グリア米USTR代表と中国の何副首相が初会談、トランプ大統領の通商政策を概説
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年03月28日
米国通商代表部(USTR)は3月26日、ジェミソン・グリアUSTR代表が中国の何立峰副首相とオンラインで初めての会談を行ったと発表した。
USTRの発表によると、グリア代表は、ドナルド・トランプ大統領が対米投資と米国内での生産を促進し、米国の産業と技術の優位性を高め、経済と国家安全保障を守り、米国の労働者と企業に利益をもたらす強固で再活性化された通商政策をいかに確立しようとしているかについて概説した。
また、グリア氏は中国の不公正で反競争的な通商政策や慣行についても、深刻な懸念を表明した。中国の不公正な貿易慣行に対して、米国は1974年通商法301条に基づいて、2018年から中国原産品に対して追加関税を課しているほか(2024年12月12日記事参照)、非先端のレガシー半導体(2024年12月24日記事参照)や、海事・物流・造船分野(2025年2月25日記事参照)で、中国の政策や慣行などが不公正でないか調査をしている。そのほか、トランプ氏就任以降は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、合成麻薬フェンタニルをはじめとする違法に製造された麻薬性鎮痛薬の米国への流入阻止を目的に、20%の追加関税を課している(2025年3月4日記事参照)。また、トランプ氏が強い懸念を抱いている米国の貿易赤字額は、2024年に中国が2,954億ドルと国別で最大になっている。中国に対する貿易赤字額は減少傾向にはあるものの、2位のメキシコ(1,718億ドル)とは、依然として大きな差がある。
一方で、中国政府によると、何副首相はグリア氏に対して、米国の関税と追加関税の脅威について「深刻な懸念」を表明したという(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」3月26日)。中国は、IEEPAに基づく米国の追加関税措置に対抗して、米国産の鶏肉や大豆などに報復関税を課しているほか(2025年3月5日記事参照)、輸出管理の強化などを行っている。
2018年から顕在化した米中対立により、スマートフォンやノートパソコン、ルーター、自動車など、いわゆる戦略分野といわれる品目で、米中間のサプライチェーンはデカップリングしつつあるとみられている(2025年3月19日付地域・分析レポート参照)。USTRの発表によると、グリア氏と何氏は今後も意思疎通を図ることの重要性で一致したとしており、トランプ政権下で、米中関係がどのように変容していくのか、今後の行方が注目される。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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