米国の3月の貿易赤字額が1,405億ドルで過去最高を更新、在庫積み増しで価格転嫁は今後本格化か
(米国)
ニューヨーク発
2025年05月08日
米国商務省経済分析局(BEA)は5月6日、2025年3月の財・サービス貿易額を発表した。赤字額は1,405億ドルで、月別で過去最高だった1月の1,307億ドル(改定値、2025年3月7日記事参照)を上回った。
3月の輸出額は2,785億ドル、輸入額は4,190億ドルで、輸入の伸びが大きかったことから貿易赤字額が拡大した。特に財の貿易赤字額が1,635億ドルに拡大したことが影響した。輸入の伸びを牽引したのは医薬品製剤で、前月より209億ドル増加したことで、消費財の輸入額が225億ドル増となった。そのほか、資本財の輸入額が37億ドル増加し、自動車・同部品が26億ドル増加した。
ドナルド・トランプ大統領は、選挙期間中から新たな関税措置についてたびたび言及していた。企業が追加関税を避けるために前倒しで輸入を拡大した影響から、2025年1月以降、毎月の財の輸入額が3,000億ドルを超えた。ちなみに、2022年と2023年に、輸入額が3,000億ドルを超えた月は一度もない。輸入が拡大した結果、2025年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率マイナス0.3%と、2022年第1四半期以来3年ぶりのマイナス成長となった(2025年5月1日記事参照)。
3月の輸入の伸びを牽引した医薬品製剤については4月1日から、1962年通商拡大法232条に基づき、同製品の輸入が米国の国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査が開始されている(2025年4月15日記事参照)。また、自動車に対しては同232条に基づき4月3日から、部品に対しては5月3日から追加関税が賦課されている(2025年4月3日記事参照)。これらのほか、相互関税など複数の関税措置が発表されている。
ただ、トランプ政権は追加関税の緩和措置も発表しており、相互関税については発表から1週間後の4月9日に90日間の適用停止(2025年4月11日記事参照)、さらに4月29日には、一部の追加関税の累積停止と自動車部品関税の輸入額相殺制度を発表している(2025年4月30日記事参照)。
関税措置が日々変わる状況下で、在米日系企業からは「影響の度合いを試算し直しており、まだ全体の影響は把握できていない」といった声が複数聞かれる。関税による影響が見通せないことに加え、一定程度の在庫の積み上げがあることから、価格転嫁の交渉は5月以降に行うとする企業も複数いる。そのため、関税によるコスト増が店頭価格などへ本格的に影響を及ぼすのは、もう少し先になりそうだ。
(赤平大寿)
(米国)
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