているということだ」と非難。今回の合意は「低水準の労働慣行に依存する外国メーカーに利を与えるものだ」と強く反発した。
自動車・同部品に対しては、1962年通商拡大法232条に基づき、自動車は2025年4月3日以降、自動車部品は5月3日以降、25%の追加関税が課されている。ただし米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たしていれば、非米国産部品分のみが追加関税の対象となる(注)。部品に関しては猶予期間が設けられ、現時点ではUSMCAの要件を満たしていれば関税は免除される。こうした例外措置があるにもかかわらず、企業における関税の影響は大きい。GMは7月23日、第2四半期までに関税によるコストが11億ドルに達したと発表。ステランティスも7月21日、同様に3億5,000万ドルのコストが発生したことを明らかにしている。
一方、トヨタやホンダ、BMWなど主要な外国自動車メーカーを代表するオート・ドライブ・アメリカは声明で、「(われわれは)トランプ政権が発表した日本との貿易協定に勇気づけられ、さらなる詳細を待ち望んでいる」「外国自動車メーカーは過去30年間、米国での事業に1,240億ドル以上を投資してきた。本合意によってもたらされる確実性により、さらなる投資計画の策定や、米国での生産拡大、米国の消費者への手頃な価格の選択肢を提供することが可能になる」との歓迎の意を表明。米国において安定した事業環境を構築できるよう政府に対し、EUや韓国、カナダ、メキシコとも同様の協定を速やかに締結することを強く求めた。
(注)追加関税措置の詳細はジェトロ特集ページ参照。
(大原典子)
(米国、日本)
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