トランプ米大統領、追加関税の累積停止と自動車部品への232条関税の緩和措置を発表
(米国、世界)
ニューヨーク発
2025年04月30日
米国のドナルド・トランプ大統領は4月29日、追加関税措置を軽減する2つの行政命令を発表した。1つは、これまでに発表した一部の追加関税の累積を停止する大統領令、もう1つは、自動車部品に対する追加関税に相殺制度を設ける大統領布告
となっている。
トランプ政権が発動した追加関税措置は、特定の品目に複数の追加関税が累積することで、高い関税率を設定していた。だが、今回の大統領令で「累積により生じる関税率が、意図した政策目標を達成するために必要な水準を超える」として、累積を停止すると記載した。対象となる関税措置は、次のとおり。
- 1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品に対する25%の追加関税(2025年4月3日記事参照)
- 国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくメキシコとカナダの原産品の原則全品目に対する25%の追加関税(2025年3月4日記事参照)
- 同232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の追加関税(2025年2月12日記事参照、注1)
例えば、米国関税分類番号(HTSコード)8708.10.30に分類されるバンパー用部品は、自動車部品、アルミ派生品として追加関税が累積される可能性があったが(注2)、今後は自動車部品としてのみ追加関税の対象となる(注3)。
ただし、鉄鋼、アルミ製品の双方で追加関税の対象となっている品目に対しては、引き続き関税が累積される。例えば、HTSコード9403.20.00の金属製家具は、鉄鋼、アルミのどちらでも、派生品として追加関税の対象となっている(注4)。また、1974年通商法301条やIEEPAに基づく中国に対する追加関税も累積が継続される。
今回の措置は3月4日以降の輸入にさかのぼって適用されるため、累積して既に支払った分の関税は還付される。
自動車・同部品については、外国での製造と輸入への依存を迅速に減らし、米国内の生産能力を拡大し、製造を米国に移転させることを目的に、自動車部品の輸入に対して、関税を相殺する制度を設ける。具体的には、自動車メーカーは4月3日~2026年4月30日に米国で組み立てられた自動車の希望小売価格(MSRP)の合計額の3.75%に相当する輸入調整相殺額を申請できる。2026年5月1日~2027年4月30日はMSRPの合計額の2.5%を申請できる(注5)。2027年5月以降についての記載はない(注6)。
相殺額は、自動車メーカーが承認したサプライヤーなどの輸入業者のみ使用できる。具体的な申請方法は、発令から30日以内に商務長官が定める。自動車メーカーが商務長官に提出する書類には、(1)米国で組み立て予定の自動車台数と最終生産が行われる工場の所在地、(2)232条自動車部品関税による予想コスト(メーカー直接負担分とサプライヤー負担分を区別)、(3)相殺額の総額、(4)相殺額を使用する資格を有する輸入業者などの情報が含まれる。米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(4月29日)によると、メーカーがこれら書類を提出した後、確定された相殺額が今後の関税支払いに充当される。その金額内であれば、追加関税を支払う必要はない。その金額を使い切ると、再び追加関税を支払うことになる。
(注1)鉄鋼・アルミ製品への追加関税は、発表後に缶ビールを対象として追加するなど、更新されている(2025年4月7日記事参照)。
(注2)自動車部品に対する追加関税は5月3日に発動予定。
(注3)累積停止は以下の順序で整理されている。自動車・同部品への追加関税の対象になっている場合は、鉄鋼・アルミ製品、メキシコとカナダの原産品への追加関税の対象にならない。メキシコ・カナダ原産品への追加関税の対象になっている場合は、鉄鋼・アルミ製品への追加関税の対象にならない。
(注4)一部の鉄鋼・アルミ派生品に対しては、それぞれ鉄鋼・アルミの含有量に対して追加関税が課されるため、これら条件を満たした際に累積が適用される。
(注5)自動車のMSRPの15%、または10%を占める部品に、25%の追加関税が課された場合に支払われるべき関税総額が基になっている。
(注6)トランプ政権と自動車メーカーの協議で、米国内へのサプライチェーンの移転と構築の猶予期間として、2年間で合意したという(インサイドUSトレード4月29日)。
(赤平大寿)
(米国、世界)
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