世界銀行、家計迅速モニタリング電話調査第10次レポートを発表
(ラオス)
ビエンチャン発
2025年05月13日
世界銀行は5月5日、ラオスの一般家計への「迅速モニタリング電話調査」の第10次レポートを発表した。同調査は、新型コロナ禍の一般家計への影響をモニタリングするために2020年6月から開始され、定期的に電話によるサンプル調査を行っており、第10次は2025年1月下旬~2月下旬に収集したデータを分析したものだ。
ラオスは、コロナ禍の行動制限や経済停滞に加え(2021年3月16日付地域・分析レポート、2021年10月6日地域・分析レポート参照)、2022年6月から現地通貨キープ安の大幅な進行でインフレが高進し(2022年7月8日記事参照)、2023年1月にはインフレ率が40.3%に達した(2023年2月14日記事参照)。その後、2024年11月には18.3%(前月比:マイナス1.3%)とやや緩和し(2025年2月7日記事参照)、直近の2025年4月のインフレ率は11.1%(前月比:1.6%)となっている。
本レポートによれば、「雇用環境」に関する項目について、ラオスの就労者の割合が2022年5月の88.2%から2025年1月には97.1%に上昇したほか、男女の雇用格差は2022年12月の8.0%から2025年1月には1.9%に大きく縮小した。ただし、経済的圧力が家計を支えるために女性を就業に向かわせたことを示唆する、と分析した。また、「就労先」は2022年から高インフレと通貨安を原因に、多くの労働者の実質賃金が下がったサービス業から、より弾力的で高い収益性を求めて農業へ、賃金労働から自営業へとシフトしてきたが、インフレや通貨安の緩和でその動きが鈍化してきた、と指摘した。
「海外への出稼ぎ労働」では、より良い雇用機会と賃金を求めて、少なくとも1人が外国に移住している世帯は、2025年1月では調査世帯の8.7%と2024年6月の4.2%から大きく増加した。また、8.6%の世帯が海外からの送金を受け、平均受領額は年間2,290万キープ(約15万1,000円、1キープ=約0.0066円、年間最低賃金の76%相当)となった。なお、ラオス人のタイへの正規労働移民数は2023年12月の23万3,131人から2024年12月には25.2%増の29万1,844人へ、韓国(2022年6月6日記事参照)へは2,815人から約2倍の5,602人へ増加した。
「1人当たりの平均所得」は、2024年12月で前年度比14.4%増加したが、横ばいもしくは減少した世帯は全体の40%を超え、インフレによる生活費の上昇の悪影響を受けている世帯が多い点を指摘した。
「家計」では、インフレが家計へ悪影響をもたらしていると回答する世帯が82.7%を占め、食費、教育費、医療費をそれぞれ59.4%、30.7%、35.7%の世帯が削減したと回答した。2024年6月結果(55.5%、28.1%、31.0%)と比較していずれも増加した。学齢期の7.4%が就学しておらず、とりわけ低所得世帯では11.4%に達した。レポートではマクロ経済が安定化しても、多くの家庭が子供の教育に再投資するほどには回復していないことを示唆している、と指摘した。
(山田健一郎)
(ラオス)
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