EU、域内生産拠点誘致に向けた半導体法案を採択、ドイツなど一部の加盟国に投資集中

(EU、ドイツ)

ブリュッセル発

2023年08月02日

EU理事会(閣僚理事会)は7月25日、EU域内における半導体の研究開発から生産までのエコシステムの確立を目指す欧州半導体法案(注)を正式に採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUは、「戦略的自律」の名の下に重要技術の域外依存の軽減を目指しており、東アジアからの輸入に依存する半導体を、域内での開発・生産を支援すべき重要技術の筆頭に挙げている。特に域内生産に関しては、2030年までに次世代半導体の世界シェア20%以上を目標としており、半導体法案はこの目標の実現に向けた施策の1つだ。EU理事会と欧州議会は4月18日に政治合意(2023年4月20日記事参照)しており、今回、正式に採択されたことから、今後、EU官報への掲載を経て施行される。

半導体法案の柱となるのは、EUおよび加盟国による半導体企業への財政支援の容易化と生産施設の建設などにおける許認可の迅速化だ。半導体の生産拠点の誘致合戦が世界的に激化する中で、欧州委員会は、域内への生産拠点の誘致には公的支援が不可欠としている。域外国との補助金格差を埋めるため、EU国家補助規制で原則禁止されている加盟国による企業への国家補助を、半導体法案が規定する「域内初」となる先端半導体の生産施設などを対象に承認する方針だ。

大規模な国家補助を背景に投資が集中するドイツ

EU域内における財政支援において、存在感をみせるのはドイツだ。半導体法案は、EUと加盟国による財政支援と民間投資により合わせて430億ユーロの投資を確保する計画だが、EU予算からの拠出は研究開発を中心に33億ユーロにとどまる。こうしたことから、域内への生産拠点の誘致に向けた財政支援は、加盟国による国家補助がベースとなる。ただし、大規模な国家補助が可能な加盟国は、財政余力のあるドイツやフランスなどの一部の加盟国に限られるのが現状だ。直近では、ドイツによる米国半導体大手インテルの半導体生産拠点の建設計画に対する99億ユーロ(2023年6月29日記事参照)やドイツ半導体大手インフィニオン・テクノロジーズの半導体工場建設に対する10億ユーロ(2023年5月8日記事参照)、フランスによるスイス半導体メーカー、STマイクロエレクトロニクスの工場新設に対する最大29億ユーロ(2023年6月13日記事参照)などの国家補助がある。小規模の加盟国を含む複数国で共同実施する国家補助規制の特例措置「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」においても、半導体を含むマイクロエレクトロニクス分野の第2弾が承認されている(2023年6月14日記事参照)。支援規模は14加盟国合計で最大81億ユーロになるものの、その約半数となる40億ユーロはドイツによる国家補助となっており(2023年6月20日記事参照)、ドイツなど大規模な国家補助が実施可能な一部の加盟国への投資の集中が目立つ結果となっている。

(注)EUの半導体政策と半導体法案の概要については、調査レポート「EUデジタル政策の最新動向(第1回PDFファイル(558KB))」(2022年8月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU、ドイツ)

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