中国、米国の相互関税に断固反対、対抗措置実施を示唆

(中国、米国)

調査部中国北アジア課

2025年04月04日

米国のドナルド・トランプ大統領は4月2日、「相互関税による輸入制限により、米国の巨額かつ恒常的な財貿易赤字に寄与する貿易慣行を是正する」と題する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、米国東部時間4月9日午前0時1分から、対米貿易赤字額が大きい国・地域に対して「相互関税」を課すとした。中国は相互関税が設定された57カ国・地域に含まれており、34%の相互関税が新たに課されることになった(注1、2025年4月3日記事参照)。

中国商務部は4月3日、米国側の発表を受けて発表した談話において、米国の相互関税に断固反対し、自身の権益を守るため対抗措置を取ると表明した。談話では、米国による相互関税の導入は長年の多国間・地域の貿易交渉の成果を顧みないものであり、米国が国際貿易から大きな利益を得てきた事実を無視するものだと指摘した。また、今回、米国が主観的かつ一方的な評価の上で相互関税を導入したことは国際貿易ルールに沿わず、関係国・地域の正当かつ合法的な権益を著しく損なうものであり、典型的な一方的いじめであると批判した。その上で、「貿易戦争に勝者はなく、保護主義に出口はない」などとあらためて指摘しつつ、米国に対して、ただちに一方的な関税措置を取り消し、貿易相手国・地域との対等な立場での対話を通じて相違点を適切に解決すべきだと訴えた。

中国外交部報道官も4月3日の定例会見において、米国が「相互」の名目で追加関税を賦課する行為はWTOルールに対する重大な違反で、ルールに基づく多国間貿易体制を著しく損なうものだと指摘した。その上で、米国に対して、誤った行いを正し、平等・尊重・互恵の方式で中国を含む各国・地域との協議によって貿易に関する相違点を解決するよう求めた。

他方で、同日行われた商務部定例記者会見において、同部の報道官は、米中両国の経済貿易当局は一貫してコミュニケーションを保っており、中国は、米国と両国間の経済貿易分野における重要な問題について交流し、対等な立場での対話や協議を通じて双方の懸念を解決することを希望するとも表明している(注2)。

なお、米国トランプ政権はこれまで中国原産の全輸入品目に対して、計20%の追加関税を賦課しており(2025年3月4日記事参照)、中国はこれに対して、一部の米国原産の輸入品目に対して追加関税賦課を実施している(2025年2月4日2月5日3月5日同3月5日記事参照)。

(注1)ただし、米国東部時間4月5日午前0時1分より前に船積みされている場合は、対象外となる。また、中国には香港・マカオを含む。

(注2)3月26日には、米中経済貿易協議の中国側トップを務める(中国側発表による表現)何立峰副首相が米国のジェミソン・グリア米国通商代表部(USTR)代表との初会談をオンラインで実施した。中国側発表によると、米中双方は同会談において、2025年1月17日に行われた習近平国家主席と、大統領就任前のトランプ氏との電話会談(2025年1月21日記事参照)における重要な合意事項の実施や両国間の重要な経済貿易問題について深く、率直な意見交換を行ったとした。また、中国側は、米国による、フェンタニル問題を理由とする対中追加関税賦課や1974年通商法301条に基づく調査、および相互関税の導入などについて深刻な懸念を表明し、米国側に対して、対等な立場での協議によって双方の懸念を解決するという路線に早期に戻るよう求めた(米国側発表は2025年3月28日記事参照)。

(小宮昇平)

(中国、米国)

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