インテル、ドイツ半導体工場への300億ユーロ規模の投資を正式決定、投資規模拡大へ

(ドイツ、米国)

ベルリン発

2023年06月29日

米国の半導体大手インテルとドイツ連邦政府は6月19日、ドイツ東部ザクセンアンハルト州マクデブルクの半導体工場建設計画に関する基本合意書(LoI)に署名した(ドイツ連邦経済・気候保護省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますインテルプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の基本合意書には、インテルが当初の発表より増額された総投資額(2022年3月24日記事参照)や、連邦政府による補助金提供拡大などの支援策が盛り込まれている。

現地紙「ハンデルスブラット」(6月20日)によると、インテルは建設費やエネルギー価格の上昇を受け、連邦政府に補助金の増額を申し入れていた。インテルと連邦政府による数カ月間にわたる協議の末、補助金額は当初予定されていた68億ユーロから最終的に99億ユーロに増額されたという。インテルによると、コストの上昇のみならず、新工場には当初計画より高度な生産技術を導入するよう変更したため、総投資額は170億ユーロから300億ユーロに拡大した。そのため、上述のハンデルスブラット紙報道によると、これに伴い総投資額に補助金が占める割合は40%から33%に引き下がる格好になったという。

インテルはマクデブルクに新設する2つの工場のうち、最初の工場は4~5年以内の稼働を目指すとしている。

基本合意書の署名式典に出席したオラフ・ショルツ首相は、今回増額された300億ユーロ規模の投資は「ドイツ史上、最大規模の外国企業による対内直接投資となる。ハイテク製品の生産拠点としてのドイツと、半導体生産の強靭(きょうじん)化のための重要な一歩だ」とインテルの決定を歓迎した。ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は、インテルの投資は「ドイツの半導体生産力を新たなレベルに引き上げる」と評価するとともに、「EUの主権を促進するための重要な貢献をするものだ」と指摘。さらに、同社のパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は「マクデブルクの製造拠点は、ポーランドの新拠点やアイルランドの既存拠点と組み合わせることで、半導体製造の始まりから完成までのひとつながりの工程を作り出す」ことが可能で、欧州委員会が目指す強靭な半導体サプライチェーン構築推進の大きな第1歩になると述べた。

ドイツメディアでは、インテルへの巨額の補助金提供について専門家の批判的あるいは慎重な意見が報じられている。たとえば公共放送ARD(6月19日)では、欧州経済研究センター(ZEW)のアヒム・バムバッハ所長の、米国は大規模な半導体補助金の推進(2023年3月1日記事参照)で台湾への半導体依存を軽減しているため、EUにとって域内半導体生産の拡大を目的とする安全保障政策の基礎部分の重要性は失われたとの情勢分析や、「研究開発を促進する方が、欧州の技術的リーダーシップ拡大には効果的だ」との見解を紹介した。またARD(6月23日)は、連邦政府の経済諮問員会のモニカ・シュニッツァー委員が、インテル誘致の巨額補助金は例外として擁護しつつ、「何よりも、EU域内での補助金競争に陥らないよう留意が必要だ」との意見であることを報じた。

(小川いづみ、中村容子)

(ドイツ、米国)

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